日本経済新聞

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日経バリュー|マーケティングからみたメディアの役割

メディア選択が
ブランド価値を左右する

慶應義塾大学商学部教授 清水 聰

 「広告と販売促進」「マスメディアとウェブ」――。清水聰・慶應義塾大学商学部教授は、2つの視点から新しい時代の企業広告のあり方について語る。共通するのは、消費者の関心や信頼を醸成していくには、新聞や雑誌を使うマスメディア広告が欠かせないという点。清水教授は、マスメディア広告は「ブランドのポジショニングを変える」役割を果たすと語る。

日経バリュー|   日米ともに広告より販促に力点 しかし、落とし穴がある

――モノが売れない現在、「広告不要論」のような極端な議論も出ています。

清水聰氏

清水 米国でも、日本でも、「広告ではなく、販売促進(販促)で売る」という傾向が顕著になっています。米国では広告費と販促費の割合が逆転して、店頭でのセールスプロモーションなどの販促費が広告費を上回るようになっています。

 ところが、ここには落とし穴があります。販促による価格訴求中心の売る戦略を取った場合、確かに売り上げは伸びますが、必ずしも「いいお客様」をつかむことができない。「いいお客様」とは、その商品・ブランドに対する「コミットメント」の高い顧客です。分かりやすく言えば、買う数量は少ないかもしれないが、値引きしなくても買ってくれる、あるいはほかの商品に浮気をしない顧客です。

 消費者の商品・ブランドに対する関わり方を測る尺度には2つあります。「ロイヤルティー」と「コミットメント」です。前者は消費者の行動を測る尺度であり、後者はいわば思い入れを測る尺度。販促でモノを買う消費者は、確かに「購入する」という結果においては「ロイヤルティー」は高いのですが、「コミットメント」は決して高くない。「安ければ買う」人たちですから、思い入れはそれほどない。この点が企業にとっては問題なのです。

――そのような状況で、マスメディア広告はどのような意味を持ってくるのでしょうか?

清水 従来、マスメディア広告は、もっぱら認知度を高める効果が期待されてきました。けれどもこれからのマスメディア広告は、「ブランドのポジショニングを変える」役割を果たすと思っています。

 例えば、乗っているクルマの種類でオーナーに対するイメージが異なるということがあるでしょう。広告も同様で、信頼されているメディアに広告が載っていれば、その商品自体のイメージも高くなる。ブランド力のあるメディアに広告を載せ続けることによって、その商品・ブランドのポジショニングが変わっていきます。人は商品の価値について解釈する時に、どういう場で見かけたかといった周辺情報も含めて解釈するのだと思います。“広告を載せるビークル”としてのメディアブランドを意識することが重要になってくるでしょう。

日経バリュー|   マスメディアが ブロガーの認知を高める

――他方、ウェブ広告やブログによる情報発信が大きな力を持つようになり、その影響力はますます高まっています。

清水聰氏

清水 ウェブ広告については、使い方や評価についてはまだ混沌とした状況だと思っています。ウェブについては今までのコミュニケーションと別の役割があるかもしれないのに、一般に使われているクリック率などの効果測定指標は、従来の広告・プロモーション指標と同じ発想・手法によるもので、例えば“思い入れ度”を測る指標などはまだありません。新しい媒体にふさわしい効果測定手法の開発が急がれている段階と言えるでしょう。

 ブログについて言うと、日本と欧米では顕著な違いが表れています。よく指摘されるように、米国では「書き込む人」が多いのに対して、日本では「読むだけの人」が多い。それは事実なのですが、違いはそれだけではない。

 「商品を買った後の情報発信」という点では、実は日本が一番進んでいます。どのように情報収集してその商品を選択したのか、どの店で買い、店員の対応はどうだったか、実際に使ってみて評価はどうか…。そういった細かな情報がブログで数多く発信されている。とりわけ、強い認知と関心を持って商品を買う人ほど「買った後の情報」を発信する傾向が強い。人気が高い有力ブロガーの多くは、そうした実体験に基づいた情報を発信しているんです。

 注目すべき点は、有力ブロガーがどうやって商品の認知や関心を高めているかという点です。多くの場合、最初の情報はマスメディアから得ているんですね。

 サッカーに例えて言えば、ボランチである後方のマスメディアがけり出したボールを受け取り、ゴールに向かってシュートするストライカーがブロガーと言えるかもしれません。マスメディアが直接ゴールを狙っていたインターネット以前の時代と、そこが大きく変わってきていると言えます。「いかにして、前線にいいボールを出すか」。企業にとって、こうした視点から総合的なメディア戦略を考えていくことも重要なポイントになってくるのではないでしょうか。


清水聰氏

プロフィル

清水 聰(しみず・あきら)

1963年生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了。博士(商学)。明治学院大学経済学部教授、米ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院客員研究員などを経て、現在、慶應義塾大学商学部教授。『「コミュニケーション型生活者」を探せ!』(日経BP企画、2007年)など著書多数。

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日本経済新聞
2009年10月9日朝刊 掲載
PDFファイル 1,531KB

日経ビジネス
2009年10月9日号 掲載
PDFファイル 1,450KB

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