マイケル・アマコスト氏(米ブルッキングス研究所所長)
米は全方位外交に・日本は自然なパートナー

 アジアでの最近の一連の出来事によって地域の安定性に新たな懸念が持ち上がっている。中国、ロシア、日本の主要国間での権力分散、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核兵器開発疑惑、さらにインドとパキスタンの予期しなかった核実験、96年の中国による台湾海峡での挑発的軍事行動、昨年来の通貨・金融危機――などである。

 こうした事態を受けて米国はアジア外交の戦略的ガイドラインを明確にする必要に迫られている。19世紀の英国の対欧政策のように、つかず離れずの柔軟な関係を維持する「英国型」か、すべての主要国と組み政治的に現状維持を図る「ビスマルク型」の積極的関与政策か。米外交は後者の全方位関与型戦略に傾きつつある。特定の敵をつくらず、また他国が米国に対抗しないようにするものだ。

 この戦略に沿って、米国は核兵器開発競争の阻止、南北朝鮮の平和的共存といった目的のためにアジア主要国とそれぞれ二国間の関係改善に努力している。

 とりわけ中国に対しては世界貿易機関(WTO)加盟やミサイル関連技術輸出規制(MTCR)への参加などを働きかけている。だが、対中関与を強めているのは確かだが、米国にとって最も自然なパートナーは中国ではないことを忘れてはならない。そのパートナーは日本なのである。

 近年、米国と日本の関係では安全保障、経済、政治のバランスが回復してきた。時折、フラストレーションが噴出することはあるが両国関係は強固である。

 米国は財政赤字をなくし、産業のリストラを継続して競争力を高めた。これにより日本にとってより強力でより信頼できるパートナーになった。だからこそ日本に対しても、政府の内需刺激策や金融機関の構造問題の解決、規制緩和の加速といった一連の政策が奏功し、日本経済が停滞から脱出するよう望んでいる。

 残念ながら、米国内はこうした対アジア外交戦略にとって理想的な状態とはいえない。最も重要な外交上の課題は議会など国内での支持を取り付けることになっている。

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