「アジアの未来」
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日経アジア賞
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3日の概要
アブドラ・バダウィ氏
マレーシア首相

 通貨機関、大きな意義

 アジア経済危機の再発防止に向け、域内で単一通貨導入の検討に着手しても早すぎるということはない。欧州と違い金融面の統合を貿易と並行して進めた方が良い。まず、日本が提唱した(専門組織の)「アジア通貨機関」の創設に動くべきだ。アジア経済を常時注視できる機関の存在意義は大きい。

 この機関はアジア開発銀行と同様、国際通貨基金(IMF)に敵対するものではない。早期設置が無理なら、前身としてシンクタンク機能を持つアジア通貨研究所を設置すればよい。

 東アジア共同体は願望ではなく、生産的で力強い現実になった。将来像として欧州連合(EU)から非効率的な部分を除いた「EUマイナス型」の組織、あるいは東南アジア諸国連合(ASEAN)より統合の度合いを深めた「ASEANプラス型」の組織を目指すべきだ。

 東アジアには外交・政治上、重要な地位を占める「ASEANプラス3(日本、中国、韓国)」の枠組みがある。これを定期首脳会議に昇格させれば地域統合への意識をもっと高めることができるはずだ。

 ASEANプラス3が統合に向け、より高い次元に導かれるよう、創造的で生産的な構想を育てる必要がある。関係国は貿易、金融だけでなく、保健、科学技術、労働、環境分野での協力拡大に力を注がなければならない。

 東アジア版の経済協力開発機構(OECD)の設立を唱えるリーダーはいないだろう。東アジアは多様な機関やシンクタンクの貢献を必要としている。だが(欧州統合の共通合意である)ローマ条約や欧州官僚(ユーロクラット)に相当するような「アジア官僚(アジアクラット)」は必要ない。

 統合の実現過程ではこれまで同様、民間部門が投資、貿易を通じて駆動力として先導すべきだ。政府部門には政府間の事業協力の拡大や治安維持、法制度整備を通じて、民間を助ける役割がより期待されている。

[6月4日/日本経済新聞]

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