2020.11.04
NEEDSデータ活用記事

携帯2社、5G投資4兆円
今後10年の国内景気けん引-ソフトバンクとKDDI

NEEDSデータを使用した「2020年11月4日・日経朝刊」記事をピックアップしてご紹介しています。

国内通信大手が次世代通信規格「5G」のインフラ整備向けの投資を大幅に増やす。ソフトバンクとKDDIは今後10年の基地局整備などにそれぞれ2兆円を投じる。通信業界は約10年ごとに規格の世代が変わり、設備の大規模更新が必要になる。前世代の4Gと比べて5Gはスマートフォンやネットサービスなど関連産業の裾野が広く、景気を下支えしそうだ。

通信大手の設備投資は規格が変わる
ごとに大きな「山」をつくってきた
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの合計。
日経NEEDSと会社資料から作成

ソフトバンクはこのほど2030年度までに新たに2兆円をかけて基地局35万基を整備する計画をまとめた。通信大手の5Gインフラ整備の長期計画が明らかになるのは初めてだ。まず、現行で1万局に満たない基地局数を21年度までに5万局に増やす。都市部の人が集まるエリアを中心にパソコンや携帯端末などでの5G利用を可能にする。

その後25年度までに20万局体制を構築し、同社の携帯ユーザーのほぼすべてが場所にかかわらず5Gの高速通信を常時使えるようにする。

最終的に35万局にまで広げ、5Gを法人向けの通信インフラにする。5Gは大量のデータを遅延なく多数の機器に伝えやすい。基地局によるカバーをきめ細かくすることで利用を促し、工場などであらゆるモノがネットにつながる「IoT」やオンライン医療、自動運転など新たな市場を生み出しやすくする。

KDDIも今後10年間で2兆円を5Gや次の世代の「6G」のインフラ整備に投じる。今後数年間は5G関連が中心で、21年度末までに5Gの基地局を5万局に増やす。NTTドコモと楽天も基地局数を積み上げる公算が大きい。

携帯通信の規格は自動車電話などアナログの「第1世代(1G)」が登場した1980年代から、ほぼ10年周期で進化してきた。日経NEEDSの調べによると、前世代の4G規格の整備は2013~14年にピークを迎え、ドコモなど3社の設備投資額合計は年1兆8千億円に達した。その後投資は下振れたが、5Gの始まりにあわせ19年から増加基調が強まっている。

今回の5G向け更新は4Gと比べて幅広い国内への波及効果が期待される。基地局の場合、米中摩擦の余波で各社は華為技術(ファーウェイ)製品を使いにくい。北欧のノキアとエリクソンが高いシェアを持つが、NECや富士通にも商機が巡ってくるとされる。

5G対応スマホの需要も広がる。4Gに比べ部品点数が多くなり、部品メーカーへの恩恵は小さくない。半導体大手のキオクシアが5Gスマホ向けのメモリー供給量を増やすために1兆円を投じて新工場を建設することを決めるなど、新たな投資も呼び込んでいる。

もっとも、日本の5G普及は世界では出遅れている。英調査会社オムディアが各国の通信エリアなどを分析し6月に公表した5G市場調査では、普及の進捗は韓国が首位だった。米国は4位、中国は8位で日本は13位だ。

通信会社の業界団体である英GSMAによると、世界の通信会社は今後5年で1兆1千億ドル(約114兆円)を設備投資に投じる計画という。日本の菅義偉政権は通信大手に携帯料金の値下げを求めているが、業界からは5G投資の支援も不可欠との声も上がる。

2021.01.26
NEEDSデータ活用記事

20年度の実質成長率はマイナス5.2%、21年度は4.6%成長 NEEDS予測
1~3月期マイナス成長も、新年度は回復へ

2021年1月26日に日本経済新聞電子版に掲載された記事です。日経NEEDSの日本経済モデルなどを利用しています。

日本経済新聞社の総合経済データバンク「NEEDS」の日本経済モデルに、2021年1月25日までに公表された各種経済指標の情報を織り込んだ予測によると、20年度の実質成長率はマイナス5.2%、21年度は4.6%の見通しになった。

20年10~12月期の実質国内総生産(GDP)は前期比1.8%増と、2四半期連続のプラス成長になったもよう。輸出が好調だったほか、消費も11月前半までは比較的順調に推移したとみられる。生産の回復に伴い、設備投資は3四半期ぶりの増加となりそうだ。

ただ、21年1~3月期は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、実質成長率が再びマイナスに落ち込む公算が大きい。政府は21年1月上旬に東京都や大阪府など11都府県で2月7日まで緊急事態宣言を発令した。1~3月期の個人消費は落ち込みが避けられず、実質成長率は前期比マイナス0.8%になるとみている。

1~3月期の消費は大幅マイナスの公算

20年4~5月の緊急事態宣言時は全国で商業施設などの休業が求められ、急速に消費が冷え込んだ。今回は飲食店での感染防止に重点が置かれ、まずは営業時間の短縮が中心で、対象地域も限定されている。本予測では、交通や外食・宿泊サービスなどへの支出が減少する一方、巣ごもり消費で食料などには多少の増加を見込んだ。

最新のデータを織り込んだ予測
NEEDS日本経済モデルによる
2020年10〜12月期、2020年度以降は予測

対象地域の県内総生産(17年度)が全国の6割を占めることを踏まえ、緊急事態宣言による消費の落ち込みを7000億円程度(年率で2.9兆円程度)と試算した。21年1~3月期の個人消費はこれまでも前期比マイナスを想定していたが、本予測では前期比3.3%減に下方修正した。

感染拡大は、回復の兆しのあった雇用情勢にも水を差す。厚生労働省公表の有効求人倍率や総務省公表の完全失業率は11月に改善がみられたが、緊急事態宣言の発令や「Go To トラベル」の一時停止などで、サービス業を中心に雇用情勢は再び悪化に転じる見通しだ。20年度の個人消費は前年度比6.8%減に落ち込む。21年度の回復は緩やかなものとなり、同3.1%増にとどまりそうだ。

世界経済の回復で輸出は増加が続く

日銀算出の実質輸出(季節調整値)は、20年10~12月期は前期比12.7%増の大幅な増加となった。GDPベースの実質輸出は前期比10.3%増となる見込み。

緊急事態宣言再発令で消費は大幅減
NEEDS日本経済モデル予測

輸出が好調を維持しているのは、海外経済の回復が続いているためだ。中国では国家統計局が発表した10~12月期の実質GDPが、前年同期比6.5%増と3四半期連続のプラス成長となった。米国も前期比で2四半期連続のプラス成長が続いたとみている。感染が再拡大する中でも、生産活動は回復が続いている。米連邦準備理事会(FRB)が発表した米国の20年12月の鉱工業生産は前月比1.6%上昇した。サービス業は打撃を受けているが、製造業では回復が続く。

日本のGDPベースの輸出も1~3月以降、前期比でプラスが続きそうだ。20年度の実質輸出は前年度比11.0%減となるものの、21年度は同15.0%増と見込んでいる。

設備投資は底堅く推移する

製造業を中心に企業の経常利益は回復が続き、設備投資は底堅く推移する見通し。内閣府が発表した20年11月の機械受注統計では、「船舶・電力を除く民需(季節調整値)」は前月比1.5%増だった。10月の同17.1%増に続き、2カ月連続の増加となった。また、経済産業省が発表した国内向け資本財出荷(除く輸送機械、季節調整値)は、10~11月平均が7~9月平均に比べ14.2%上昇と急速に回復している。

企業の経常利益は21年度に大きく改善し、今後も設備投資の回復を後押しするとみている。実質設備投資は、20年度に前年度比7.1%減となった後、21年度は同5.1%の増加を予測している。

なお、今回のNEEDS予測は、日本経済研究センターが20年12月に公表した改訂短期予測をベースにしている。

(日本経済研究センター 山崎理絵子、デジタル事業 情報サービスユニット 渡部肇)

2020.12.22
NEEDSデータ活用記事

成長回帰へ背水の陣
21年度予算案、3年連続100兆円超

2020年12月22日に日経朝刊に掲載された記事です。日経NEEDSの日本経済モデルなどを利用しています。

政府が21日閣議決定した2021年度予算案は、一般会計総額が3年連続で100兆円を超える規模に膨らんだ。未曽有の新型コロナウイルス禍に対応するには財政出動の拡大が欠かせない。しかし税収は落ち込み国債発行も膨らむ。成長戦略を着実に成果に結びつけられなければ、国の財政は厳しいまま再建がおぼつかなくなる。

【関連記事】
(関連記事は日経電子版、日経テレコンなどでご覧になれます)

日本経済新聞社が「NEEDS日本経済モデル」で試算したところ、21年度予算案と20年度第3次補正予算案により21年度の実質経済成長率は0.79ポイント押し上げられる。

暮らし・経済・社会こう変わる

ただ日本経済研究センターが集計した12月のESPフォーキャストによると、エコノミストらによる2022~26年度の実質経済成長率の見通しは0.99%にとどまる。低成長から抜け出すためにカギを握るのは企業の生産性向上や技術革新だ。

予算案で政府が重視したのはグリーン(脱炭素)とデジタル化の推進だ。20年度第3次補正予算案には、脱炭素社会を実現するため企業の研究開発を後押しする2兆円の基金創設を盛り込んだ。再生可能エネルギーや蓄電池といった技術を念頭に支援する。

デジタル化は21年9月に新設するデジタル庁が司令塔になる。21年度予算案に人件費などの経費を81億円計上した。

オンラインでのやりとりが増える教育現場では、端末操作や指導方法を手助けする人員派遣などの経費に約14億円を計上した。公立小学校の学級人数の上限を35人に引き下げる取り組みなどに関連費用として約85億円の予算を付けた。

コロナ禍で変化を迫られる生活の支援にも目配りが必要だ。雇用維持に向けた支援策には20年度第3次補正予算案と21年度予算案を合わせて2兆円超をあてる。雇用調整助成金の特例措置は21年2月末まで維持する。

コロナ対策以外の費用もかさむ。21年度予算案ではコロナ対策の5兆円の予備費を除いても100兆円を超える規模になった。社会保障費は20年度当初に比べ0.3%増の35兆8421億円に膨らみ、防衛関係費は5兆3422億円と7年連続で過去最大となった。

平成以降、歳出と税収の差が広がる
(出所)財務省、19年度以前は決算期。20年度は3次補正予算案含む。21年度は予算案

コロナ禍で経済活動が厳しい中、税収の見積もりは11年ぶりに減少する。20年度当初予算に比べて9.5%減の57兆4480億円と落ち込む。

歳出増は国債発行でまかなう。21年度予算案の新規国債発行額は43兆5970億円に上り、当初予算ベースで増加となったのは11年ぶりだ。公債依存度も20年度当初の31.7%から40.9%に拡大する。21日の閣議後に記者会見した麻生太郎財務相は第2次安倍晋三政権の発足から依存度の低下が続いていたことに触れ、「残念」と述べた。

【関連記事】
(関連記事は日経電子版、日経テレコンなどでご覧になれます)

コロナ禍に対処する大規模な財政出動はやむを得ないとしても、中期的に財政を健全化させる道筋を探る必要がある。そのために欠かせないのは成長戦略から確実に果実を得ることだ。脱炭素やデジタル化といった戦略を掛け声に終わらせず、着実に軌道に乗せる必要がある。

財務省は償還までの期間が40年の超長期債を6000億円増発する。日銀による国債の大量購入もあり、当面は国債の安定消化が見込まれる。ただ経済成長による財政健全化への道筋を示せなければ、格付け機関による国債の格下げなどを通し経済に下押しの圧力となりかねない。

2020.11.28
NEEDSデータ活用記事

マザーズ「改善」過半に
7~9月最終損益、ゲーム・IT好調

2020年11月28日に日経朝刊に掲載された記事です。日経NEEDSの財務データなどを利用しています。

東証マザーズに上場する企業の最終損益は、2020年7~9月期に18年10~12月期以来、7四半期ぶりに「改善」が半数以上となり「悪化」を上回った。人手不足や消費増税、新型コロナウイルスの流行などで業績が振るわない企業が多かったが、ゲームやIT(情報技術)企業が「巣ごもり需要」を取り込んだ。膨らんでいた先行投資を抑える動きも広がった。

7~9月期の最終損益が改善・悪化したマザーズ上場企業
▲はマイナス。単位億円。出所は日経NEEDS
2021年3月期に最高益を見込む主な新興企業
期間は21年3月期を含む6年間。日経NEEDS調べ

マザーズに上場する3、6、9、12月期決算で、直近3年間の業績を比べられる企業(金融や決算期変更など除く)が対象で、20日までに7~9月期決算を発表した154社を集計。このうち51%にあたる79社が増益や黒字転換するなど業績が改善した。東証1・2部企業(同)では7~9月期に業績が改善した企業は37%。ジャスダックでは43%にとどまった。

マザーズでは、オンラインゲームを手掛けるAimingの最終損益が12億円の黒字(前年同期は2億9500万円の赤字)と15億円改善した。開発に協力しているスマホ向けゲーム「ドラゴンクエストタクト」が人気だ。

消費の変化を取り込んでいる企業も好調だ。家具のネット通販会社ベガコーポレーションでは「巣ごもり需要」に加え、海外向けの越境通販サイトが利用者を集めている。渡航制限による訪日客の消費落ち込みを補う格好で薬や健康食品、紙おむつなどが売れている。MTGは1年前に減損損失が膨らんだ反動に加え、家庭用トレーニング機器などの売れ行きが伸びた。

在宅勤務の定着や企業のマーケティング見直しに対応する企業も目立つ。クラウド型の経費精算システム「楽楽精算」を運営するラクスは、7~9月期の純利益が約7倍に膨らんだ。ネット広告のフリークアウト・ホールディングスや、SNS(交流サイト)マーケティングを受託するホットリンクの業績が上向いた。

またフリマアプリのメルカリでは室内用品の取り扱いが増える一方、投資の抑制が効いている。オンライン学習教材のすららネットも学習塾や学校で採用が進み、営業活動やセミナーを一部オンラインに切り替え出張費などの経費も減った。

マザーズにはバイオベンチャーなど赤字が先行する企業も多く最終損益は合計で14億円の赤字(前年同期は281億円の赤字)。ジャスダックも含めた新興2市場に上場する企業671社では、20年7~9月期の純利益合計が12%減った。ただ1~3月期(58%減)、4~6月期(26%減)と比べると減益幅は小さくなっている。スーパーのマミーマートや、持ち帰りが好調な小僧寿しの業績が伸びている。

2020.11.27
NEEDSデータ活用記事

決算ランキング 4~9月、地方企業の増益率
在宅充実、全国でニーズ、エンチョー、DIY伸びる

11月27日に日経朝刊に掲載された記事です。日経NEEDSの財務データなどを利用しています。

新型コロナウイルスまん延による「新常態」は日本全国に広がった。東京など4都府県と政令指定都市を除く地方の企業について、2020年4~9月期の増益率ランキングを作成したところ、首位は巣ごもり消費をとらえたホームセンターのエンチョー(静岡県富士市)だった。

東京、神奈川、大阪、愛知を除く43道府県で政令指定市以外に登記上の本社を置く「地方企業」を集計対象とした。3月期決算企業(金融、決算期変更など除く)の20年4~9月期の純利益が前年同期に比べてどれだけ増えたか調べた。純利益が1億円未満か、前年同期が赤字だった企業は除外した。

都市部に比べてコロナ感染が少ない地域に立地する企業でも、業績への影響は大きかったようだ。ランキング上位にはエンチョーに限らず、各地のホームセンター、スーパーなど巣ごもり関連の企業が目立つ。

地方企業の2020年4~9月期純利益増加率
対象は登記上の本社が東京都、神奈川県、愛知県、大阪府、政令指定都市以外の3月期本決算企業(金融、変則決算など除く)。2020年4~9月期の純利益1億円未満と、前年同期が赤字だった企業は除外。増加率は決算短信の記載を基に計算。
データは日経NEEDS

エンチョーは静岡県を中心にホームセンター「ジャンボエンチョー」、建築資材や工具の専門店「ハードストック」など9月末時点で55店舗を展開している。4~9月期の連結純利益は6億3900万円と前年同期の5・6倍にふくらんだ。

コロナ感染防止のマスク、消毒用アルコールのほか、電動工具などDIY関連の売り上げが伸びた。「ソロキャンプ」など新しい需要も取り込んだという。集客イベント自粛や営業時間の短縮で販管費が4%減ったことも利益を押し上げた。

2位のマキヤは総合ディスカウント店「エスポット」のほか、神戸物産とのフランチャイズ契約で「業務スーパー」を展開。コロナ感染防止や巣ごもり需要で21年3月期通期の純利益予想も前期比3・6倍の13億円に上方修正した。

このほか、ランキング上位には10位の食品スーパー、アルビス(富山県射水市)や11位のホームセンター、綿半ホールディングス(長野県飯田市)など地域密着の小売りチェーンが目立った。

綿半HDはDIYや園芸用品など利益率の高い商品分野が好調だったうえ、新たな仕入れルートの開拓やチラシ削減も増益につながった。セルフレジ増設などコロナ禍に対応した店作りを進めており、野原勇社長はオンライン決算説明会で「リアル店舗の存在価値を高めていく」と述べた。

4位の中央化学(埼玉県鴻巣市)は巣ごもり向けの持ち帰りや宅配の容器が急増した。一方でイベントや観光地での需要が振るわず全体では減収だったが、原材料価格の下落もあって利益がふくらんだ。

9位の電子ペン大手、ワコム(埼玉県加須市)は純利益が前年同期比2・8倍の62億円と過去最高になった。パソコンに手書き文字などが入力できるペンタブレット製品の売上高は56%増で、特にオンライン教育などに適した中低価格帯モデルが伸びている。

20位の日本電子材料(兵庫県尼崎市)は半導体検査に用いる「プローブカード」を手がける。テレワークが広がってデータセンター向け半導体などの需要が高まり、消耗品であるプローブカードの受注につながった。

2020.11.26
NEEDSデータ活用記事

資本効率 企業の7割開示
有報にROEやROIC、3年で4割増、「公約」の社内影響期待

NEEDSデータを使用した「2020年11月26日・日経朝刊」記事をピックアップしてご紹介しています。

有価証券報告書で資本効率の実績や目標を開示する企業が増えている。2020年3月期決算の主要企業のうち、自己資本利益率(ROE)や投下資本利益率(ROIC)を記した企業は3年前に比べ4割増えた。全体の7割に達する。利益の絶対額よりも投資の効率性を重視する企業が増えているためだ。数値を公表し「公約」にすることで社内の各部門に資産の有効活用も促す。

日経平均株価に採用されている3月期決算の企業の有報から宝印刷子会社のディスクロージャー&IR総合研究所(東京・豊島)がまとめた。3年前の17年3月期決算から有報には「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の項目が新設された。経営上の課題や目標などを記載する必要があり、同項目などでROEやROICの数値に触れた企業を集計した。

日本企業のROEとROIC
金融、日本郵政除く東証1部上場企業が対象。日経NEEDSのデータを加工

味の素両方記載

20年3月期の有報では186社のうち65%にあたる121社がROEやROICを記載した。17年3月期の有報で記していたのは86社(46%)で、社数は3年間で4割増えた。20年3月期の内訳は107社がROE、19社がROICに触れている。三井化学や丸井グループ、味の素などは両方を記載した。

国内の上場企業の資本効率は欧米企業に見劣りする。経済産業省によると、国内上場企業のROEは18年で9・4%と、米国(18・4%)や欧州(11・9%)に比べ低い。

経産省が14年に公表した企業と株主の在り方を論じる報告書「伊藤レポート」で「ROE8%」以上が望ましいとの基準を示し、資本効率を意識した経営を促した。19年には金融庁が「記述情報の開示に関する原則」を発表。経営目標の達成度合いを測る客観的な指標としてROEやROICを例示していた。

ROICはROEに比べて開示する企業はまだ少ないが、借入金などの負債か資本金など自己資本かにとらわれず投資に対する稼ぐ力を見極めやすい。収益率の改善を事業部門ごとに落とし込みやすく、事業売却や撤退などの目安にもなる。東証1部の約1320社(金融除く)を調べたところ、20年3月期は前の期比1・6ポイント低下して4・6%と5年ぶりの低水準だった。

ガイシが目標値

日本ガイシは中長期的な指標として「ROE10%以上」の目標値を掲げ、事業計画の立案や設備投資の意思決定にROICを活用することを明記している。三菱マテリアルも前期の有報から23年3月期にROICを6%、ROEを7%とする目標を新たに記載した。

日経平均採用銘柄以外でも積水化学工業が23年3月期にROICを8・6%(前期は7・7%)、ROEを10・6%(同9・7%)とする目標を記した。加藤敬太社長はROICを「事業撤退の判断にも活用する」と語る。

開示する企業の増加を市場関係者や機関投資家も評価する。楽天証券の窪田真之氏は「任意の開示でROEの目標を示す企業はこれまでも多かったが、法定の有報で目標を示すのは会社としての覚悟がうかがえる」と語る。

三井住友トラスト・アセットマネジメントの松本宗寿氏もROEなどの目標を掲げることが「投資判断の議論の材料として好ましい動きだ。財務戦略を見直す一つのきっかけになる」と話す。

もっとも、形だけの開示では弊害も生じかねない。一橋大学大学院の藤田勉特任教授は、借り入れを増やしたり、自己資本を減らしたりすれば向上するROEを指標にすることで「株主還元に重点を置いた『縮小均衡』の経営になりやすい」と指摘する。松本氏も「資本効率を基準にして事業撤退などの再編をさらに加速すべきだ」と注文を付ける。

<ROE>

「Return On Equity」の略。企業が株主から預かったお金である資本をいかに効率的に使って利益をあげられているかを示す。ROEが高ければ「株主のためによく稼いでいる会社」と評価される傾向にある。最終的なもうけである純利益を自己資本で割って算出する。

<ROIC>

「Return On Invested Capital」の略。自己資本と有利子負債を合わせた「投下資本」で利益を割って求める。ROEと異なり負債も含めることで株主と債権者の両方から見た投資効率を示す。新規投資や事業撤退の際の判断基準として採用する企業が増えている。

2020.11.26
NEEDSデータ活用記事

地銀の経営データを解析
地銀の実力とリスクを分析 NIKKEI Financialの解析ツール

2020年11月26日に日経朝刊に掲載された記事です。日経NEEDSの財務データなどを利用しています。

日本経済新聞社は金融機関の経営データを解析するツールを開発した。見やすさと操作性を追求した「NIKKEI Financial RAV(Risk Analysis Visualization)」を金融エグゼクティブ向けのデジタル媒体、NIKKEI Financialのサイトで公開する。さまざまな指標を使い、地銀の実力とリスクを分析した。

業種別の貸出依存度
地銀の貸出額を業種別に分類し、どの業種との関係が深いかを示す。地銀の平均値に比べて貸出依存度が高い業種を強調表示する。日経NEEDSのデータを利用。
実績ランキング
主要な財務指標の順位と変遷を表す。上位10位までは赤字、下位10位までは青字で示す。日経NEEDSのデータを利用。

実力とリスク 一目で

RAVはNIKKEI Financialの会員なら誰でも自由に使うことができる。サイトのトップに誘導窓口を作るほか、関連記事も展開する。(1)実力診断(2)リスク傾向分析(3)実績ランキングの3つの観点から地銀の経営を見える化する。

(1)実力診断はオリジナルスコアで金融機関の実力を定量的にはかる。地銀のポテンシャルを40以上の指標の組み合わせから導く。「財務力」「収益力」「成長性」「経営の独自性」「ESG」「地域経済の状況」「職場環境・処遇」の7項目と総合力をS~Eのランクと順位で表示する。B以上なら平均を上回る。

(2)リスク傾向分析は、「財務の毀損」「収益力の低下」「ESGの脆弱化」の3つのリスク傾向を示す。グリーンのゾーンはリスクテークが大きすぎたり小さすぎたりせずバランスがとれた状態を示す。金融機関のリスクアペタイト(傾向)を見える化する。

実力診断とリスク傾向分析のモデルはリスクアペタイト・フレームワークやグローバル金融規制に詳しいプロモントリー・フィナンシャル・ジャパンの協力で開発した。同社が指標を算出する。

(3)実績ランキングは金融機関の開示データをもとに地銀の現在地を示す。日本経済新聞社のデータサービス日経NEEDSと連携し26項目から気になる指標を選んでランキングを並べ替えることができる。表示される財務指標はNEEDSからまとめて取得することも可能だ。

実力診断

実力診断は銀行が開示する40以上の指標を組み合わせて実力を分析する。「財務力」「収益力」「成長性」「経営の独自性」「ESG」までの5項目をまとめて「総合力」を算出する。

外部環境の優位性を示す「地域経済の状況」と従業員の処遇を示す「職場環境・処遇」も掲載する。S~Eで表示される実力が「B」より上なら平均以上の実力がある。

リスク傾向分析

リスク傾向分析は「財務の毀損」「収益力の低下」「ESGの脆弱化」の3つの項目のリスク傾向がどれくらいあるかを示す。グリーンのゾーンはリスクテークが過大でも過小でもないバランスがとれた状態を表す。

「財務の毀損」は財務の安定を損なうリスクがどれくらいあるかを示す。資本効率を判断する材料になる。

「収益力の低下」は収益力や効率性が落ちるリスクがどの程度あるかを示す。「ESGの脆弱化」は地域や社会、ESGへの貢献が低下するリスクを示す。経営層や従業員が社会規範を逸脱して行動するミスコンダクト、システム障害の発生などで社会的評価を損なうリスクが高まる・・・

2020.11.23
NEEDSデータ活用記事

政令市の借入負担、際立つ、財政需要と税制に矛盾。
特集――815市区19年度、NEEDS調査

2020年11月23日に日経朝刊に掲載された記事です。日経NEEDSの地域経済データなどを利用しています。

日本経済新聞社はNEEDS(日経の総合経済データバンク)を使い全国792市と東京23区の2019年度決算(普通会計、速報)を調べた。「借入金」にあたる地方債残高は政令指定都市合計で18兆円近くに及び、20市で全市区の36%を占めた。最多は横浜市で2兆3926億円だった。

815市区19年度、NEEDS調査より

実感しやすくするため地方債残高を住民1人当たりでみると政令市は65万円だった。他の市区と比較すると、財政基盤が弱い場合も多い人口10万人未満の528市区でも48万円で、政令市は突出する。規模が大きいほどスケールメリットが働き借入負担も小さい他の市区の傾向と一線を画す。

政令市の借入負担が際立つ背景について横浜市の財政担当者は理由を2つ挙げる。1つは大都市ならではの財政需要があるからだという。地下鉄や環状高速道路、国際港湾など特有のインフラが必要になるため、市債を活用し整備するハード事業が大きくなりがちだ。横浜市は19年度、環状高速道横浜北西線の整備が大詰めに入っていた。

もう1つは国が地方交付税の多くを小さな市町村に振り向け、政令市には借金である臨時財政対策債を割り当ててきたためだ。臨時財政対策債は元利償還を国が地方交付税で将来措置すると約束しているとはいえ、政令市の借入負担が一層膨らむ結果になっている。

815市区を地方債残高の多い順に並べるとトップ10は横浜市などすべて政令市だ。一方、少ない順では東京23区が目立つ。政令市と東京23区で歳入の内訳を比較すると、地方債の発行で賄っている割合である起債依存度が東京23区の1%程度に対して政令市は10%弱。同じ大都市でありながら違いが大きかった。

東京23区長でつくる特別区長会によれば23区の起債依存度が低いのは上下水道や消防などハード整備が必要な都市機能を東京都が一括して手掛けているためだという。地方交付税の不交付団体であり、起債をなるべく活用しないという財政規律が働く面もある。

一方、政令市長でつくる指定都市市長会は政令市制度に課題があるとみて不満をあらわにしている。政令市では都市間競争もあって財政需要が増しているのに税制上の十分な措置がないと分析。地方消費税と法人住民税の配分拡充や大都市特例税制の創設などを国に要望している。

道府県の権限や税財源をすべて政令市に移して完全に独立させる「特別自治市」の早期実現も求めている。指定都市市長会の林文子会長(横浜市長)は16日、坂本哲志地方創生相と武田良太総務相に「特別自治市」など大都市制度の議論を加速するよう要望する提言を手渡した。

2020.11.20
NEEDSデータ活用記事

決算ランキング(2) 4~9月増収率
DX勢、コロナ禍で強み、首位はAIインサイド。

NEEDSデータを使用した「2020年11月20日・日経朝刊」記事です。

上場企業の2020年4~9月期決算では「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を手がける新興勢力が頭角を現した。時価総額1000億円以上の主要企業を対象に増収率ランキングを作成したところ、首位はAI inside(AIインサイド)だった。手書き文字を人工知能(AI)で読み取って電子化する主力サービスが伸びている。

ランキングは金融、決算期変更などを除く3月期決算の主要企業479社を集計した。東証マザーズ上場のAIインサイドは4~9月期の売上高が前年同期の3・2倍の19億円にのぼった。

増減率は前年同期比。日経NEEDS調べ。20年4〜9月期の決算を発表した企業(金融、決算期変更など除く)のうち時価総額が1000億円以上の企業が対象。短信ベース、13日時点

手書き書類などをAIで電子データにする同社の主力サービス「DX Suite」は9月末時点で1万2754契約と、半年で7倍近くに増えた。今年から本格導入した神戸製鋼所は、協力会社から受け取る作業証明書や社内アンケートの処理に活用。アンケート入力処理の所要時間が半分以下になったという。

コロナ禍でDXが脚光を浴びる一方、企業や自治体への営業活動が停滞した面もある。AIインサイドはコロナの影響について「プラスマイナスゼロ」としており、21年3月期の売上高予想を前期比2・8倍の44億円に上方修正した。

DX勢では、クラウド活用の経費精算システム「楽楽精算」を展開するラクスもランキング9位に入った。4~9月期の増収率は31%。テレワークの広がりが追い風となり、導入企業は6837社と半年で12%増えた。請求書や納品書などを電子データで発行する経理部門向け「楽楽明細」も契約が伸びた。

このほか、クラウド型の電子契約サービス「クラウドサイン」を手がける弁護士ドットコムが13位に入った。

3位のJTOWERは携帯電話キャリア各社の共用通信設備を運用しており、増収率は58%。これまで大型ビルの構内システムが中心だったが、次世代通信規格「5G」普及をにらんで下期から屋外にタワー型の設備を相次ぎ着工する。

食材宅配サービスのオイシックス・ラ・大地は46%増収で4位。コロナ下で会員数が増えたうえ、1人当たり購入額も押し上げられた。高島宏平社長は「コロナでゲタを履いている」としながらも21年3月期の売上高予想を前期比27%増の900億円に引き上げた。

一方、集計対象とした479社のうち、42社は減収率30%以上だった。同50%以上の9社をみると、インバウンド(訪日外国人)消失など観光需要の低迷が色濃い。

羽田空港ターミナルビルの家主である日本空港ビルデングは減収率が84%と主要企業で最も大きかった。空港利用者の激減で施設利用料の収入や免税店の売り上げが吹き飛んだ。

日本航空、ANAホールディングスも減収率が70%を超えた。帝国ホテルは客室稼働率が下がり、宴会需要も限られて減収率69%、土産菓子メーカーの寿スピリッツは同65%と低迷した。

鉄道会社では東海道新幹線が主力のJR東海は65%の減収。富士急行はレジャー施設「富士急ハイランド」、西武ホールディングスは子会社のプリンスホテルが不振で減収率がそれぞれ58%、47%に達した。

もっとも、新型コロナのワクチン開発への期待などから、インバウンド関連銘柄の一部は株価が回復基調にある。オリエンタルランドは上場来高値を更新した。日本空港ビルデング、帝国ホテルなどもコロナ前の水準を取り戻している。

2020.10.17
NEEDSデータ活用記事

日米小売りが最終黒字転換 6~8月、2四半期ぶり

NEEDSデータを使用した「2020年10月17日・日経朝刊」記事をピックアップしてご紹介しています。

日米の小売業の業績が回復している。2020年6~8月期は日米とも2四半期ぶりに最終黒字転換した。体力のある大手ほど新型コロナウイルスの影響からいち早く立ち直っている。郊外店舗やインターネット通販で「巣ごもり需要」を取り込んだ。政府の打ち出した経済対策も下支えするが、足元では消費に息切れ感も出ており、先行きに不透明感もでている。

「消費動向に応じて臨機応変に対応できた」と、しまむらの鈴木誠社長は手応えを語る。6~8月期の最終損益は117億円の黒字と、外出自粛で落ち込んだ3~5月期(12億円の赤字)から急回復した。40日程度で企画から販売までを完了させる短期生産体制によって、部屋着やスポーツウエアなどコロナ禍での売れ筋に応じた商品を投入した。

日米ともに急回復した(最終損益)
日本は日経NEEDS、米国はQUICK・ファクトセットのデータを修正

日経NEEDSとQUICK・ファクトセットで、日米で上場する小売業(190社)の20年6~8月期決算(米国企業は一部5~7月期を含む)を集計した。日本の125社の6~8月期の純利益は前年同期比6%減の1756億円だった。緊急事態宣言による店舗休業などがあった3~5月期は133億円の最終赤字だったが、前年同期近くまで持ち直している。

直近四半期の売上高1000億円以上の23社のうち16社が増益となるなど、大手の回復が目立つ。セブン&アイ・ホールディングスは百貨店が苦戦したが、6~8月期の純利益は585億円と前年同期比横ばいだった。「大型のパックアイスの販売が増えるなど、スーパーで買っていたものもコンビニで買う変化が起きている」(井阪隆一社長)と、生鮮品やワインなどの品ぞろえを強化し、コンビニの客数が回復した。

イオンは大型店の売り上げが戻り、赤字幅が大きく縮小した。様々な種類の製品が1店舗でそろい、感染リスクが低いと安心感につながっている。「コロナ禍で、ハレとケで言えば『ケ型』商品の需要が強い」(三宅香執行役)なか、日常的に使う商品を多くそろえた。「危機時には寡占化が進む」(ニトリホールディングスの似鳥昭雄会長)面もある。

中堅以下はライフスタイルが変化したことへの対応が遅れている業態ほど苦戦している。新型コロナによって外出が減少したことで、スーツやおしゃれ着の需要は低迷している。

大丸や松坂屋を傘下に持つJ・フロントリテイリングは足元でも客数が前年同月比4~5割減が続く。好本達也社長は「一等地立地という従来の強みが揺らいでいる。ビジネスの根幹に関わる課題だ」と危機感をあらわにする。アパレルではサマンサタバサジャパンリミテッドが69億円の最終赤字だった。

米国の65社の純利益は195億ドル(約2兆500億円)と前年同期比で35%増えた。3~5月期は約4億ドルの最終赤字で、回復のペースは日本より速い。場合によっては失業前の賃金を上回る水準の失業給付や大人1人あたり1200ドルという政府からの給付金が消費を大きく押し上げた。

米国でも規模が利益につながっている。際立つのは郊外型で全国規模のネットワークを持つ業態の強さだ。売上高が100億ドル以上の6社はすべて大幅増益となった。

食品以外の日用品も幅広く取りそろえるウォルマート(前年同期比79%増の64億ドル)やコストコホールセール(27%増の13億ドル)、ホームセンター大手のホーム・デポ(25%増の43億ドル)などが好調。各社独自のネット通販も好調だった。芝刈り機や庭に置くテーブルセットなども売れた。白物家電やタブレットが好調で、家電量販のベストバイの純利益は4億3200万ドルと82%増えた。

売上高が10億ドル以下の36社に限ると過半の21社が減益となった。消費者は感染リスク軽減のため複数店舗での「買い回り」を避ける傾向を強めており、1カ所で買い物を済ませられる大型店に需要が流れがちだ。

足元では日米ともに消費に息切れ感がある。米商務省によると、米国の8月の個人所得は前月から2.7%減少した。政府の経済対策の効果が一巡したほか、追加経済対策の行方も不透明だ。日本も1人あたりの現金給与総額が8月まで5カ月連続で減るなど、雇用不安が強まっている。

楽天証券の窪田真之チーフ・ストラテジストは「日本は『Go To』事業の期間延長が検討されるなど、息の長い景気刺激策の効果で鈍いながらも回復が続く」と見る一方で「米国は感染拡大への危機感も強く、先行きの不透明感は日本より大きい」と指摘する。(松川文平、村上徒紀郎)

2020.09.22
NEEDSデータ活用記事

NEXT1000 見えない資産で稼ぐ
無形固定資産倍率の高い企業

NEEDSデータを使用した「2020年9月26日・日経朝刊」記事をピックアップしてご紹介しています。

日本経済新聞社が中堅上場企業「NEXT1000」を対象に、ソフトウエアなど無形資産の占める割合が高いことを示す無形固定資産倍率をランキングしたところ、上位にはアプリ開発やオンライン学習などのIT(情報技術)企業が並んだ。デジタル投資を進めて成長を目指す攻めの姿勢が目立つ。1位は転職や不動産賃貸サイトを運営するキャリアインデックスだった。

無形固定資産倍率が高かった企業

商品企画、ウェブプロデューサー、医療事務――。キャリアインデックスの転職サイトには様々な職種の求人情報が並ぶ。その数は約68万件と国内最大規模だ。「マイナビ転職」や「エン転職」など提携する約80の転職サイトの入り口の役割を果たしている。

「コロナ禍で転職希望者が減るとみていたが、キャリアインデックスを通じた登録人数は計画通り。求職者を集める柱になっている」と大手転職サイト担当者は評価する。6月時点の会員登録者数は144万人とこの3年で6割増えた。

キャリアインデックスの単独成績

キャリアインデックスは単なるリンク集ではなく提携企業と情報システムを連携している。利用者は複数の転職サイトの求人情報をまとめて検索できるほか、応募や問い合わせもクリック1回で済む。転職サイトごとに名前や職歴などを入力する手間が省ける。情報登録した件数に応じて収益を得るビジネスモデルであり、アルバイトから専門職まで、1件当たりの単価は数千~数万円という。

同社はリクルートを経て、ヤフーでビジネス開発部長を務めた板倉広高社長が2005年に設立した。転職情報サイトを皮切りに、派遣やアルバイトなど様々な求人サイトを多角的に運営する。16年に東証マザーズに上場し、17年には東証1部に昇格した。

ただ転職サイトは競合が多く、足元の業績は伸び悩んでいる。20年3月期の売上高は23億円と2期連続で横ばい。株価も500円前後と18年12月につけた上場来高値(2186円)の4分の1の水準で推移する。立花証券の入沢健アナリストは「同様の転職サイトを運営し、収益を伸ばしている『じげん』と比べて投資家の失望が広がった」と分析する。

そこで転職サイトで培ったノウハウを不動産分野に横展開する。19年10月に人材サービスのリブセンスから賃貸物件の検索サイト「DOOR賃貸」の事業を買収。同じ賃貸情報サイト「キャッシュバック賃貸」をTypeBeeGroup(東京・世田谷)から取得した。他の賃貸情報サイトとシステムをつなげて、複数の賃貸住宅の検索や内覧申し込みなどを一括でできるようにする。

板倉社長は「人材市場は景気に連動するリスクが高い。コロナ禍でオフィス賃貸需要が落ち込んでいるが、賃貸住宅は安定しており、市場規模も大きい」と説明する。今後は引っ越しや物件の売却査定など関連サービスを展開する考えだ。

賃貸サイトの買収に伴い、20年3月期末時点の無形固定資産は18億円と19年3月期末から16億円以上増えた。有形固定資産はパソコンや机など約600万円にとどまり、無形固定資産倍率は294倍にのぼる。

祖業の人材サービスもテコ入れする。勤務地の細かい設定や見やすい画面デザインなど使い勝手を良くして、登録会員数の引き上げを目指す。人工知能(AI)を使って求職者に企業を提案するリコメンド機能の強化なども検討する。

新型コロナウイルス禍で国内の人材市場は一変した。7月の有効求人倍率は1・08倍とコロナ前の1月から0・41ポイント下がり6年3カ月ぶりの低水準となった。早期退職や派遣切りで求職者は増える一方、求人が減っている。転職サイトの経営悪化を受け、キャリアインデックスに対して「報酬単価の引き下げを求める企業が出てくる」(立花証券の入沢氏)。

板倉社長は「今後はこれまで培ってきたウェブマーケティングの知見を使って、不動産サイトの構築や提案機能の充実を進める」と話す。人材と不動産の両輪で無形固定資産をどう「稼ぐ手段」として活用するか、その手腕が問われている。

調査の概要 直近決算期の売上高が100億円以下の上場企業963社が対象(金融、決算期変更、TOKYO PRO Market上場企業を除く)。日経NEEDSのデータを基に、無形固定資産(のれんを除く)を有形固定資産で割った無形固定資産倍率が高い順にランキングした。無形固定資産を開示していない企業は省いた。データは9月3日時点。

2020.09.11
NEEDSデータ活用記事

社外取、統治改革前の3倍5400人
女性役員も倍増

2020年9月11日に日本経済新聞電子版に掲載された記事です。日経NEEDSの企業ガバナンスデータ「役員」を利用しています。

上場企業で取締役会の多様化が進んできた。3月期決算企業の社外取締役は6月末時点で約5400人と、企業統治改革が始まる前の2013年6月末に比べ約3倍に増えた。女性役員は約1300人と5年間で2倍超になった。様々な経歴を持つ人が集まることで取締役会の活性化が期待できる。一方で複数の企業で取締役を兼任する人も増え、人材不足が課題になっている。

取締役会の多様化が進む
日経NEEDS調べ。3月期企業2009社対象
役員は監査役、執行役も含む。人数は延べ

継続比較できる2009社(金融を除く)を対象に日経NEEDSで集計したところ、6月末の社外取は前年同期比7%増の延べ5442人だった。取締役総数1万6939人の32%に相当し、取締役の3人に1人は社外出身の計算となる。

社外取を置く企業は全体の98%と13年の53%から大きく増えた。15年以降は90%台で推移する一方で人数の増加が続いており、社外取を導入済みの企業が2人以上に増員していることが分かる。

社外取が多いのは執行と監督を明確に分離する指名委員会等設置会社の形態を採る企業だ。最多は三菱自動車の12人で、13年の3人から大幅に増えた。武田薬品工業も13年の2人から11人に、東芝は4人から10人に増えた。関西電力は不祥事をきっかけに20年に指名委員会等設置会社に移行し、社外取は8人と19年から倍増した。

一方、女性役員(監査役、執行役含む)の役員総数に占める比率は20年に6%と、データを取得できる15年から4ポイント上昇した。女性役員のいる会社数は全体の47%にあたる935社となり、15年に比べて倍増。女性役員数も1296人と2.2倍に増えた。欧米企業と比べると依然少ないが、着実に増えている。

社外取締役・女性役員起用の動きが目立つ

最も女性役員が多いのはエーザイの5人。20年には新たにESG(環境・社会・企業統治)の専門家として明治大教授の三和裕美子氏が社外取に就いた。取締役会で積極的に女性を起用しているのはソニーで、取締役の3分の1にあたる4人を女性が占める。女性取締役は外部から招くことが多いが、リクルートホールディングスは今年、社内の人材を昇格させた。

企業統治改革は14年6月、安倍晋三政権の成長戦略「日本再興戦略」改訂版に明記されたことを機に本格的にスタート。15年導入のコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)で、一般株主と利益相反のない独立した社外取を2人以上置くよう要請され、導入の動きが一気に広がった。

18年の企業統治指針の改定では取締役会の3分の1以上を独立社外取にすることが推奨された。アライアンス・バーンスタインの堀川篤氏は「取締役会の監督機能を強めるため、過半数は社外取にすべきだ」と指摘する。

一方で課題も浮き彫りになってきた。1つは成り手不足だ。社外取は経営者や弁護士が就くことが多いが、一部の人材に人気が集中している。2社以上で社外取を兼務する人は6月末で約1100人おり、5社を兼務する例もある。多くの取締役会に出席し、各社で十分に役割を果たせるか懸念する声もある。

実効性の面でも不安がある。東芝は社外取締役が半数を占めていたが、15年に会計不正が発覚した。企業統治改革はこの5年ほどで着実に浸透し、社外取も数の面では充実してきた。今後はいかに取締役会の実務の質を高めるかが焦点になる。