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| 第8部 ■定説を覆す | ||
専業主婦だった41歳のときに始めたパートの働きぶりが社長の目に留まり、右腕として事業拡大に貢献し、役員になった女性がいます。その人は中古本チェーン最大手、ブックオフコーポレーション(神奈川県相模原市)の、橋本真由美常務(54)です。 短大を卒業して、栄養士として3年間病院に勤務した後、17年間は専業主婦。「子供の学資の足しにでもなれば」と、1990年に開店したブックオフの1号店に、時給600円で採用されました。 パートやアルバイトに大幅な権限移譲をする同社の方針は、「カロリー計算とPTA活動しか能がなかった」という橋本さんを、「仕事を任される喜び」に目覚めさせました。 「この喜びを、後から入って来るパート、アルバイトの人たちにも」。社内の誰からも「お母さん」と慕われる面倒見の良さもあって、いつしか店のリーダー的存在、そして人材育成の第一人者となりました。 レジのお金の取り扱いまでパート、アルバイトに任せ、社員は店長だけという店が多い、ブックオフの成長を支えてきた活力ある組織づくりには、これまで橋本さんが大きな役割を果たしてきました。 95年には取締役に就任。2000年には業績不振が著しい子供服などの中古品を扱う新規事業の店舗に志願して乗り込み、立て直しに尽力しました。 「取り扱った経験のない商品分野だったので、立て直せるかどうか正直、自信はなかった」と言いますが、「長年手掛けてきた本、CD以外の事業が原因で、会社が傾いてはまずい。何とかしなかれば」という思いが、橋本さんを突き動かしました。 「業績が悪いことから来るあせりが、かえって利益にならない値引き販売を助長していた」。社内屈指の現場を見る目は、ここでもいかんなく発揮されました。成果が上がらない場合は店舗の閉鎖や店長、パートの配置替えといった非情な決断もしたといいます。 坂本孝社長(63)は「橋本さんは、いわばうちの大番頭。誰よりも現場をよく知っていて、頼れる存在」と賛辞をおくります。この坂本社長、本当は橋本さんに人材育成の責任者として、従来の仕事に専念してもらいたいと考えているのですが、橋本さんは今も1カ月の半分は不振店の立て直しのため、全国を飛び回る毎日をおくっています。 「相手に、わかりました、と言わせてしまう交渉力は圧巻。会社を再生させるのは彼女しかいない」――ネットを使った食事などの出前システム運営会社、夢の街創造委員会(大阪市)の花密伸行会長は、中村利江さん(38)に社長就任を依頼した理由を振り返ります。 中村さんは関西大学在学中からモーニングコールサービス事業を立ち上げるほどのアイデアウーマン。その活躍ぶりは新聞でも取り上げられました。卒業後はリクルートに勤務、インテリアコーディネーターを経て、ハークスレイにいた2001年、取引先として夢の街の花密さんと知り合います。「敵には回したくない」というのが花密さんの中村さんへの第一印象でした。 1999年9月に設立した夢の街は、加盟店の拡大、資金調達がうまく行かず、倒産の危機に。創設者の花密社長(当時)の依頼を受けた中村さんは2001年4月にハークスレイを退社、夢の街のマーケティング業務担当の役員になり、2002年1月、社長に就任しました。 中村さんは社長に就任するなり、従業員の削減などリストラに着手しました。「社員を切るのはつらい。でも極限の状況では、100%以上力を出せない人は雇えない」。ひん死の会社を建て直すために、次々と手を打ちました。 一方で、弁当や生花、吉本興業の「芸人の出前」にまで事業内容を拡充するなど、企画力と交渉力で多角化に成功しました。本業である食事の出前もすかいらーくやピザハットなど大手飲食店との提携をまとめ上げました。ネットワークの構築は最大の難関でしたが、即日配達にこだわる戦略が他社との差別化につながりました。社長就任から1年半でライバルをすべて撤退へ追い込みました。 資金調達にも走り回りました。女性社長に経営が務まるのかと、相手先に疑いの目を向けられることもありましたが、今やベンチャーキャピタルなど16社がスポンサーとして名を連ねるベンチャー企業に育て上げました。業績も赤字解消には至らないものの、現在、売上高は2年前の約4倍に増加しました。 「黒字化するまで社長の給料は半分でいい」と中村さんは言い切ります。窮地を楽しむ余裕さえあるようです。 ネットによる有機野菜宅配サービスを手掛けるオイシックス(東京・品川)の山川奈織美さん(26)は20代という若さで事業部長を務めます。大学卒業後入社したマッキンゼーを約2年で退社し、2001年2月オイシックスに入社。サイト作成業務に携わった後、外食店舗向け販売を対象とする新規事業の立ち上げに参画してきました。 事業立ち上げ当初は営業のため全国のレストランを渡り歩く日々。営業先で説教されて帰社する日が続くこともありましたが、次第に受け入れられるようになりました。ライバルの野菜卸業者は数千社に上りますが、味と安全性を前面に押し出すことでブランド力を構築しました。 マッキンゼー時代、山川さんは戦略コンサルタントとして通信・エレクトロニクス業界の技術開発戦略など、インターネット関連プロジェクトに従事。コンサルティング業務を通じて、会社の長期戦略と現場を両立させるバランス感覚を培いました。 勘の良さに加えて、「仕事のスピードと馬力は社内ナンバーワン」。マッキンゼー時代の先輩でもある高島宏平社長は山川さんをこう評価します。ささいな失敗が命取りになりかねないベンチャー企業ですが、「彼女なら新規事業も任せられる」と信頼を寄せています。 |
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