日本のけん引期待・シンガポール上級相、宮沢元首相一致
 国際交流会議「アジアの未来」(日本経済新聞社主催)は2日目の5日午後、シンガポールのリー・クアンユー上級相と宮沢喜一元首相が対談し、アジア危機の克服に向けて日本が景気回復を急ぎ、世界経済のけん引車に復帰すべきだとの認識で一致した。また、基調講演したフィリピンのドミンゴ・シアゾン外相は、将来のアジア経済について「東アジアが円―元貿易圏になり、中国と日本が域内の成長のけん引車になる可能性がある」との展望を示した。会議は2日間の日程を終え閉幕した。

 リー上級相は日本の構造改革には「苦痛が伴う」ものの、「旧来の方法を変えれば世界的なプレーヤーになれる」との見方を示した。宮沢元首相も日本は個人金融資産など「持つべきものは持っている。悲観はしていない」と日本経済の先行きに自信を表明した。

 一方、シアゾン外相は円―元貿易圏づくりのために、(1)安定が揺らぐ地域安全保障のため東南アジア諸国連合(ASEAN)地域フォーラム(ARF)の強化(2)貿易自由化を目指すASEAN自由貿易地域(AFTA)とアジア太平洋経済協力会議(APEC)の活用――を求めた。

 香港特別行政区政府のアンソン・チャン政務官は、香港の経済成長率鈍化に関連し、「(香港は依然)地域安定のかなめとなる」と強調、香港ドルのドル連動(ペッグ)相場制を維持する姿勢を示した。中国の人民元切り下げについては、「中国が抑えてきたインフレを輸入することになる」と述べ、中国の国内事情からも通貨切り下げは避けるとの見解を示した。

 元駐日米大使のマイケル・アマコスト・ブルッキングス研究所所長は、「北東アジアの安全保障のために新しい対話機構を設立する必要がある」と述べ、同地域の安全保障体制の強化を訴えた。

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