東証マザーズに上場する企業の最終損益は、2020年7~9月期に18年10~12月期以来、7四半期ぶりに「改善」が半数以上となり「悪化」を上回った。人手不足や消費増税、新型コロナウイルスの流行などで業績が振るわない企業が多かったが、ゲームやIT(情報技術)企業が「巣ごもり需要」を取り込んだ。膨らんでいた先行投資を抑える動きも広がった。

7~9月期の最終損益が改善・悪化したマザーズ上場企業
▲はマイナス。単位億円。出所は日経NEEDS
2021年3月期に最高益を見込む主な新興企業
期間は21年3月期を含む6年間。日経NEEDS調べ

マザーズに上場する3、6、9、12月期決算で、直近3年間の業績を比べられる企業(金融や決算期変更など除く)が対象で、20日までに7~9月期決算を発表した154社を集計。このうち51%にあたる79社が増益や黒字転換するなど業績が改善した。東証1・2部企業(同)では7~9月期に業績が改善した企業は37%。ジャスダックでは43%にとどまった。

マザーズでは、オンラインゲームを手掛けるAimingの最終損益が12億円の黒字(前年同期は2億9500万円の赤字)と15億円改善した。開発に協力しているスマホ向けゲーム「ドラゴンクエストタクト」が人気だ。

消費の変化を取り込んでいる企業も好調だ。家具のネット通販会社ベガコーポレーションでは「巣ごもり需要」に加え、海外向けの越境通販サイトが利用者を集めている。渡航制限による訪日客の消費落ち込みを補う格好で薬や健康食品、紙おむつなどが売れている。MTGは1年前に減損損失が膨らんだ反動に加え、家庭用トレーニング機器などの売れ行きが伸びた。

在宅勤務の定着や企業のマーケティング見直しに対応する企業も目立つ。クラウド型の経費精算システム「楽楽精算」を運営するラクスは、7~9月期の純利益が約7倍に膨らんだ。ネット広告のフリークアウト・ホールディングスや、SNS(交流サイト)マーケティングを受託するホットリンクの業績が上向いた。

またフリマアプリのメルカリでは室内用品の取り扱いが増える一方、投資の抑制が効いている。オンライン学習教材のすららネットも学習塾や学校で採用が進み、営業活動やセミナーを一部オンラインに切り替え出張費などの経費も減った。

マザーズにはバイオベンチャーなど赤字が先行する企業も多く最終損益は合計で14億円の赤字(前年同期は281億円の赤字)。ジャスダックも含めた新興2市場に上場する企業671社では、20年7~9月期の純利益合計が12%減った。ただ1~3月期(58%減)、4~6月期(26%減)と比べると減益幅は小さくなっている。スーパーのマミーマートや、持ち帰りが好調な小僧寿しの業績が伸びている。