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アブドラ・バダウィ
マレーシア 首相

 貧困撲滅を中核的戦略に

 今年は東アジアにとって過酷な年になりつつある。ミャンマーのサイクロンや四川大地震など自然災害がまれにみる破壊を生み、食料や原油価格の高騰は域内の貧困層に苦難を強いている。コメの価格はほぼすべての国で最高値をつけ、食糧安全保障は今や地域最大の懸念材料の一つだ。

 最悪の事態はこれからだ。国連は地球規模の景気後退を予測している。東アジアが高い成長を遂げているといっても、貧困は依然として深刻で津波や地震、台風が来るとさらに悪化する。貧困撲滅は東アジアの中核的戦略をなすべきだ。

 貿易は拡大しているが、地域の平和はまだひ弱だ。東アジアのすべての国は他国との国境問題を抱えている。政治の指導者が代わると劇的な形で政策が変わり、不安定になることもよくあった。間違った開発モデルを採用する国、世界から隔離された国は貧困から解放されずに取り残される。

 地域として何ができ、何をすべきか。今年は東南アジア諸国連合(ASEAN)にとって重要な年だ。昨年11月に署名された「ASEAN憲章」に10カ国すべてが批准すれば、新たな協力の時代が始まる。(人権強化などを盛り込んだ)ASEAN憲章はまだ完全でないが、政治制度や開発の度合いが違う国々が同意したという点で、大きな意義がある。

 ASEANにとって足元の挑戦は加盟国であるミャンマーの人道被害にいかに効果的に対応するかだ。ASEANは外国からのサイクロン災害への支援をもっと受け入れるよう、ミャンマー政府に働きかけることができる。憲章が批准されれば、ASEANは食料価格の高騰にもより大きな役割を担えるだろう。

 ASEANが東南アジアでの共同体形成を主導したように、日本、中国、韓国を加えたASEANプラス3はより広い東アジアの共同体づくりに欠かせない。ASEANと東アジアの経済協力と地域的統合は開発格差が縮小し、東アジア全体で貧困が減って初めて意義深いものとなる。地域の先進国が協力して途上国のインフラ投資に取り組むことが重要だ。

 米国や欧州がミャンマーに支援の手をさしのべたり、日本と台湾が四川大地震の被害者らを支援したりするといった現象が起きている。悲惨な人間の苦しみが発端かもしれないが、こういう良い流れをうまく活用して地域友好と平和の礎を築きたい。

[5月24日/日本経済新聞]

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