「アジアの未来」
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22日の概要
討論
▼サブプライムローン問題とアジア


 榊原英資氏(モデレーター) サブプライム問題に端を発した金融危機は第二次大戦後で最悪とみられる。米景気の急減速に伴い投機資金が商品市場に流入、原油や穀物は最高値圏にある。スタグフレーション(景気停滞下の物価上昇)懸念が世界的な問題だ。

イフサル・アリ氏
イフサル・アリ氏
 イフサル・アリ氏 新興国は先進国の景気減速と関係なく成長できるとするデカップリング(非連動)論は幻想だ。先進国とアジア新興国はここ10年で密接なサプライチェーンを築いてきたためだ。景気変動の影響が波及するまでの時差も短くなっている。

 周其仁氏 中国で物価上昇が際立っている。理由は過剰な通貨供給だ。かつて対米ドルで固定為替相場制を取ったため人民元が過小評価されて輸出が拡大、ホットマネーが流入し資産価格や消費者物価を押し上げた。明らかに調整が必要だ。

 欧米経済が減速すれば2008―09年の中国経済は厳しい状況になる。インフレを放置すれば国民が困るし、一方で人民元の上昇を容認して輸出に急ブレーキがかかると失業者が増える。ただ、中国経済の長期的な潜在力は高い。

ラジブ・クマール氏
ラジブ・クマール氏
 ラジブ・クマール氏 インドは世界経済へ組み込まれつつあり、先進国の苦境はインドにも及ぶ。米欧からの対インド直接投資や、インド企業による海外での資金調達が滞っている。(有力産業である)ソフトなどの受託開発も米国からの受注が減りそうだ。

 バンディッド・ニチャタウォーン氏 サブプライム問題のタイ経済への影響は今のところ限定的だ。ただ、世界経済の不確実性は残り、外需は今後減速するかもしれない。もう一つのリスクはアジア各国の金融政策の焦点が、成長重視から物価安定に移る可能性があることだ。

バンディッド・ニチャタウォーン氏
バンディッド・ニチャタウォーン氏
 榊原氏 食料高騰への政策対応は。

 アリ氏 政治的、社会的な対策も組み合わせ、(物価高の影響を受けやすい貧困層への)効果的な安全網をつくる必要がある。市場メカニズムの活用や農業の生産性向上、収量の多い品種開発などが重要だ。

 クマール氏 いくつか指摘したい。まずバイオ燃料の普及で、環境保護と食料確保が両立しなくなった。コメ取引にも投機資金が流入しており、消費者への打撃を軽減する措置が必要になっている。公共部門による農業投資を増やしたり、遺伝子組み換えに代わる新技術を開発したりすることも大事ではないか。

 榊原氏 人民元の切り上げペースは上がるのだろうか。

周其仁氏
周其仁氏
 周氏 人民元の対ドルレートは年初からかなり上昇したが、1ドル=7元よりも元高になると少々問題だ。輸出部門への負荷が大きい。インフレ対策は必要だが、切り上げはこれまでのようなスピードでは進まない。

 榊原氏 アジア域内の金融政策の見通しは。

 バンディッド氏 アジア各国の共通項は過去5年、景気配慮型の緩和的な金融政策を取ったことだ。各国は今後、金融を緩和し過ぎないよう注意を払うだろうが、引き締めのタイミングは各国の情勢によって異なることになろう。

[5月23日/日本経済新聞]

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