通貨バスケット、域内で導入を
我々は1997年のようなアジア経済危機を今後どう回避するか政策提言している。97年の危機は高インフレなどが原因の伝統的な経常収支危機とは根本的に違う。大量に流入した資本が突如流出して起きる資本収支危機だった。
この危機に対し、アジアでは「地域的な最後の貸し手」の制度を作ることが重要だ。昨年5月に東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓3国が合意した通貨スワップ協定の枠組みは将来性のある仕組みといえる。
金融市場が発展途上のアジア諸国・地域では、為替変動が国内の資産価格の変動に結び付きやすいため、為替レートの安定化が必要だ。固定相場制と変動相場制の中間の道を進み、円、ドル、ユーロなど複数の相場動向に連動する通貨バスケットにする。域内貿易が進めば相互の為替安定が望ましく、共通の通貨バスケットを持つ方がいい。
マクロ経済政策の協調も必要で、この考えを進めればアジア共通通貨も夢ではない。経済的束縛は域内の安全保障にもつながる。
米国の景気減速はアジアの資本収支危機にはつながりにくいだろう。
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