《アヌシー湖》
ポール・セザンヌ
1896年
油彩・カンヴァス
65.0 × 81.0cm


 《アヌシー湖》は1896年7月、フランス・アルプスの山麓に位置するオート=サヴォア県のこの湖の岸辺にあるタロワールで、湖の向こう岸にある木々に半分隠れたシャトー・ド・デュアンに向かって描かれた。

 絵は青と緑の多様な寒色系の色彩に支配されており、ところどころ深く響き渡るような色調を示すが、主眼となっているのはそこに走る一連の暖かいアクセントである。早朝の日の光が左の木の幹、湖の向こうの遠くの丘と建物に当たっている。

 背景の筆致は色の面で前後関係を生んでおり、近くの木の葉と遠くの丘の斜面を結びつけている。しかし、ある個所ではさっと描いた線的な弧が木の葉から離れており、絵の上部を横切る一律なリズム感とパターンにアクセントをつけている。画面全体に統一感を与えるのに用いるこうした工夫は、セザンヌの晩年の作品にいっそう顕著になる。

 だが、これは自然を拒絶する方法というのではなかった。むしろ、彼は、彼が言う「自然と一致する調和」を求めていたのである。つまり、彼は見える世界の体験を永続的な首尾一貫した芸術へと変容させることを望んでいたのである。

 1926年1月、サミュエル・コートールドが8,000ポンドで購入。1932年、コートールドにより寄贈。



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