TCFD提言への対応 2023

気候変動対応の基本的な考え方

日本経済新聞社(以下:日経)は、地球環境の保全に向け、気候変動への対応を重要かつ優先的に取り組む経営課題と位置付けています。企業の社会的責任として事業活動のすべてにわたり環境負荷の低減をはかり、メディアの特長を生かした関連情報の提供に努めます。
日経グループ全体では、各拠点における再生可能エネルギー由来の電力使用を推進しております。また日経では、国内外の脱炭素の取り組みや技術革新の最新動向などを手厚く報じ、メディアとしての責務を果たしていきます。自らの取り組みとしては、新聞資材の省資源化や、紙や電気の適切な使用、自然災害に対するサプライチェーンの対応策を含めたBCP強化などを推進していきます。
気候変動関連の情報開示については、2022年7月にTCFD提言に賛同し、提言に沿った情報開示を持続的な取り組みとして推進してまいります。なお、日経の環境情報を含めた開示内容に関しては、弊社ウェブサイト上にも掲載しております。

ガバナンス

気候変動の取り組みは、2022年9月に発足した「サステナビリティ委員会(委員長:長谷部剛社長)」で審議し、役員が経営方針を議論するグループ経営会議で承認します。グループ経営会議で承認した内容は年2回、定期的に取締役会に報告し、取締役会の監督を受けることとします。
取締役会は、気候変動問題の担当役員を任命するとともに、経営計画などのレビューや投資の判断の際、気候変動問題全般を考慮して決定を下します。
排出量削減の目標達成にあたっては、各事業部門が削減に取り組み、サステナビリティ委員会がその進捗を監視します。

日経の気候変動取り組み体制図

戦略

日経はTCFD提言で例示している気候変動によるリスク・機会をベースに、シナリオ分析を実施しました。気温上昇を「2°C以下」とするケースを含む複数のシナリオについては、低炭素社会への移行を想定した「1.5°Cシナリオ(※1)」と、気候変動の物理的リスクを想定する必要がある「4°Cシナリオ(※2)」を選びました。2つのシナリオにおける中長期(2030年、2050年)の事業環境の変化、気候変動のリスクと機会を確認しました。分析したシナリオのいずれにおいても、分析対象事業ではレジリエントな経営を行うことが可能だと確認しています。

▼[1.5°Cシナリオ(※1)]
産業革命前からの気温上昇が21世紀末で1.5°Cに抑えるシナリオ。脱炭素社会が進むことに伴う政策規制、技術などのコスト、市場動向、評判などのリスクが生じる。試算ではIEA(国際エネルギー機関)やIPCC(気候変動に関する政府間パネル)などの情報をもとに、2050年のネットゼロを達成する「IEA NZE」などを採用した。

▼[4°Cシナリオ(※2)]
気候変動への対策が進まず産業革命前からの気温上昇が21世紀末で4°Cに到達するシナリオ。自然災害の激甚化、海面上昇などの気候変動に伴う物理的リスクが高まる。試算ではIEAやIPCCなどの情報をもとに、気温が2.6~4.8°C上昇する場合の「IPCC RCP8.5」、各国が表明済みの政策を実施することを織り込んだ「IEA STEPS」などを採用した。

〈シナリオ分析の結果〉
項目 概要 事業への影響 対応策
1.5°C 4°C
リスク 炭素価格変動
  • 各国の炭素税や排出量取引の導入、国境炭素調整の導入で新聞などの製造コストの増加
  • 各拠点における再生可能エネルギー由来の電力使用を拡大
原材料コスト
  • 自然保護関連の法整備による海外から調達する用紙や石油由来のインキ等の原材料コストの増加
  • 森林火災増加による海外から調達する用紙の原材料コスト増
  • エコインキ、保護用紙を必要としない印刷版、現像処理で薬品を使用せず輪転機(印刷機)に直接装着する印刷版の採用
  • 古紙配合率の高い新聞用紙を採用
エネルギーコスト
  • 再生エネ調達や省エネ対応に伴うコスト増加
  • 気温上昇時における空調のコスト増加
  • 自家発電設備(太陽光発電設備等)の導入検討
  • エネルギー効率の高い機器やサービスへの見直しや利用頻度の適正化を推進
物理的リスク対応
  • 異常気象の影響による工場停止に伴う損失
  • 異常気象の影響による輸送などのコスト増加
  • 業務継続に関わるマニュアル・設備の強化
  • 災害時に備えた代替印刷・輸送の体制整備
  • 自社が所有するリスク資産の適正化
機会 災害情報需要
  • 自然災害の発生増に伴い、経済へのリスク分析などの情報の需要増加
  • 災害情報に関する速報通知の強化
  • 衛星情報を活用した分析記事などの発信強化
ESG情報の需要
  • ミレニアル世代・Z世代向けのESG情報の需要増
  • ESG関連情報やサステナビリティ関連企業の広告に対する需要増
  • 新デジタルメディア「NIKKEI GX」を創刊するなど脱炭素への関心の高い読者層拡大
  • SDGs関連の高校生向け教育イベントなどを通じた人材育成支援
  • サステナビリティに積極的な企業広告を定期展開
  • 「NIKKEI脱炭素プロジェクト」「日経SDGsフォーラム」「NIKKEIブルーオーシャン・フォーラム」「NIKKEIメタバースプロジェクト」などを通じた各企業のネットワーク作り促進

社会将来像において、「1.5°Cシナリオ」では石油由来のインキ価格上昇、「4°Cシナリオ」は森林火災の激甚化による用紙コストのさらなる増加や大雨・洪水による被害額増加などが日経の事業・経営に対し一定の影響を与えることが想定されます。一方、1.5°Cシナリオでは、サステナビリティに対する感度の高いミレニアル世代やZ世代、海外を含めたESG投資家向けの情報提供の拡大、4°Cシナリオにおきましては、自然災害情報の即時提供や関連記事の展開などに関して、大きな役割を果たす必要があると認識しています。
これらの分析結果を踏まえ、日経グループ全体における非化石証書を活用した再生可能エネルギーの調達を拡大するとともに、これまでも取り組んできたエコインキ、古紙配合率の高い新聞用紙の利用を引き続き進めてまいります。メディアとしては、2022年11月に脱炭素社会への変革のヒントを探る新デジタルメディア「NIKKEI GX」を創刊しました。これからも脱炭素化をめぐる積極的な情報発信を行います。社内ではエネルギー効率の高い機器やサービスへの見直し、各種機器の利用頻度の適正化、自然災害に対する業務継続に関わるマニュアル・設備の強化を進めていきます。

リスク管理

日経グループでは、気候関連のリスクをグループ全体の経営リスクと位置づけています。経営の安定性を保ち、企業価値の向上につなげるため、業務内容に応じたリスク管理体制を整備しております。具体的には、各事業部門が日経のサステナビリティ委員会、サステナビリティ委員会事務局と協働し、リスクの識別と管理を行います。そのうえで、サステナビリティ委員会がリスクを評価します。
リスクは中長期的な観点から、低炭素社会への移行を想定した「1.5°Cシナリオ」と、気候変動の物理的リスクを想定する必要がある「4°Cシナリオ」の2つを想定し、経営や事業への影響を定期的に識別・評価します。評価にあたっては、各リスクの発生に伴う財務へのインパクトを総合的に判断し、とりわけ影響が大きいリスクについて、大・中・小の3段階で評価することとしています。こうしたリスク評価の結果はグループ経営会議と取締役会に適宜報告し、グループ全体で取り組みを点検・監督します。

〈気候変動リスク管理プロセス〉
識別・評価 管理 報告
  • 各事業部門がサステナビリティ委員会、同委事務局と協働し、リスクの識別・評価を実施
  • 炭素税など新たな規制の導入や関連コストの増加といった外部要因を踏まえ、定期的に評価を実施
  • 気候変動リスクはサステナビリティ委員会と同委事務局が管理
  • シナリオ分析にあたっては、各リスクがもたらす事業への影響や財務的なインパクトを検討し、対策の優先順位を決定
  • 気候変動リスクの評価結果をグループ経営会議、取締役会に適宜報告する。グループの経営リスクと位置づける。

指標と目標

国際社会が世界共通の課題として脱炭素に向けた動きを加速し、温暖化ガス(GHG)排出量削減による地球温暖化抑止は必須の活動となっています。日経グループも脱炭素社会の実現に向け、政府の排出削減目標と連動した取り組みを進めています。事業活動におけるGHG排出量を把握し、着実な削減につなげます。
日経と連結対象会社を含むグループでGHG排出を実質ゼロにする「カーボンゼロ」を目標に掲げます。2019年のGHG排出量(=CO2排出量。CO2以外は5%未満のため省略)は自社の事業活動による排出(スコープ1およびスコープ2)が4.5万トン、バリューチェーンの排出であるスコープ3を含むと合計65万トンでした。2030年までにスコープ1とスコープ2の実質ゼロを実現し、さらに2050年にバリューチェーンの排出(スコープ3)を含めてカーボンゼロを目指します。

〈排出量削減のイメージ〉
日経の排出量削減のイメージ