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堀口 雄助氏
国際通貨基金(IMF)アジア太平洋局準局長
 情報の開示 重要

 まず、最近アジアで起きた経済危機から得た一連の価値ある教訓について指摘したい。これらの教訓は為替レートや金融市場を安定させ、過去の過ちを避けるのに役立つだろう。

 危機を通じて明白になった第一のポイントは、短期資金を過度に外資に依存しないことの重要性と思われる。第二に、ディスクロージャーと透明性は、為替レートと金融市場の安定性を保証するために極めて重要ということだ。

 最後に、固定相場制にはリスクがあるという教訓だ。資本の過剰流動性をもたらす危険がある。これらの点については現在、論争の余地はないが、まだ解決されていない問題についても触れてみたい。

 まず第一に、金融安定を進めるための資本移動の規制には、重要で未解決な問題が残っている。市場の枠組みの中で流入規制をすることは、短期資金の移動を防ぐのに有効だと言われる。しかし規制を導入した国はその後、深刻な資本の逆流を防ぐことができなかった。

 根本的な経済政策が不適切であればこのような事態は避けられない。流出規制は効果がある場合もあるが、コストに見合うかどうかは明らかではない。

 第二点は、為替レートや通貨政策に関する問題だ。私の考えでは、ほとんどの地域では、通貨をドルに対して固定相場性とするのは好ましくない。これに代わり、欧州では通貨統合が達成されたが、アジアではこうした措置が有効となる政治的、経済的な条件が整っているとは言い難い。

 危機が直面した国に対する国際通貨基金(IMF)の支援策が正しかったかという問題もある。私個人は一般的に正しかったと思っている。IMFは支援した国にさらに改善を求めているし、危機の防止策や、危機が起きた場合の対処法を検討している。

 IMFの努力の一環として、国際的な金融システムをどうつくっていくかも問題だ。実際に進展があった分野として金融政策の透明性を担保する基準づくり、IMFのオペレーションの透明性を高めることなどが挙げられる。

 民間部門をどう巻き込むかという問題もある。危機が起きた時、民間の債権者が危機の最初の兆候を見て自分だけ脱出しようとすることを避ける仕組みをどうつくるか。いろいろな提案が出ているが、まだコンセンサスは得られていない。

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