「景気後退期に広告宣伝費を増やすか、減らすか。それが、その後の売上高の伸びを決する“成長要因”になる」――。
リーマン・ショックを契機とする世界同時不況によって急激な業績の落ち込みに見舞われている日本企業。多くが今、リストラや経費削減の一環として、広告宣伝費を抑制している。だが、そうした動きに警鐘を鳴らすのが、企業の広告宣伝戦略を研究する小泉眞人・東海大文学部広報メディア学科教授。
小泉氏は、過去の景気後退期の広告宣伝費とその後の売上高の相関関係を実証的に分析。「不況期に広告費を増やした企業は、いち早く業績低迷から脱出する。一方、広告費を減らした企業は業績回復に長い時間を要する」という驚くべき結果を明らかにしている。
ここでは、広告費のあり方、経営者層に求められる役割、広告メディアの特性と活用戦略など、「景気後退期における広告宣伝戦略」について、小泉氏の考え方を紹介する。第1回は、不況期の宣伝広告費のあり方について。
日経バリュー|第1回 不況期の広告費と売上高に相関関係 「広告費10%以上増加」組は売上高拡大
――企業の広告宣伝費の落ち込みが目立ちます。広告宣伝の現状をどう見ていらっしゃいますか?
小泉 確かに厳しい状況が続いています。今年2月に電通が発表した「2008年(平成20年)日本の広告費」を見ても、昨年1〜12月の総広告費は前年比4.7%減の6兆6976億円と、5年ぶりに減少しました。今年も依然として低調なままで、いつ回復の兆しが現れるのか、残念ながらまだ確かな見通しは立ちません。
――不況の度に繰り返される「広告は将来への投資なのか、単なる経費なのか」という議論が、改めて注目を浴びているようですが。

小泉 今回の世界同時不況は日本経済にとって、1990年代以降では4回目の景気後退局面に当たります。そこで私は、1990年代以降の2回の大きな景気後退期に企業が広告宣伝費をどのように支出し、それがその後の景気回復・拡大期の業績にどう影響を与えたかを検証してみました。そこから得られた結論は、「後退期に広告宣伝費を増やした企業は総じてその後の回復期にいち早く売上高を回復し、反対に減らした企業は売上高の低迷に長く苦しむ」というものでした。
――それが、小泉さんが日本広告業協会の機関誌『JAAA REPORTS』6月号に発表された「景気後退期の中の広告宣伝費」という論文ですね。
小泉 これは、かつて日本広告業協会が1985・86年度の企業の広告宣伝費とその後の売上高の相関関係を調べた分析モデルを用いて、バブル崩壊後の91〜93年度、ITバブルがはじけた2001年度の2度の景気後退期における広告費の伸び率と売上高推移の関係を、私が独自に調査・分析したものです。(データは日経広告研究所編『有力企業の広告宣伝費』に基づいています)
図1は1991〜93年度(対象企業525社)、図2は2001年度(対象企業638社)の2度の景気後退期における広告費支出と売上高の推移です。景気後退期の広告費の平均伸び率によって対象企業を、【1】対前年比10%以上の増加、【2】同0〜10%未満の増加、【3】同0〜マイナス10%未満の減少、【4】同マイナス10%以上の減少――の4グループに分け、グループごとに売上高がどのように推移したかを分析しています。

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これを見ると、どちらのケースでも、景気後退期に広告費を積極的に支出したグループは、その後も堅調に売上高を伸ばしています。一方、広告費を削減または抑制したグループは、売上高が長らく低迷していることがわかります。






