関本忠弘氏(NEC会長)
企業は変化を起こせ・日本的経営の神髄は不変

 私の作った言葉に「変即不変」というのがある。変化の中にも核となる不変の部分がある一方、一見すると変化していない姿の中にも日々変化は生じているという意味だ。アジア的経営、あるいは日本的経営の構造にも同様のことが言えると思う。

 日本的経営を支えてきたものには総合性、長期的な視点、労使協調という視点が挙げられる。欧米型を個人主義・マニュアル主義とすれば日本型は集団主義であり、以心伝心の世界だ。

 デジタル社会のハードでは日本が世界トップだ。米国を上回る技術力、商品の品質を保っている。産業ロボットの台数も欧米より一ケタ多い。これらの背景に良好な労使関係があったことが見逃せない。

 一方、世界はメガコンペティション(大競争)の時代を迎え、情報化やボーダーレス化、規制緩和、グローバルスタンダードといったことが日本的経営に対するプレッシャーになってきている。日本的経営がどう変わることができるかが問われている。

 NECグループは世界で120社余りが活動しているが、それぞれが自主的な事業計画を立てながら全体としてうまく動くようにしている。ポイントは異文化とのかかわり方、多様化する従業員への対応、そして個を尊重しながら全体を統一するホロニック(総合的)経営だ。情報の共有と企業文化の旗が必要になる。

 日本の大企業でも変化は起きている。例えば、米国企業に比べ日本は労働力の流動性は低いが、終身雇用はすでに崩れ、「ローテーション雇用」が広がりつつある。企業グループ内で必要な所に能力を生かせる人材を自由に投入するやり方だ。日本的経営のエッセンスは不変だろうが、(1)企業は変化を恐れず、むしろあるべき変化を起こす(2)考えるだけでなく前向きに実行する(3)実行の速度をさらに上げる――ことが重要だ。

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