「アジア企業は変革期」・台湾経営者らグローバル化強調
台湾最大の半導体メーカー、台湾積體電路製造のモーリス・チャン董事長
 国際交流会議「アジアの未来」(日本経済新聞社主催)は5日午前、都内のホテルで2日目の日程に入り、「アジア的企業経営―強さと弱さ」をテーマに、アジアの大手企業経営者らが講演と討議を通じてアジア経済の将来像を探った。講演で台湾最大の半導体メーカー、台湾積体電路製造のモーリス・チャン董事長は昨年来のアジア通貨・金融危機を踏まえ、「アジア的企業経営を抜本的に改める必要がある」と述べ、企業経営が変革期にあることを指摘した。

 チャン氏は台湾積体電路製造が短期間に大きく成長した理由として、専門家による企業経営、社内での英語使用など「グローバルスタンダードに準拠した経営」を導入したことを挙げた。

 韓国の大手財閥、大宇グループの金宇中(キム・ウジュン)会長も「われわれの文化を市場経済に接ぎ木することが重要だ」と語り、固有の価値観に基づきながら経営をグローバル化する必要性を認めた。ただ同会長は、「西欧的尺度のはんらんは混乱さえ生んでいる」として、欧米の価値基準を機械的に導入することには疑問を呈した。

 中国最大のカラーテレビ会社を率いる倪潤峰(ニイ・ルンフォン)四川長虹電子集団公司董事長兼総経理は、経済危機でアジア企業の経営は調整を迫られていると語り、「メガコンペティション(大競争)に直面して、ただ一つの活路は産業を整理・統合し、経営効率を高め、工業経済から知識に基づいた経済へ急速に転換することだ」と長期的な企業戦略を描いた。

 NECの関本忠弘会長は、既存の西欧的な経営形態を踏襲するのではなく、「個を尊重しながら全体をまとめる」というアジア的な企業像を示し、グローバルスタンダードについても創造すべきものだと述べた。

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