「宗教法人や学校法人など、民間からの依頼が増えている。明治以降の建物や美術工芸品にかかわる修復依頼も少なくない」――。京都市の中心部にある文化財修復会社、さわの道玄の沢野道玄社長は驚きを隠しません。
補助金を出す国や自治体が発注主となることが多い文化財の保存修復ビジネスで、民需拡大は異例のこと。しかも、さわのの場合、地元の京都や奈良だけでなく、長野や埼玉、三重、香川と全国から仕事が入り始め、10年前に1億円足らずだった年商が3億円弱に増えたのです。
美術大で漆芸科を卒業した沢野社長が1991年に設立した同社は、科学的修理法を積極的に採り入れることで知られています。美術や文化財の知識が豊富な芸術大出身者を採用、漆の塗り直し、壁画のはく落止め、装飾品の彩色復旧など複数の仕事を1社でこなすのも強みです。
「バブル崩壊を機に、古い物をリメークして使い続けようとする精神が広く復活しているのでは」と沢野社長。最近は和風建築の民家など個人からも、傷んだ床板や仏壇、床の間などの補修依頼が目立ってきました。今年からは、リフォームを手がける工務店と共同で、個人向けの補修の市場拡大にも力を入れていくつもりです。
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2005年に開かれる愛知万博。エコロジストのジョン・ギャスライトさん(41)は愛知県瀬戸市の山中で、万博に展示予定の「千年生き続ける家具」の制作に打ち込んでいます。
「グローイング・チェア」。ヤナギやハイブリッドポプラなどの苗木をイスの形になるように接ぎ木して育て、2年ほどで実際に座れるようになる「生きている」イスです。公園や歩道など公共の場所に設置すれば、木を育てながら憩うこともできます。もちろん、個人が自分の庭に作ったり、企業がエントランスホールに作ったりすることも可能です。
米国、カナダの国籍を持つギャスライトさんは「神社の木、木造建築物などと長年共生してきた日本人にこそ、このイスの価値をわかってほしい」と話しています。
グローイング・チェアの根底にあるのは、3年前、日本の科学者が提唱を始めた「千年持続学」の考えです。枯渇する石油資源や人口爆発の中で、20世紀に地球を覆った大量生産・消費の経済を見直し、長期間にわたって再利用(リサイクル)・持続可能な経済・社会を目指します。
「千年前の建築物を補修して長く使おうとすることは、現在作り出す製品のライフサイクルもできるだけ長くしようとすることにつながる」というのは提唱者の一人、赤池学ユニバーサルデザイン総合研究所所長。古い物を大事にするだけでなく、新製品にも長寿を求める。最近の長寿住宅・古民家ブームもこの発想に根差しているといいます。
過去、現在、未来――。連綿と続く時間を再利用というキーワードでつなぐ「タイムリサイクル」は、限られた資源の中で人々が豊かに暮らせるための、21世紀にふさわしい新しい経済の姿を浮き彫りにしてくれそうです。