公的資金、再注入は不要
銀行が不良債権処理を進めると自己資本が不足するので、再度(政府が銀行に)公的資金を注入しないといけないと言う人がいる。私は公的資金の再注入は不要だと考える。これを批判する人は、再注入となると私が決めた1回目の注入が失敗だったと認めることになるからだと言う。
私は失敗を認めるのを恐れたりしない。私の目的は日本の金融を良くすることだ。判断の間違いを撤回するくらいは日本の金融を立て直す大義に比べればちっぽけなことだ。
なぜ再注入が不要かというと、銀行の自己資本は不足していないと思うからだ。日本の銀行は個別の事業に対してではなく企業そのものに融資している。不良債権かどうかがわかるまでには時間がかかる。最終的に不良債権にならないかもしれない。ただちに不良債権になるわけではないので、いっぺんに銀行の資本が傷むというよりは、それより先に生じる貸し出しからの利益で償却できる。
しかし、不良債権処理を進めるうえで、融資のあり方を変えていかねばならない。企業全体に貸す日本型のコーポレートファイナンス(企業融資)から、事業ごとの米国型のプロジェクトファイナンス(事業融資)に変えるということだ。そうすれば融資が不良債権かどうかが短期間でわかる。企業を再建するうえでも、採算の良い部分と悪い部分に分けるという手法が取りやすくなる。
不良債権の処理に伴う、中小企業へのデフレ圧力は否定できない。建設業で1つの(大)企業が倒れたら200-300社の下請け企業が総崩れになるといわれる。しかし、下請け企業には別の(大)企業を見つけるといったたくましい生き方もある。問題企業はすでに事業規模を縮小しているという面も見逃せない。
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