「アジアの未来」
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日経アジア賞
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22日の概要
韓昇洙(ハン・スンス)
韓国首相

日中韓、目標の共有を

 長い歴史を通じ、北東アジア地域の主要国である韓国、日本、中国の3カ国は、密接に相互交流してきた。儒教的な道徳価値という共通点は、こうした交流を通じ3カ国間で発展してきた。

 しかし、19世紀末から20世紀半ばまでの植民地化と残酷な戦争によって、北東アジアは荒れ果てた。悲劇的な歴史のつらい記憶は、20世紀後半までこの3カ国を「近くて遠い関係」のままにした。

 最近は3カ国間の経済的な相互依存関係が強まり、協力して対応が必要なグローバルな課題が増えているが、3カ国の国家間の信頼水準はまだ低く、1つの地域としてのアイデンティティーも不在だ。歴史問題において相反する見方をするときもある。しかし、過去を直視するなかで北東アジア地域の平和と繁栄の未来を築くために、北東アジアの3カ国が中心となってアジア統合を進めるべきだ。

 その際、学ぶべきは石炭と鉄鋼の共同管理から通貨統合までこぎ着けた欧州の経験だ。第1段階で加盟国の潜在的な対立を予防し、第2段階では相互発展と未来の融和を進展させた。

 欧州統合は石炭と鉄鋼の生産などを共同管理する「欧州石炭鉄鋼共同体」の創設からスタートした。北東アジアの地域統合は、「石炭と鉄鋼」を「グリーン技術とクリーンエネルギー」に置き換えることで始まる。

 今年1月、韓国政府は「グリーン・ニューディール政策」を通じ、今後4年間で約400億ドルを投じて約96万人の雇用を創出する計画を打ち出した。「低炭素グリーン成長」を通じ、韓国は新たな成長エンジンを創出するだけでなく、地球環境を維持し、温暖化への対処に向けた国際社会の議論のプロセスにも寄与するという“一石三鳥”を狙っている。

 私は低炭素グリーン成長を北東アジア地域協力の優先事項に掲げ、「北東アジアグリーン成長ネットワーク」という対話と協議の場を設けることを提案する。

 日中韓の3カ国が低炭素グリーン成長の共同目標を共有できれば、北東アジアグリーン成長ネットワークは、投資や支援など協力が可能な分野を探る素晴らしいメカニズムになるだろう。グリーン都市計画や再生エネルギー、水問題のような分野での協力も可能になる。

[5月23日/日本経済新聞]

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