核関連技術の移転防止へ新たな枠組みを・首相
 橋本竜太郎首相は4日夜、都内のホテルで開いた国際交流会議「アジアの未来」(日本経済新聞社主催)の夕食会であいさつし、核不拡散体制を強化するため、インド、パキスタン両国から第三国への核とミサイル関連物資・技術の流出を阻止するための新たな国際的枠組みを構築するよう提唱した。米国とロシアの第二次戦略兵器削減条約(START2)の早期発効など、核兵器保有国側にも「目に見える形」での核軍縮の推進を強く訴えた。唯一の核被爆国として核保有国の責任にも言及し、国際的な核不拡散体制の強化を主導したい考えだ。

 首相は核不拡散問題に関する日本の取り組みについて「あらゆる機会を利用して国際社会の英知を結集する必要があり、そのような取り組みを積極的にリードすべきだ」と述べ、12日にロンドンで開く主要8カ国(G8)外相会議などで主導的な役割を果たす決意を表明。同時に「核軍縮・不拡散に関する緊急行動会議」を日本で開催する意向を強調した。

 印パ両国に核実験・開発の即時停止、核拡散防止条約(NPT)、包括的核実験禁止条約(CTBT)の無条件締結を要求。そのうえで印パ両国への核とミサイル関連物資・技術の流入に加え、両国から第三国への流出も阻止する具体的措置の重要性を強調した。中東や朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)への流出の懸念を念頭に置いたものと見られる。

 同時に核保有5カ国にも「核兵器保有国自身の核軍縮努力が重要であることは言うまでもない」と、核軍縮の加速を促した。NPT体制では米ロや中国など核保有国への核非保有国の不満が強い。これが核拡散につながっている面があるため、新たな核保有を抑えると同時に、核保有国の確実な軍縮の必要性を強調したと言える。

 地域の安全保障を巡っては「国際社会としてカシミール問題など両国の対立の要因をなす諸問題に強い関心を持つべきだ」と述べ、G8全体としてカシミール問題の解決に向けた印パ両国の対話促進に取り組む必要があるとの認識を示した。

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