「アジアの未来」
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日経アジア賞
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5日の概要
リー・クアンユー氏
シンガポール上級相

 若い起業家に資金必要

 1997年の通貨危機以降、アジア経済は厳しい状況が続いている。SARSは冬に再流行する懸念があり、米国に広がれば人々は家にこもってしまい需要が減少する恐れがある。SARSを抑えられればアジアは年後半に7、8%の成長に戻ることも可能だろう。

 米国ではデフレ懸念が指摘されている。しかし、デフレを防いで消費を下支えし、6―8カ月以内に回復できれば、世界経済の原動力になると期待している。

 日本は今後30―40年間、技術力の優位を保ち続けるだろう。中国の技術向上のテンポは韓国や台湾に近く、急速に追い上げてくる。新たな分野開拓が必要だ。生命科学の分野は競争の舞台になり、日本は米独と競い合うだろう。

 日本社会の団結の強さは今後も強みになる。阪神大震災の時に、みんなが協力して救助に参加した逸話は、ロサンゼルスでの地震後に略奪が起きたのとは対照的だ。

 日本はデフレから立ち直るだろう。銀行が機能できない状態だが、弱い銀行を閉鎖し、強い銀行を育成することで再生できる。民間銀行は最善の努力をしており、これは中央銀行の問題だ。私が受け取った分析では、すべての銀行を国有化すべきだという内容だが、実現可能性は20%以下だと指摘していた。日本は銀行を再び機能させ、中小企業の息を吹き返させなくてはならない。

 我々はアイデアを持つ若い起業家にベンチャーキャピタルを通じて資金を提供しなくてはならない。9社が失敗しても、1社が成功すれば利益を上げることは可能だ。かつて良かったシステムを追いかけてはならない。

[6月6日/日本経済新聞]

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