榊原英資
大蔵省財務官
 市場を揺さぶるミスターYEN

 午前9時。大蔵省の正面玄関には「榊原番」と呼ばれる内外の記者たちが集まる。為替ディーラーの間でこの人ほど名を知られた日本人はいない。電子メディアを通じて世界中を飛び回るその片言隻句は、たちどころにマーケットを揺さぶる。「ミスターYEN」の異名を取る異色の大蔵官僚だ。

 大蔵省の国際部門トップである財務官に就任したのは昨年7月。国際金融局長だった95年夏、市場の意表を突く為替介入で1ドル=80円の超円高を修正した手腕が買われた。日本版ビッグバン(金融大改革)を陰で仕掛けたのもこの人といわれる。

 「介入するときは必ず勝つ」が口癖。市場の隙(すき)をとらえて口先介入する手法は時にギャンブルのようにも映るが、実は厳密な経済理論に基づく。米国のハーバード大学で日本経済論の教鞭(きょうべん)を取ったとき以来、ラリー・サマーズ米財務副長官とは懇意の仲。日本文化論などに関する著書も多数ある。64年東大経卒、57歳。

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