「アジアの未来」
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討論
▼アジアと世界 環境問題を考える


 岡部直明・日本経済新聞社主幹(モデレーター) 温暖化対策は「アジアの未来」というより「地球の未来」というほど重要で今、環境相は一番忙しい役職だ。アジアは世界の成長センターであるとともに、温暖化ガスの最大の排出地域になる。7月の主要国首脳会議(洞爺湖サミット)では2013年以降の温暖化対策の枠組み(ポスト京都議定書)へ日本の指導力が試されている。技術革新をどう国際的に展開するかが課題だ。

ラフマット・ウィトゥラル氏
ラフマット・ウィトゥラル氏

 ラフマット・ウィトゥラル氏 気候変動への対処は、地球規模の景気後退への対応と同様に重要だ。我々の政策が歴史的責任を負う。インドネシアは環境を政策の主流に置き、有害物質の不法取引の取り締まりも強化中だ。温暖化は国の持続可能性への大きなリスクだ。  07年12月の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)をバリで主催したのは誇りに思うが、長期的に排出削減を目指すバリの行動計画は改善されなくてはならない。すべての国が中期目標を設定しなくてはならない。税制上の優遇措置も大事だ。日本はアジアの成功に重要な役割を果たす立場にある。

 岡部氏 途上国から数値目標が出ることで他の排出国への大きな刺激になるだろう。

李万儀氏
李万儀氏

 李万儀氏 気候変動による異常気象は多くの人々の命と生活を奪った。今後の数年間が地球の将来を左右する。今、費用をかければ国内総生産(GDP)の1%くらいのコストで済む。遅れるほどこの比率が高まる。先進国はリーダー的存在にならないといけない。途上国は背丈にあった削減を実行すべきだ。途上国の努力を引き出すには市場メカニズムを活性化すべきで、削減実績に応じた財政、技術支援の提供が必要だ。

 岡部氏 ポスト京都議定書の枠組みの中で日本はどう指導力を発揮すべきか。その前提として国内の各方面とどう調整し連携するのか。

鴨下一郎氏
鴨下一郎氏

 鴨下一郎氏 例えば産業界では二酸化炭素(CO2)削減へ自主行動計画を策定し、努力している。ただ一般家庭などへの浸透は不十分だ。京都議定書の計画目標を実現するためにも、すべての主体が自主的に環境問題に取り組むのが望ましい。各国首脳や環境相がポスト京都議定書の枠組み実現のため、いかに現在の勢いを加速させるか。日本の役割も重要になる。

 岡部氏 日本が率先して行うべき取り組みは何か。具体策を教えてほしい。

 鴨下氏 ポスト京都は50年に(温暖化ガスの排出を)世界全体で半減し、日本も「クール・アース50」政策で呼びかけている。最終的に半減であれば、(中期的に)25―40%くらいの削減を日本も科学的には要求され、50年に50%以上、要求される。今簡単に「このくらい」と言うのが適切かどうか。全体的な流れとして、25―40%は国際交渉の中で、どのタイミングで言うのがいいのか、言わない方がいいのか。国益、地球益のバランスの中で考えるべきだろう。

 欧州連合(EU)がすでに排出量取引を実施しているが、域内企業の国際競争力が損なわれたり、排出削減義務のない国へ企業が流出するなど反省点があった。日本は世界のルールづくりで主導権をとることが必要だ。今後は化石燃料に頼らないですむような技術革新が不可欠だ。日本には技術の蓄積がある。

 岡部氏 資金、技術面などアジア域内の協力はどうあるべきか。

 鴨下氏 日本は石油ショックを省エネ技術で努力して乗り切った。これから同じ状況を経験する国がある。日本の技術や知恵を移転すれば一足飛びに低炭素社会に着地できる。公害や環境汚染対策にも役立つ。

 李氏 アジアは多様性を持つ地域で、特に中国やインド、インドネシアなど広大で(民族などが)多元的な国では効率的な解決が必要になる。日本の経験を含め、参考になる知識や成功・失敗事例を共有すべきだ。コミュニケーション技術を発展させればアジア域内でデータベースを構築・活用できる。

 岡部氏 環境問題と経済成長を両立させるには努力が必要だ。  李氏 韓国は先進国と途上国の間に位置する。急激な発展で地域間、産業間に不均衡を抱えている。50年までの排出削減目標を定める先進国の取り組みには共感するが、そこへ至る歩みや方法論は慎重に考える必要がある。  先進国と同じ目標や、日本が提案したセクター別アプローチは韓国には荷が重い。ポスト京都に向け知恵を集めているが、数値目標は設定できていない。中小企業にも改革を広げるなど模索を続けている。

[5月24日/日本経済新聞]

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