タリン・ニンマンヘーミン氏(タイ蔵相)
金融監督と規制を強化

 安定的な金融システムを実現するため、タイでは三つの基本的な条件を満たす必要がある。第一は為替・物価の安定。第二は健全なマクロ経済。第三は実効性のある法的監督と規制の枠組みに基づいた企業統治の向上だ。タイは為替や物価の安定は実現したが、依然、マクロ経済状況や企業統治を改善しようとしている。

 為替と物価はIMFとの協力に基づいた厳密で包括的な改革プログラムを順守した結果、タイへの市場の信認は回復してきた。タイバーツは年初来35%上昇。中銀は外貨準備高を当初予測の230億―250億ドルから260億―280億ドル程度へ上方修正した。インフレ率も予想より低い水準にとどめた。

 一方、マクロ経済は実体経済が縮小、内需は激減した。流動性は不足し98年度は成長率が4-5%のマイナスになる。今の段階では財政赤字が膨らんでも内需を増やすことが必要だ。輸出の大幅な増加は近い将来期待できないので、総需要拡大は当然のことながら政府支出の負担で実現するしかない。

 金利は緩やかに下げる。政府は流動性を回復し、国内の短期金融市場に存在するゆがみを除去しようとしている。タイ国会は最近、5000億バーツの国債を発行することにした。国内総生産(GDP)の10%に匹敵する額で、流動性の回復などに利用する。グローバル債の発行も実施、四つの特別銀行を強化して、特に輸出部門に貸し付ける。

 金融不安についてはまず監督と規制の強化を実施する。ポートフォリオ価値と自己資本を充実させるため、すべての金融会社はタイ中央銀行と覚書を交わさなければならない。いわばガイドラインで必要に応じて立ち入り検査もする。債権分類や担保評価のルールも6月半ばまでに導入する。

 企業の信用不安に関しては、不良債権のポートフォリオをきちんと出させる方針を打ち出した。同時に10月までに破産法を改定し、債務者や債権者に資産の処理を迅速にできるような仕組みに変えていく。

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