「アジアの未来」
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対談

 野上義二氏 昨年来、世界は2つの変化に見舞われた。世界的な金融危機と米オバマ政権の発足だ。まず今回の危機の原因は何だと思うか。

マハティール・ビン・モハマド氏

 マハティール・ビン・モハマド氏 銀行制度やモニタリング制度などが問題だった。これらは貪欲(どんよく)な人々の乱用に耐えられない。投資会社の損失が巨額になって覆い隠すことができなくなり、実態が露呈されたことでショックが起こった。金融取引は世界の人々をむしろ貧困に追い込んでいる。

 野上氏 1997年にもアジア諸国は経済危機を経験した。その後、外貨準備も大幅に増やし、輸出志向の開発戦略も見直した。最近も「リバランシング」(均衡を取り戻す)という言葉があり、外需重視から内需重視へ移行する傾向がでてきている。

 マハティール氏 我々は外貨準備を増やし、何があっても流動性を保つ方策を取らざるを得なかった。経済を構築するときには、できるだけ多くを輸出して成長しようとする。ただ、輸出志向型を内需(主導)型に切り替えるのは容易なことではない。マレーシアの場合は、輸出を増やすためにコストを削ることを目指したが、国内購買力は低水準のまま変わらなかった。外需ではなく、内需を拡大すべきだ。

野上義二氏

 野上氏 ワシントンで「G2」というコンセプトがあるがこれは、米国と中国を指す。この2つの国こそが景気回復の鍵だと考えるか。

 マハティール氏 この2つは超大国であると認識されている。ただ、今は世界のすべての国が連携すべきで、G2だけが重要なわけではない。発言権はすべての国に与えられるべきで、様々なグループをつくることで問題が解決できる。

 野上氏 クリントン米国務長官がアジアを最初の訪問国にしたように、米国にはアジアとの関係を再構築したい意志が見られるが。

 マハティール氏 オバマ政権になって以前より関係が悪化するということはないだろう。オバマ米大統領は海外で育ったので他文化への理解があるだろうし、ブッシュ前政権よりは地球全体の視点を持つはずだ。

 野上氏 オバマ氏は今年、APEC首脳会合でシンガポールを訪れることになっている。もう一度米国を引き込んで安全保障面だけでなく、経済面での米国の関与を促すよい機会ではないだろうか。

 シンガポールに来るときには、自身が育ったインドネシアにも足を運ぶだろうし、アジアの他の国々も見てほしい。2010年には日本で、11年には米国でAPEC首脳会議を開催する。今後3年間で、アジア太平洋の枠組みにオバマ政権が深くかかわることができるようになる。

 マハティール氏 米国とASEANの相互交流は重要だ。オバマ氏に常時、アジアが直面している問題を伝え、日本が指導力を発揮してアジア諸国とともに世界の金融、銀行制度の再検討をすべきではないか。(国際通貨基金や世銀などの枠組みを決めた)ブレトンウッズ体制の合意と同様、現在の金融制度や為替制度について話し合う時期が来ている。すべての国々について新しい体制を確立し、制度の乱用を防ぐ方策を考えていくべきだろう。

 野上氏 マレーシアに対して日本の果たす役割は何か。

 マハティール氏 我々は「ルック・イースト(日本に学べ)政策」をとってきた。日本が苦境のときにも、日本から学ぶ必要がある。産業育成に向けた課題の克服や投資などの観点からも、日本はマレーシアにとって重要な国だ。

[5月22日/日本経済新聞]

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