《サン=トロぺ》
ポール・シニャック
1893年
油彩・カンヴァス
19.5 × 28.0cm


 《サン=トロぺ》は、1893年の《サン=トロぺの港》(ファン・デア・ハイト美術館、ドイツ・ヴッパータール)のための習作である。後者は全く同じ構図だが、縦長の画面に描かれ、反射する水面が画面下を広く占めている。この完成作では、スーラの死後、シニャックが発展させた幅広く長い点描主義の筆致が用いられている。

 当時、ほとんど知られていない辺ぴな漁村であった地中海沿岸のサン=トロぺに移住したシニャックは、その翌年にこの《サン=トロぺ》を描いたが、1890年代中頃までの初期に、地中海の光の効果を表現するため彼が発展させた強烈な色彩対比の手法がここでも探究されている。白の下塗りが施された板の明るさがその効果をいっそう高めている。

 シニャックは、油彩スケッチや水彩画を欠かさず自分の展覧会で完成作と並べて出品したが、このことは彼が習作を単なる準備用の作品ではなく、それ自身独立した芸術作品と見なしていたことを示している。そのスケッチに見られる鮮やかな色彩の大胆で即興的な使い方は、1905年にマティスやドランが発展させたフォーヴの様式に多大な影響を与えた。

 1928年6月、サミュエル・コートールドが約1,260ポンド(その価格にはルーベンス作として売却された作品も含まれる)で購入。1948年、コートールドにより遺贈。



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