Case Study 導入企業の実例紹介

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ダイバーシティー先進事例紹介
日本IBMでの
Diversity&Inclusion

日本IBMは女性活躍のみならず障がい者雇用やLGBTなどさまざまな分野で先進的な施策を導入し続け、ダイバーシティー推進をめざす多くの日本企業のロールモデルとなっています。2020年10月からダイバーシティー&インクルージョン担当パートナーに就いている杉田緑さんに、現在の取り組みについてお話しいただきました。

◎ダイバーシティーへの取り組み。歴史的な経緯

DiversityInclusionをビジネス戦略として位置付け、100年前から継続して活動をしています。2019年からは「Be Equalキャンペーン」というグローバルなコンセプトを掲げ、社内外に向けたキャンペーンによる一層の加速をめざしています。蜂のマークにBeとイコールを織り込んでいます。

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IBMは100年以上前、ベンチャーのような会社であった段階から、とにかく優秀な人を集めよう、性別や国籍で選んでいる場合ではない、というスタンスでした。1899年からは女性と黒人を採用し、1914年に障害のある人の採用を開始しました。1943年には初の女性副社長も誕生。社外および社会に働きかける意味合いもあり、1953年にはポリシーレターという形で当時のCEOが「差別を徹底的に禁止する」という宣言をしました。時代に応じて宣言内容を見直し、CEOが変わるたびに署名をしています。

障害のある社員がいるから、点字プリンターやウエブページを音声で読み上げるホームページリーダーといった技術が実際に生まれました。障害をお持ちの方のバリアを外すことに結び付いています。ただ100年前から経営層に多様な意見があったわけではありませんでした。

転機は1990年代の経営難です。社外からルイス・ガースナ―という経営者を雇いました。グローバル化が進み不透明な時代には圧倒的に多様性が必要だと、改めてDiversityInclusionがビジネス戦略であると位置づけました。従来のマインドを確認しさらに注力・加速してきた背景があります。近年ではLGBT+のインクルージョンや障害のある方の活躍にも力を入れ、活動しています。コーポレートポリシーレターには性的指向、性自認が今から30年以上前に追加され、これは米国でも初めてでしたが、2005年に遺伝子が加えられました。

そんな中、日本IBMも社長の山口明夫がビジョンを立てました。お客様のデジタル変革のリード、社員が輝くことができる働く環境の実現、社会貢献の推進、ひとりひとりが輝く環境といったあたりが重点分野です。それぞれ違った能力と事情を持つなかで能力を最大限に発揮し、お客様のためのよいビジネスができることにかなり力を入れています。

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◎施策の枠組み

具体的活動ですが、いま日本では「女性」「障がい者」「LGBT」「ワークライフ」、この4つの枠組みで進めています。どうするとよりよくなるかは当事者が一番知っているとの考えから、当事者の委員会やコミュニティを作り、どういう課題があってどのように改善できるか、グループでディスカッションし活動しています。ボトムアップだけでは経営層に意見が届きませんので、スポンサーエグゼクティブと社内で呼ぶ役員のスポンサーが必ず付き、実際に制度やプログラムに落とし込めるよう支援やリードをしています。

◎女性活躍

2020年には日経WOMANの「女性が活躍する会社BEST100」で1位を頂いています。IBMには多くの自主的なコミュニティが存在しますが、中でも代表的な2つのコミュニティを紹介します。Japan Women's CouncilJWC)という20年前から活動しているカウンセルと、技術者の育成を担当するCOSMOSという委員会です。それぞれ、女性がライフイベントの心配をする中でどうやったら仕事と両立でき、キャリアを前に進められるのかも考え積極的に活動しています。

社員の声を何よりも重要視し、実際に制度として導入しています。「e-ワーク」と呼ぶ在宅勤務は、20年以上前から行っていますが、これはJWCのメンバーの提言がきっかけです。最初は育児との両立をはかるため、在宅勤務ができればいいのにという話でしたが、いざやってみると、それは介護の場合でもいいし、社員全般のパフォーマンス発揮に有効だということで、全員が利用できる制度となりました。このようにそもそもの下地が根付いていたため、昨年のコロナ禍の際の急なロックダウンや小学校の休校に際し、在宅勤務にはスムーズに移行できました。

また、企業内保育園が2つあります。2011年、まだまだ待機児童が多く「保育園落ちた」問題が起こる前から、社員の活躍を願い保育園を作っています。2020年にコロナ禍で小学校の臨時休校が急に決まり、育児介護との両立が難しくなるなか、3月の段階ですばやく特別有給休暇の制度を作りました。経営層に多様な声・意見がある状態だからこそ、素早く制度を作ることができました。

もともとIBMには技術力を高め専門性を深めるキャリアの築き方と、部下をもちマネジメントスキルを高めてチームで結果を追求する管理職を目指す場合の、2つの方向があるため、管理職の人数を増やすことだけに施策を集中してきたわけではありませんでした。しかし、女性が「やはり管理職になりたくない」問題は、IBMにとっても課題でした。なかなか管理職比率が増えないなか、原因や理由を改めて分析し実際に活動をしています。昔ながらのパワフルで活躍している女性像を前にしり込みし「とてもじゃないけど私にはつとまらない」「私なんかがなれない」と思ったり、リーダーの女性候補がいないと憂うことは、日本のIBMだけでなく世界中である話です。しっかりアプローチをとることで管理職の比率が高まり、女性リーダーのマインドも変わっています。

JWCでは「人生すごろく」も作りました。入社していろいろ悩みながらライフイベントと仕事を両立させ、セクハラもたまに受けながら、おもしろおかしく人生を歩み、最終的にはCEOをめざす内容です。人生すごろくも活用しながらネットワーキングをし、お互いに勇気を与えあって階段を上っていくイメージを持つ社員が増えました。女性がポジションを上げていくことを必要以上に怖がることなく、いい意味で開き直った上でポジティブに、一つの選択肢として捉え始めています。こうした意識の変化からくる実績については、ここ数年顕著になりました。

2019年から女性管理職育成プログラムを行っています。誰もが見たことがないものに不安はつきものですが、女性は特にそういったところを心配しがち。実際にやはり自信のなさがはっきりしていたため、「あなたならできる」「期待している」と自信をつけてもらいます。マネージャーの役割を体験して垣間見られるプログラムを行い、管理職になりたくないという社員が40%から10%に減り、女性管理職比率も順調に上がってきています。

ただ女性管理職比率が上がればいいわけではなく、多様なロールモデルができています。「仕事第一」で活躍する従来のスーパーウーマンのイメージが強い若い世代も多いですが、そうではなく悩み、自分の弱点も欠点もさらしながら、メンバーと対話しながらいいところを伸ばす等身大のリーダーが増えています。多様なリーダー像が、さらに若いミレニアル世代やZ世代に勇気を与え、若手社員のプロモーションもすごくよくなってきています。

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◎障がい者

IBMフェローの浅川智恵子が、視覚障がい者を目的地まで誘導する「AIスーツケース」の開発を進めています。全盲の研究員が街歩きをしたい、自由に歩けるような社会にしたいという想いから、ほかの企業の方と協力して開発しています。モットーは「障がいがあるからこそできる仕事がある」。世の中をよくしたいという思いです。

できないことや障がいに目を向けるのではなく、社内でPDAPeople with Diversity Ability)と呼ぶ多様な能力に目を向けています。そういったものが根付き、研究員を生み出すなど社員の活躍のもとになっていると思います。実際、障がいのある社員もさまざまな分野で専門職として活躍し、部下を持つ管理職もいます。障がいの種類は多種多様です。

活動は学生や社外にも広げています。障がいのある学生は自分にふたをする場合が多く「アルバイトをしたことがない。だから自分の強みが書けない」という方がいるなど、経験値がどうしても少なくなりがちです。そのため、経験値を広め就労ビジョンを描く就労プログラム「Access Blue」を行っています。参加者には「人生が変わった」「失敗を許される中でチャレンジできた」との感想を頂いています。

2020年もコロナ禍のなか急きょオンラインで開催。目が見えない方や聞こえない方、精神障がいなどいろいろな障がいの方が参加。7カ月間を無事に乗り越えた学生たちは、本当に輝いた顔で卒業していきました。実際に就活された方もおられ、すごくうれしい報告も色々届いています。従来はIBMの本社に出社できる方限定でしたが、オンラインで地方の方も参加できるようになりました。地方の方の申し込みが本当に多く、「こんなことやってみたくてもできなかった」という障害のある学生さんがこんなにいたことにスタッフ一同驚き、機会をご提供できる有難さと喜びを感じています。

◎LGBT+

LGBT+のインクルージョンの取り組みをしています。2003年に一人の社員が人事にカミングアウトをしてくれたところから一緒に取り組んでいます。啓もう活動から始まり、大まかなグループやコミュニティを作り、制度の準備というところをしています。2021年に結婚祝い金を同性パートナーに認めました。社内だけでなく社外、社会とのかかわりが重要だと、2012年に「work with Pride」という団体を立ち上げています。

LGBT+が働きやすい職場づくりに向けた評価指標、PRIDE指標も策定しました。今これが各企業さんの指標として非常に重要視されています。「まず何をしたらよいかわからない」という企業さんから「指標の項目を見ると、しなければいけないことがわかる」との言葉もいただいています。

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2016年、世田谷区と渋谷区とほぼ同じタイミングで同性パートナー登録制度という社内独自の仕組みを確立しました。福利厚生を通じ、LGBT+の方が自分らしく働け、自分らしく自分の能力を発揮できる環境の整備に取り組んでいます。人事制度のシステムがあり、自分の性的指向や性自認を登録できるようになっています。パートナー登録制度をご利用いただく方も増えています。

社外活動としてはレインボーパレードや先ほどの「work with Pride」、大学向けセミナーや社会に対して平等性を訴えるような団体との連携もしています。社内にカフェテリアがあって毎年6月にはレインボーメニューというところでちらし寿司やお寿司を出すなど、身近に感じてもらえる取り組みも行っています。

◎ワークライフ~ライフイベントのサポート

社員一人一人はそれぞれのライフイベントと両立して輝かなければいけないので、生活の部分、ライフの部分は切り離すことはできません。そういった観点で、Work Lifeのサポートにも力を入れています。社員の子供向けプログラムとして、学童クラブや親子で学ぶ量子コンピューターといった学ぶ講座を実施したり、小学校のお休み中、居場所がない方に居場所を提供したり、教育を提供したりということもしています。

男性育児と介護の部分が、社会的にも問題になっていますが、そういったところも社長が本気を見せることがたいへん効いています。社長の山口は男性の育休100%宣言をしただけではありません。自分の当時の子育てを失敗談も含めて振り返りつつ、若い人に「絶対、育児休暇は取ったほうがいい」と、意見交換の機会があるたびに伝えています。

50代の社員もかなりの割合を占め、親世代の介護そして自身の闘病といった健康面も注目されています。大事なのがやはりコミュニティの枠を越えることです。女性活躍や若手技術者などいろいろなコミュニティが活発に活動していますが、この健康分野は「コミュニティだけで閉じていたらもったいない」と連携がかなり進んでいます。女性活躍のためのJWCCOSMOSが連携するだけではなく、実際にテクノロジーを通じてそれを解決したいとか、介護・闘病はシニア世代だけが考えることではないといって、若手の技術者コミュニティ「TECJ」を巻き込んでいます。

社内の乳がん啓発団体が、ピンクランと呼んでいるんですけど、チャットボットの女の子のキャラクターを開発したりしています。そういった団体メンバーが集まり、介護セミナーや闘病セミナーをしたり、介護すごろくを作ったりしています。やはり介護は人に打ち明けにくく伝えにくい。タブー視されていたことをいかにお互いにInclusiveになれるか。いまチャレンジして取り組んでいます。

一番重視しているのは、「ただ見ているのをやめ立ち上がろう!」ということです。Allyship(アライシップ)といい、アライはLGBTのコンテクストで使われることが多いんですけど、やはりそれだけではないと。2020年の米国の黒人問題のときもIBMコーポレーションのCEOアービンド・クリシュナ―がいち早く「差別を禁じる」と立ち上がり、社内に一気に動きが広がりました。誰でも誰かの味方になれますし「ただ見ていること、静かにしていることは認めていることと同じ」。Bystander(傍観者)からUpstander(行動を起こす人)に一歩を踏み出し、誰かの輝きを増すことができる――。こういう想いで昨年Women Allyを立ち上げました。誰かの味方になろう、立ち上がろうということを今、一番重要視しています。

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◎アンコンシャスバイアス

アンコンシャスバイアスに向けた取り組みはIBM全体で5年ほど前からかなり力を入れてきました。上司が女性に配慮したつもりが機会を奪ってしまうことがあります。ライフイベントがあるから重大な仕事を任せるのをやめておこうというもの。子育てのサポートばかり目が行ってしまい、良かれと思って遠慮して育児中の社員に海外赴任の機会を提供しないといったケースです。実際の社員は「チャレンジしたい」と思っていたのに簡単な仕事を与えられ、すごくモチベーションが下がる。そして退職する。そういうことが起こっています。

私自身もビジネススクールの卒業研究で社内外の女性にアンケートしたところ、上司に求めるサポートは育児への配慮ではなく、自分が活躍できるための素早いサポートやアドバイス、適切な仕事のアサインという結果が出ました。そういった意識のずれを上司にも認識させ、活躍のためのサポートをしましょうというところです。バイアスに気付き、いかになくしたり少なくするかという取り組みをしています。

最近はアンカバーリングという概念があります。自分らしさを同調圧力で隠してしまうとき、人が能力を発揮できないといったもの。どんな事情でも自分が自分らしくいられる環境づくりに取り組んでいます。

◎指標数値

ダイバーシティーに関する女性の活躍支援の指標の達成状況ですが、女性社員の比率は2025年をめどに25%をめざしています。それ以外の指標も持って活動をしています。女性管理職比率は当初立てた目標を上回ってスピードアップし、実際に比率は上がっています。意識が浸透しないとなかなか上がらない部分があり、リーダー、メンバー自身、若手などすべてのレイヤーへのアプローチが奏功していると思います。LGBTの情報はかなりセンシティブかつ非公開でお伝えできませんが、人事システムで自分の性自認を登録できるようにしてモニターしています。

◎業績にもプラス

DiversityInclusionへの取り組みは業績にもプラスになるし、長期的な経営にもプラスです。これが企業一般に共有されていない面はあると思います。この1年でお客様の問い合わせが増え、危機感を持つ企業が増えていると感じます。ステークホルダーの巻き込みや、どこまでトップがコミットできるか、また社員を信じられるかに掛かっているのではないでしょうか。

当社がダイバーシティーを進めてきた背景には経営難や、世の中とお客様のニーズの変化がありました。B2Bのお客様がおられるその先には一般消費者がいる。男性も女性も障がい者もLGBTの方もおられる。世の中の世相を反映していないと、お客様のための真の価値提供はできない、まさにビジネスのためのダイバーシティーです。コロナ禍でどこの会社さんも厳しい環境ですが、オンラインを追い風にして、すべての人が働きやすい、よい環境になればと思います。

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