「アジアの未来」
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パネル討論
▼「環境ビジネスの潜在力」

 後藤康浩・日本経済新聞社アジア部長(モデレーター) オバマ米政権が打ち出した環境政策「グリーン・ニューディール」は世界の環境ビジネスに追い風だ。

松村幾敏氏

 廖国栄氏 アジアは太陽電池の主要生産基地だが設置率は10%未満で欧米に後れを取る。普及の隘路(あいろ)の一つはコストだが2015年には先進国の電気料金と同水準に下がる見通しだ。他の国も導入しやすくなり、ブームが来る。2035年には全世界の電力の30%を占め主流になる。

 政府の役割が重要だ。世界で最も二酸化炭素(CO2)を多く排出する15カ国が積極的に支援策をとるべきだ。各国の政府予算の1.5%を拠出するだけで大きな産業育成につながる。

 コー・ケン・ホア氏 中国などで急速な都市化が進んでいる。都市は多くのエネルギーを消費する。CO2の7割は都市から出る。

廖国栄氏

 再生エネルギーを使い、資源効率が高く、雇用を創出して社会的調和もとれた「エコシティー」こそが持続可能な成長の道だ。ケッペルはシンガポールの多国籍企業で、過去15年にわたり中国政府と共同で天津、蘇州、広州などでエコシティーの開発を主導している。例えば塩分を多く含み、水が不足している荒れ地をエコシティーにしようとしている。

 実験地域だけでなく他の地域でも適用できる反復可能性が重要だ。本当に住むことができる街をつくる。他で再現できない街をつくるつもりはない。自動的に家庭ごみを吸い込むシステムなどを検討しており、企業にとっては投資機会になる。

 松村幾敏氏 世界の第一次エネルギー消費は2030年までに60%伸びる。特にアジアは倍増する。中国とインドが依存する石炭や石油が引き起こす大気汚染などの問題は域内全体の課題だ。アジア各国が国境を越えて優れた技術を共有化することが重要だ。エネルギー安全保障と環境問題、経済活性化をともに解決できる。

コー・ケン・ホア氏

 新日本石油はあらゆるエネルギーの安定供給をめざす。中軸の石油事業では原油の開発から、効率的な精製・製造、販売にいたるまで一貫操業体制の確立に取り組む。

 新エネルギーについてもバイオ燃料、水素、燃料電池から太陽電池に至るまで同様の戦略で企業活動を展開する。

 後藤氏 グリーン・ニューディールは米国だけでなく、世界各国で導入されつつある。この政策への評価は。

 廖氏 環境分野への投資で、景気刺激だけでなくCO2削減や省エネ促進などの環境対策が進む相乗効果が見込める。さらに、日本や韓国や台湾などはエネルギーを海外に依存する割合が高い。(風力などの)再生可能なエネルギー分野への投資で化石燃料の海外依存度を引き下げることも期待でき、一石三鳥の効果を狙っているのだろう。非常に意義のある政策だ。

 コー氏 グリーン・ニューディールは重要だ。環境技術分野を振興して景気を刺激することは大きな意義がある。ある試算によれば、各国のグリーン・ニューディールで4300億ドル(約40兆200億円)の経済効果があるという。各国の民間企業などが業績悪化を受け、環境分野への投資を抑制していたことを考えると時宜を得ている。

 ただ、1回限りの投資では意味がない。今後も継続して環境分野に各国政府が投資していくことが重要だ。長期的に環境ビジネス企業に投資していくことが、産業としての礎を固めることにつながる。グリーン・ニューディールが本当に意味を持つためにも、継続して長期的に取り組むことが求められている。

 松村氏 グリーン・ニューディールは不況によるピンチをチャンスに変化させることができる政策だといえる。環境ビジネスといえば、日本では伝統的に大気汚染と水質汚濁、廃棄物などの3分野への対応が重視されてきたが、CO2削減への対応も進んでいる。ただ、低炭素社会を実現するためには、企業の技術開発だけでなく、政府による(設備の)導入支援が必要になる。

 現在、日本政府が関連する予算を計上している。これは再生可能なエネルギーの普及に寄与するものだ。同様の政策が各国で導入されていることもあり、太陽光発電の市場は20年には18兆円に達するという予測もある。

 環境ビジネスの分野はすそ野が広く、2万人以上の雇用創出が可能ともいわれており、波及効果は大きい。

[5月22日/日本経済新聞]

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