「アジアの未来」
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21日の概要
マハティール・ビン・モハマド氏
マレーシア首相

 生産「すみ分け」を

 約200年前、フランスの皇帝だったナポレオンは「中国は眠れる巨人のようだ。目覚めれば世界を驚がくさせる」と語った。起き上がった中国はブラックホールのようにすべてをのみ込むのか、マレーシアが属するASEAN経済をけん引するのか。それが問題だ。

 中国は割安な人件費で廉価な製品を大量に生産できる。日本もかつて低賃金を利点に経済を盛り上げ、技術移転を通じて東南アジア経済を成長させた。中国も同様の可能性を持つ。中国の国民所得拡大に伴い、同国からの観光客や投資が増え、東南アジア諸国に恩恵を与える。昨年末のWTO加盟はこの流れを促す。

 中国は欧米諸国と異なり、植民地を持った経験がなく(外国との)衝突があるならば経済分野で起きるだろう。家電などの中国製品はすでに東南アジア諸国でシェアを高め、輸出先でも競合している。日本、韓国などは、高価格品の生産を増やして生き残ろうとしている。

 東南アジア諸国も製品を中国と差別化し、すみ分けを目指すべきだ。今後、域内関税を原則ゼロにするASEAN自由貿易地域(AFTA)計画を本格化させ、外資獲得の増加を目指す。

 中国の急成長は確かに脅威だが、東南アジア諸国が中国を将来の敵と考えれば、中国は東南アジアを現在の敵とみなすだろう。封じ込め策は中国の軍拡を促しかねない。

 中国の孤立と軍拡を防ぎ、地域の平和を維持するには東アジア経済グループ(EAEG)の活用が有効だ。EAEGは特定国の反対で公式の活動が難しいが、すでにASEANプラス3という形で誕生している。欧州連合(EU)を結成した欧州諸国と違い、EAEGが連合化するのは容易ではないが、経済面などで様々な協力が可能だ。

 中国が脅威をもたらすか機会を運んでくるかはASEAN側の受け止め方で変わる。重要なのは13億人の人口を持つ国が存在し、その国が孤立を脱し、世界の一員になろうとしていることだ。

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