「アジアの未来」
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24日の概要
対談
まず自由貿易地域 

 

 柳井俊二氏 日中関係改善などで東アジア共同体建設の環境が良くなってきたと思うが。

 リー・クアンユー氏 欧州のような共同体にはほど遠い。欧州は似通った歴史的背景や文化を持つが、東アジアは地理的に全く異なるうえに人種構成、文化も違う。これまで東南アジア諸国連合(ASEAN)がまとまってこれたのは共産主義を防ぐ上で必要だったからだ。異なる歴史背景を持つだけに今も経済政策などは調整が難しい。欧州型統合には不向きだ。

 欧州連合(EU)は今、トルコ加盟問題を抱える。EUの困難な実験を目の当たりにしている我々はまず、自由貿易地域から始めるべきだろう。ASEANを中心に日本や中国などと自由貿易圏の円を重ねていき、より大きな円とすることは可能だろう。

 各国とより緊密に協力すべきではあるが、欧州の教訓に学び慎重に前進することが重要だ。欧州のように野心的すぎる構想であまりに早く拡大しようとすると、人々は突然、不満を感じる。(フランスなどは)欧州憲法を否決した。

 柳井氏 日中などの役割は。

 リー氏 各国の能力、やる気次第だ。日本はASEAN各国と50年にわたる関係がある。中国の参加はつい最近だ。だが、政治的に最も活発なのは中国。トップレベルで戦略的決定を行い、これが日韓やインドに刺激を与えた。各国とも農業など様々な問題を抱えてはいるが、いずれASEANとFTAを結ぶだろう。そうしないと貿易で不利になる。競争が統合プロセスを加速するわけで、これは良いことだ。

 柳井氏 米国とのあるべき関係は。

 リー氏 米国はアジアの安定化、成長に重要な役割を果たしてきた。だが、東アジア首脳会議を開く際に米国の参加は考えていなかった。米国を入れた場合には、APECと同じになる。米国は南北の米大陸を導くべきだ。

 柳井氏 ASEANと日中韓にインド、オーストラリア、ニュージーランドを入れた16カ国の枠組みは可能か。

 リー氏 ASEAN10カ国と、その他の6カ国の各FTAが完成した場合、いくつかは融合していくだろう。最も融合しやすいのはASEANと日中韓だ。インドなどが入るかどうかはまだわからない。

 柳井氏 「過去の問題の和解」はどう進めるべきか。

 リー氏 第二次世界大戦後の歴史は欧州とアジアで異なる。欧州は過去の紛争経験から、独仏両国の首脳が協力して欧州経済共同体設立につなげた。東アジアは慎重であるべきだ。

[5月25日/日本経済新聞]

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