資金移動の抑制必要・マハティール首相
マレーシアのマハティール首相
 アジアの将来を議論する国際交流会議「アジアの未来」は4日、都内で2日間の日程で始まり、初日はアジアの通貨・金融危機の打開策について討議した。マレーシアのマハティール首相は、短期間の巨額な資金移動がアジア危機の原因だと強調。大蔵省の榊原英資財務官は急激な為替変動を防ぐために、短期的な資金移動を監視する体制の構築を提唱した。その他の出席者からもアジア危機の克服に向けた意見や提言が相次いだ。

 マハティール首相は同日の講演で、「通貨価値が大幅に下がり株価が下落した国では、すべての企業が破たんしかねない」との危機感を表明した。危機に陥ったアジア各国では外国資本による企業買収などを通じ、「経済がわずかな巨大企業に支配される」との懸念を示した。「欧米諸国が資本家の世界支配を抑え込んだ場合にだけアジアも含めた世界の繁栄がもたらされる」と述べ、大規模な資本の動きに何らかの抑制策が必要との考えを明らかにした。

 大蔵省の榊原財務官も、「アジアの危機はアジアだけでなく、グローバル化した資本主義の危機」との認識を示した。具体的な対応策としては、「どんな短期資本がいつどの国にどういうふうに流入したかのデータが必要」と述べ、資本移動の監視システムづくりを提唱した。

 韓国自由民主連合の金竜煥副総裁も、「アジアには急速な資金移動の緩衝材の役割を果たす独自の機構が必要」と強調。具体的には「中央銀行同士で協議機関を設置し、緊急時に資金を融通し合うことから始めたらどうか」と提案した。

 2日目となる5日はアジアの企業経営をめぐって韓国の大手財閥、大宇グループ会長の金宇中氏やNECの関本忠弘会長らが講演と討論を繰り広げる。午後には「アジアの安定・米中の役割」をテーマにフィリピンのシアゾン外相、米国のブルッキングス研究所のアマコスト所長らが講演する。また、リー・クアンユー・シンガポール上級相と宮沢喜一元首相が「21世紀のアジアを展望する」と題して対談する。

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