金宇中氏(韓国大宇グループ会長)
西欧的尺度に疑問・自らの経営文化に自信を

 IMF体制以降、我々は暴風のような変化と改革の中で暮らしている。改革は西欧先進国の尺度で決められがちだ。我々は悪く米国のものは良いといった極端な二分法さえある。

 例えばスイスの国際経営開発院は、韓国の競争力が40数カ国で最下位としている。世界有数のコンサルタント会社、マッキンゼーは米国企業の自己資本比率が50%を超すのに対し、韓国企業は20%の水準とのデータを示す。

 成長過程で無理をしたのは事実だが、韓国のあらゆる政策と状況が最も劣ると評価するのは行き過ぎだ。国を評価する際には発展程度や文化特性を考慮すべきだ。

 米国と異なり韓国では公平と合理よりも均等と人情を優先する。企業にとって解雇は困難で、買収されることは不名誉とされる。農耕社会から工業社会への発展が急速だったため、市場経済のもとである競争の概念も確立されておらず、経営の透明性向上の障害になっている。

 歴史的に侵略に悩まされた結果、家族中心的な思想が根強く、儒教思想と結びついて血族を優先して他人を警戒する風土を生んだ。この結果、家族中心の経営体制が定着した。

 ほんの30年間の発展の歴史しか持たず、資本蓄積が少ないため、急速な発展のために外資を活用する政策を展開してきた。これが企業の高い負債比率と国家全体の対外債務増加につながった。今、借金経営は罪悪視されるが発展に寄与した時代もあったのだ。

 韓国には勤勉な労働力がある。儒教思想をもとにした高い教育熱もある。発展を成し遂げた世代がまだ第一線で情熱的に活躍している。韓国経済のファンダメンタルズには変わりがない。問題はこの発展志向的な文化を前向きに機能させることだが、それには自信を回復することが重要だ。

 私はアダム・スミスの「見えざる手」が語られるたびに疑問を感じる。我々は西欧的尺度がはんらんする中で、自分の尺度を作り、自信を持って国を率いていくべきなのだ。

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