「アジアの未来」
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A:アジア通貨の行方


行天豊雄氏
 行天豊雄氏 1997年のアジア通貨危機を契機に域内の金融協力への関心が高まった。5月の東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス日中韓の財務相会議では、緊急時に流動性を融通し合う通貨融通協定の多角化、地域通貨単位や通貨バスケットに基づく債券の共同研究で重要な合意があった。

 タノン・ビダヤ氏 東アジアでは為替相場の安定性を高めたうえで、より大きな通貨・金融政策での協力に進む枠組みを確立すべきだ。各国は金融政策の独立性を放棄することになるため、政治の強い意志がなければ実現できない。(各国通貨を一定単位で組み込んだ計算上の共通通貨の)アジア通貨単位(ACU)を導入すれば域内貿易の為替レートは安定する。

河合正弘氏
 河合正弘氏 アジア開発銀行(ADB)は昨年4月、地域経済統合室を設置し、ACUの役割などの検討を始めた。アジアではこの20年ほどの間に域内の貿易、投資の相互依存が強まった。域内貿易の割合は80年に35%だったのが、2005年には55%以上。こうした実体面での経済統合と同時に通貨・金融面でも統合が進み始めた。各国の株式市場や金利の相関性が高まり、日本や韓国、台湾、シンガポール、タイ、マレーシアでは景気循環の連動性も強まっている。

 関志雄氏 中国も域内協力に積極的になってきた。ACU構想などには日本以上に積極的だともいえる。アジア経済の一体化が進む中、為替を安定させて取引のコストを減らすには各国の協力が必要ということを理解した。

 行天氏 金融・通貨統合は市場任せで自然に進むものではない。政府の協力や指導力が必要になる。

タノン・ビダヤ氏
 関氏 中国は昨年7月に事実上の固定相場制から離脱した。だが(変動は)明らかに不十分といわざるを得ない。人民元への米国の圧力は依然強く、何らかの妥協が必要だ。現在の変動率は年1.5%だが、これを3―4%にしてはどうか。

 河合氏 人民元が変動性を高めて、より速く上昇していくことが、東アジア全体の競争力維持と成長のためにも好ましい。

 タノン氏 ASEAN経済は人民元の切り上げを受け、不安定化した。ドルが下がる思惑で投機筋がバーツを買った結果、今年初めには8%バーツが上がった。人民元がさらに10―20%切り上がれば(バーツもつれ高し)、タイ経済は耐えられない。しかしアジア通貨建て債券市場の整備とACUの活用を進めれば、為替が安定し金融危機は回避できる。

関志雄氏
 関氏 人民元の国際化は、中国にとってメリットとデメリットの両方がある。自国通貨で国際取引をする企業の為替リスクが減り、中国の金融機関、例えば銀行や証券会社にとっては国際業務の展開が有利になる。同時に、自国の金融政策が大きく制約される欠点も出てくる。人民元を国際通貨にするためには資本取引の自由や金融システムの健全性などが前提条件となるが、現在の中国はそのすべてを満たしてはいない。

[5月27日/日本経済新聞]

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