「アジアの未来」
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23日の概要
討論
▼東アジアの政治情勢


地域安定へ共同行動を

 小島明・日本経済研究センター会長(モデレーター) 冷戦後、世界で紛争が多発したが、東アジアでは協力関係が生まれている。これだけ相互依存が高まると市場原理以外の推進力も必要になる。エネルギーや食料などの問題もあり、政治的な知恵が必要だ。

崔天凱氏

 崔天凱氏 東アジア情勢は安定と繁栄に向かっている。アジア太平洋経済協力会議(APEC)、東南アジア諸国連合(ASEAN)など地域の協力メカニズム構築も進み、ASEANと他の国々との関係は大きく進展した。政治や安全保障、環境などでは途上国が大きな役割を果たしている。ただ、東南アジアの一部の国との信頼関係の醸成は十分でない。



アレグザンダー・アルビズ氏

 アレグザンダー・アルビズ氏 米国はアジア太平洋地域の問題に積極的にかかわっていく。米国がアジアから戦略的な撤退をするとか、この地域の安定のために大きな役割を果たすべきだなどの批判はあるが、間違っている。

 アジアは世界に影響を及ぼす重要な地域だ。市場経済が興隆しているが懸案はある。経済を失速させ、市民の自由を奪うような体制があることだ。地域全体の安全保障に影響を及ぼすため外からの影響力行使が必要だ。APECやASEANが地域統合などで信頼性のある実績を示すことが必要だ。ASEAN地域フォーラム(ARF)も核不拡散などに実績を上げている。ただ、それぞれの組織の役割が重複し、非効率的になっている。安全保障とエネルギー、食料などそれぞれの問題の垣根が低くなってきている。北東アジアの平和、安全保障のメカニズムが将来の協力の礎になる。

尹徳敏氏

 尹徳敏氏 北朝鮮の経済規模は約100億ドル。韓国の国防予算はその2―3倍だ。韓国に吸収されず、中国に従属しないためには北朝鮮は核武装するしかない。核問題を巡る6カ国協議が進むと、北朝鮮には核放棄すれば未来があるということを示す必要がある。李明博(イ・ミョンバク)政権は過去の政権とは異なる政策をとっている。核放棄と経済支援を一体とした戦略的アプローチ、いわゆる「アジア版マーシャルプラン」だ。



田中均氏

 田中均氏 第二次世界大戦後、成長したのは日独2カ国だったが、両国の人口は世界の6%にすぎなかった。今の成長国はインドも含めると世界人口の53%にあたる。成長すればするほど食料、エネルギーなどの問題は深刻化する。経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)は貿易自由化だけでなく、ルールづくりだ。投資や人の流れのルールを作り経済安定地域をつくることが大切だ。

 マクロ経済からエネルギー問題まで幅広くかかわっている経済協力開発機構(OECD)が果たしている役割を担う、東アジア版OECDも必要だ。北朝鮮には核の議論が進んでいる今こそ、日朝関係を改善する良い機会だと言いたい。重要なのは日米中の関係安定で、3カ国で信頼関係を高める必要がある。海賊や感染症などの問題に対し、アジア各国が共同で行動する組織が必要だ。

ドミンゴ・シアゾン氏

 ドミンゴ・シアゾン氏 安全保障では朝鮮半島と中台関係の問題が大きい。今後5年間の解決が望まれる。米国は難題を次期政権に任せず、米朝関係では核放棄に集中してほしい。日中関係は、中国の胡錦濤国家主席の来日後もまだ歴史問題が残る。歴史問題の清算は重要だ。互いが争ったら失うものが大きい、という関係をつくるべきだ。

 経済統合も手法の一つで、欧州から学ぶべきことは多い。東アジアにはAPECなど多くの組織があり、活用すべきだ。日本はAPECの再興を支援してほしい。日本は自らが変わる必要がある。もっと開放的になり、主導的役割を果たさねばならない。

 小島氏 今の協力体制で課題をどう解決するか。また全体の成長から脱落する地域が出てきたらどうするか。

 田中氏 具体的に共同行動することが大事だ。中国の地震の際、各国が航空機を緊急展開できたら事情が変わっていたかもしれない。津波の時もそうだ。

 シアゾン氏 経済格差の出現は時として良い。中国の発展は速いので、ベトナムなどへの投資事例も増えるだろう。

[5月24日/日本経済新聞]

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