今回の「アジアの未来」では、アジアから学ぼうとする日本人の姿勢が目立った。
「日本はアジアと比べどこが劣っているのだろう」――福川伸次・電通総研所長は問いかけた。参加者が指摘した日本の劣化の要因は、多様で根深い。
▼「世界の情報産業(IT)の開発スピードについていけない企業の経営形態と、高率の法人税など国家の制度」(曹興誠・聯華電子会長)
▼「若い人にチャンスを与えず、成果を上げた人に報いない会社や社会の仕組みと、社会の閉鎖性」(寺沢芳男・東京スター銀行会長)
▼「経営の意思決定の遅さと、新しい時代に適応しない社員教育」(井植敏・三洋電機会長)
「中国市場の開拓」でも、成功したアジア企業から学ぶべきだ、と感じた聴衆が多かった。
サムスン電子は「安物ではなく最新で最高級製品を投入しブランド力で勝負する体制を作った」(尹鍾龍・副会長兼最高経営責任者=CEO)。「変化の速い中国市場では経営も日々変えないと生き残れない」(張瑞敏・海爾=ハイアール=集団CEO)。タイのチャロン・ポカパングループのタニン・チャラワノン会長兼CEOは「中国人社員の育成と登用の重要性」を強調した。中国市場でシェアを落とす日本企業にとっては耳が痛い。
指摘された日本の弱点は長らく語られ続けながら、放置されてきたものだ。日本人はいま「中国の台頭と日本の低迷」という現実を目の当たりにし、急速な変化にいち早く必死で対応してきたアジアに学び始めた。
巨大化する中国市場を無視できる国も企業もない。「速いスピードで変わる中国」(小林陽太郎富士ゼロックス会長)が日本の変化を促している。
(アジア部 鈴置高史)