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| 第8部 ■タイムリサイクル | ||
様々な方向に向いた机、部屋の真ん中を蛇行する通路――。 情報技術(IT)関連事業を創出・育成するITXではオフィスの通路を歩くと作業中の社員とつい目が合ってしまいます。「ちょっとした用事ですぐ立ち話が始まってしまいやすい造り」と社員は苦笑い。 しかし話の中から一度ビジネスのアイデアが持ち上がれば雰囲気が一変します。机のそばにあるテーブルを囲み話し合い、議論が白熱すればそのまま会議室へ。同僚との世間話がそのま役員を交えた新規事業の会議に発展することもあるそうです。 ITXは2000年に日商岩井の情報産業本部が分社し発足し今の東京・霞が関のオフィスに移りました。商社のイメージを一掃できるようにとレイアウトを任されたのは若い女性社員3人です。当時の社長の注文は「社員全員がコミュニケーションをたくさんとれるように」だけでした。 ITの分野では事業展開のスピードが成否のカギを握ります。社内のIT化による効率化も進んでいたのに、一見、逆行するようなテーマを持ち出したのは「仕事をするのは人。社員同士の情報交換が足りなければ、決断に時間がかかる」(横尾昭信社長)との考えがあったからでした。 女性3人が知恵を絞った結果は、コミュニケーションをとるには、たくさん人と会う機会をつくればいいとの結論になりました。カフェなど共有スベースも作りましたが、もっとも効果的だったのが蛇行する通路でした。歩くスピードが落ち、互いに声をかける機会が増えました。そのうち席が離れていても直接移動して話すことが自然になり、内線電話は使われなくなったそうです。 普段から会話を交わしていれば、会議もすぐ本題に入れるので「会議は1時間以内が不文律」だそうです。社員数は100人程度ですが会議室は大小、目的別に11あり、何日も前から会議室を用意するために社員のスケジュールを管理する必要もありません。 個人の机は4メートル四方の正方形のスペースに区切られ、その四隅で外側を向いて作業します。4人の中心にはテーブルがあり、皆が振り向けばちょっとした会議スペースです。 ☆ ☆ 日報を書かない営業マンが増えています。取引先を訪問したら、携帯電話のボタンを数回操作するだけ。何時に、誰と会い、どんな見積もりを出したのか、受注はできたのか――。画面に用意された選択肢を選ぶだけで営業報告は完了です。 「結果が出ない社員ほど長い日報を書いていました」 東芝eソリューション社の溝辺慶一ソリューション第3事業部長は昨年10月の営業支援システム導入前を振り返ります。それまでの営業マンは販売実績が評価の大半でした。結果が思わしくない社員は、日報に途中経過をびっしり書き込み「努力の結果」を示していました。 新システムでは「販売につながる過程の仕事」をしているかどうかをチェックします。営業担当者の行動を分析すると、意外と社内の会議や資料づくりに時間をかけていることが分かりました。取引先に見積書を出したり、決定権のある担当者に会った方が販売につながる可能性が高いはずです。 携帯電話で入力する営業報告で分かるのは販売につながる仕事をしたかどうかです。その結果で社員が評価されるように変わりました。足元の販売実績が出なくても、慌てて無理な値引きをする必要もありません。最終段階の交渉で上司の力を借りてもそれまでの成果はきちんとひょうかされます。 ある社員は「仕事の質を意識するようになった」と言います。ある部署では会議の時間が6分の1になりました。休日出勤はなくなり残業も減りましたが、販売成績は上昇しているそうです。会社に必要な業務を標準化することで、無駄な仕事の時間を判断できたのです。 東芝eソリューションの営業支援システムの基礎となるソフトを開発したのはソフトブレーンという会社です。同社の宋文洲会長は「日本企業は工場と同様に、営業も効率化をできます」。社員の行動分析の結果、勤務時間の8割が会社の業績に寄与しない活動という企業もあったそうです。 |
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