ノルディン・ソピー氏(マレーシア戦略国際問題研究所会長)
危機の第二幕、回避へ協力を

 アジアの金融システムを安定させようとすれば、議論は金融だけにとどまらない。金融システムを本当に安定させて活力と持続性を持たせるには、地域間の協力関係を強化して経済システムを改革し、社会を再開発しなければならない。

 重要なのは短期的な取り組みと中期的な施策、長期的な改善策を区別することだ。短期的に効果があるからといって長期的にそれが役立つとは限らない。

 まず心理的な流れを逆転させなければならない。「アジア・ユーフォリア(至福感)」があったのはつい最近の話だ。アジアの成功物語のなかで政府や指導者に欠点はほとんどなかった。膨大な資本がこの「奇跡の地」に流入し、だれもが東アジアの奇跡を疑わなかった。我々自身がそれに浮かれてしまったのも無理はない。

 だが、一瞬のうちにそれは「アジア・パニック」に変わり、いまや「アジア・ペシミズム(悲観論)」さえ漂っている。我々は即座に行動し、様々なレベルで協力してパニックの第二幕を回避しなければならない。そうして我々は「アジア・リアリズム(現実論)」へと進むことができる。

 我々が目にした通貨の膨大な移動が純粋な経済ファンダメンタルズの機能であると考えるのはばかげているが、同時に、アジアの金融安定化のためには経済のファンダメンタルズを強化する以外に手はないことも明らかだ。

 今回の危機は地域協力強化の必要性を示唆している。危機を受け、東アジアの指導者が地域経済の安定と福祉を守る方法について、真剣に討議するよう強く希望する。

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