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ゼティ・アクタル・アジズ氏
マレーシア中央銀行副総裁
 規制と改革 両立

 マレーシアには通貨危機の際、国際通貨基金(IMF)のプログラムが適用されず、独自に採用した対処法は大きくIMFの処方せんから離れたものだ。マレーシアのケースをこの場で説明できることを感謝したい。

 通貨・金融市場はファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を反映するものでなくてはならないが、それには市場そのものが(自律的な)調整機能を持っていることが前提となる。

 しかし危機の状況では、市場は自らの調整機能をなくし逆の現象が起こってしまう。不安定な状態で不合理な市場の行動のもとでは流れはむしろ均衡から外れる。相場の乱高下は、金融市場のトレーダーにとっては大きな収益のチャンスとなるが、長期の投資家にとってはマイナスだ。

 東アジアの危機は政策担当者にとって金融市場にどのように対応していくかという点で厳しい挑戦となった。マレーシアの対応は従来の処方せんからいくつかの点で離れている。このために議論が起こったわけだ。マレーシアでは5つのポイントに重点を置いた。

 第一は政策は包括的なものであること。第二には将来のリスクを把握すること。第三は中期的な課題にも対応すること。第四は外国投資家と国内投資家両方の信認回復に等しく重点を置くこと。第五が政策実施の優先順位を決めることだ。

 一連の措置を実施し、好ましい結果が表れ始めたにもかかわらず、98年のロシアと中南米の危機によりマレーシアは新たな危機に直面してしまった。

 このため、同年9月に為替規制を導入し、固定相場を導入し、株式投資による利益の国外持ち出しを禁止した。これらの政策には十分な経常黒字と外貨準備という条件が必要だった。この結果、短期資金の流れは安定した。

 IMFは資本規制を批判している。しかし一定の条件さえあれば資本規制は実効性があり、安定を取り戻すことができることをマレーシアは証明した。もちろん規制の時期や方法は十分検討しなくてはならない。

 一方でマレーシアは国際基準に合致する金融構造改革を進めており、(市場のルールを重視した)透明性と情報公開の強化を目指している。

 長期的な地域の安定のためには効率的な国際金融制度が必要だ。(通貨バスケット制など)建設的な考えに目を向けていきたい。

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