「アジアの未来」
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第5回アジア賞
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シサワット・ケオブンパン 首相(ラオス)
アジア経済への参入におけるラオスの発展の方針
 大きなアジア大陸は世界最大の人的資源を擁し、またエネルギー源となる豊富な自然資源を有しています。さらに、アジアは人類の文明の発祥地であり、近代科学の萌芽の多くも最初はアジア大陸において生まれました。これらの事実に基づいて、アジアは今以上に発展すべきであり、アジア地域の各国も現在見られる様な大きな格差のない経済発展のレベルにあるべきです。しかし逆に、アジア大陸の土地の大部分はかつて何世紀にもわたって他大陸の大国の植民地となり、繰り返し戦争の被害を受けてきました。特にラオスもフランス植民地時代からアメリカによるインドシナ戦争までのほぼ1世紀の間他のアジア各国と同じ運命に陥りました。

 これらのことは、アジアの民衆に対し注意を促し、国家独立への愛着心を深め、21世紀の世界でアジアが政治、経済、社会的により大きな役割をもつようにするための協力を行うことを促進するものです。右を達成するために、特に経済発展の格差が拡大しやすいグローバライゼーションの時代の中で、アジアの民衆に対し多くの困難や様々な挑戦を克服するよう要請したいと思います。

 東南アジア各国が1976年の東南アジア友好協力条約の精神に基づきASEANという一つの所帯を形成していることは、ASEAN加盟国の経済的相互参入へ至る最初の重要なステップであると私は思います。次のステップは、ASEANと東アジア各国すなわちASEAN+3がより大きな相互利益を得るよう協力関係を拡大することです。ASEAN+3は現在端緒についたところですが、立派な基礎を有しています。より重要な第3のステップは、ASEAN加盟国と発展した対話国との間で経済発展の格差を解消するための真剣な協力を行うことです。

 この第3のステップに関し、アジア全域各国の共通の努力と、また日本、中国、インド、およびASEANの経済、政治的役割が日々高まっていくことによって、我々のアジアが長期的平和、安定、協力、繁栄を有する大陸になることを保障できると私は考えます。

 ラオスのようにASEAN新規加盟国も、現在低開発国の地位にあるにせよ、上述の努力に貢献するための国力をもっていると考えます。我々のもつ様々な潜在力や、地域および世界の条件に鑑み、ラオスが確実な一歩一歩を通した国家発展への建設に十分な能力を有していると我々は確信します。重要なことは、我々が農林業を工業・サービス業とリンクさせ、市場経済システムに基づいて各経済主体を奨励し、対外協力開放政策をとっていることです。私は皆様の御理解に資するためいくつかのデータを提示したいと思います。

1.ラオスは南北に2,000キロ以上の長さがあります。海へのアクセスがなく、メコン河流域の中心に位置し、5カ国と国境を接しています。その内4カ国はASEAN加盟国、すなわちヴィエトナム、カンボディア、タイ、ミャンマーであり、残る中国はASEANの対話国です。

2.ラオスは自然資源に恵まれています。森林面積は1,100万ヘクタールで、国土面積の47%に相当します。耕地面積は約400万ヘクタール、未発掘の鉱物資源を有し、メコン河に流れ込む水量の約40%がラオスを水源としています。また、ラオスには観光のためヴィラエティに富む美しい自然の景色と文化があり、その中には世界遺産のルアンブラバンが含まれます。

3.ラオスは政治的、社会的に安定し、1986年以降、集中経済体制から市場経済化への転換を行いました。対外協力開放政策を実施して、1994年政府は、1988年制定の外国投資法を改定して70億ドル以上が対ラオス投資の登録を行っており、その内75%が電力分野の投資です。現在ラオスの経済社会開発は満足すべき成果をあげ、またラオスは2020年に低開発国の地位から脱出するための計画と目標を策定しています。

4.ラオスのもつ困難は、高度な技術専門分野の人的資源が少なく、道路などの経済インフラ基盤が十分に開発されていないことです。

 上記の潜在的条件と困難な実況に鑑み、私は、小渕前総理が昨年11月にASEAN日首脳会談の場で提唱された日本の指導的イニシアティブを心より支持します。特に、メコン河流域のASEAN新規加盟国の経済発展のレベルをASEAN旧加盟国に近づけるための開発協力は、ASEANによるメコン河開発協力プロジェクトに対する重要な貢献になります。

 我々の東アジアにおいて相互利益のための開発協力の条件を整えるため、またラオスのもつ特異な点に鑑み、私は友好国が以下のプロジェクトを集中的に実施するよう提案します。

1.加工業部門の健全な発展と関連された熱帯地域における農業開発。

2.電力が不十分な近隣国の需要に応ずるため、ラオスにおける水力発電ダムの開発を行うこと。メコン河委員会のデータに基づけば、ラオスのメコン支流はダムの建設により21,000メガワットの発電能力がありますが、現在は800メガワットしか利用できていません。

3.5カ国の中心に位置するラオスが相互参入と地域開発協力に資するため、鉄道、水上、航空路を含む陸上交通の開発を行うこと。過去、ASEANはシンガポール・クンミン間の鉄道路建設で一路線のラオス通過を合意しましたが、アジア経済通貨危機によりこの計画は延期されています。また、アジア開発銀行からの支援を受けている、ラオス中・南部とヴィエトナム中部、タイ東北部並びにカンボディア東北部間の道路建設計画も重要です。同じ精神に基づき、1999年10月にラオス、ヴィエトナム、カンボディアの首相がヴィエンチャンにおいて会合し、ラオス南部、カンボディア東北部、ヴィエトナム中部の開発の三角地帯建設のイニシアティブをとりました。

4.地域各国間の自然・文化観光を促進すること。右は、製造業を奨励し、雇用を創出し、地方開発を行うための重要な要素であり、またASEANと対話国が合意した方針に適合しています。

 一般的に申し上げて、アジアで最も健全な経済をもつ日本の協力や、上述しました相互利益に基づく協力によって、低開発国であるASEAN新規加盟国の経済発展のレベルはASEAN旧加盟国および地域各国に近づくことが出来ます。これは、ハノイ行動計画に適合し、実施されているASEAN自由貿易地域を促進する重要な要素となり、同様にASEAN加盟国の経済相互参入の努力への貢献となります。同時に我々の東アジアが政治、経済、社会の舞台で世界的に大きな役割を担うことに貢献するでしょう。

 ラオスは現在低開発国ですが、アジアの繁栄の未来のための開発協力にラオスが貢献することが可能であると私は確信します。

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