アジア賞受賞者の記念講演

経済発展部門倪潤峰(ニイ・ルンフォン)
四川長虹電子集団公司董事長兼総経理(中国)
文化部門キム・ジョンオク
劇団自由創立者・芸術監督(韓国)
技術開発部門マレーシアゴム研究所
(団体表彰、代表者アブドル・アジズ)


<経済発展部門>
倪潤峰(ニイ・ルンフォン)
四川長虹電子集団公司董事長兼総経理(中国)
 四川長虹電子集団公司は中国で最も早く軍需生産から民需生産への転換に取りかかった国有企業だ。率先して計画経済的な考え方から脱皮し、いち早く市場を指針として消費者のニーズに応じた民生用の電気製品を開発した。品質改善に努めてサービスを充実し、国民の生活水準向上に全力を尽くしてきた。97年末現在、主要製品の国内シェアは35%を超え、今年は45%以上になる見込みだ。

 四川長虹電子は企業自身を発展させただけではなく、国有企業の改革は現実にできるのだということを示してきた。今後も人材、技術、規模などの面で優位性を発揮して改革を進めるとともに管理を強化し、製品、資産、組織構造、技術、人員など様々な経営資源の調整と再編を実施しなければならない。

 四川長虹電子の次の目標は世界企業ベスト500に入ることだ。市場、技術、経営管理などの面で努力し、世界各地の優秀な人材が加わり、事業が全世界に広がっていくことを経営者として心より期待している。


<文化部門>
キム・ジョンオク
劇団自由創立者・芸術監督(韓国)
 文化がこれまで西洋から東洋へ一方通行に近い形で流れていたとするなら、今後は双方向の流れにならなければならない。いつの時代にも支配的で流行している文化はあるが、支配的な文化に世界が画一化されれば大変不幸なことだ。文化の多様性を受け入れ尊重することで豊かな融合文化を花開かせることができる。

 韓国は今日、国家の危機を迎えている。国際通貨基金(IMF)という見慣れない単語によりもたらされた経済危機だ。だが私にはこの危機が文化の崩壊と喪失によってもたらされた危機のように思えてならない。成り金主義に走ったため混乱が起き、独創性を失った結果、この危機を招いた。苦しかった時代を簡単に忘れ、おごりの果てに泥沼にはまった。

 危機脱出のために多くの経済対策がとられているが、もっと急を要するのは文化対策だろう。今こそ本を読み、演劇を見、音楽を聴かなくてはならない。耐える力を得て、苦しむ隣人と痛みを分かち合うためだ。


<技術開発部門>
マレーシアゴム研究所
(団体表彰、代表者アブドル・アジズ)
 マレーシアゴム研究所は1925年に小規模な研究機関として発足、当初はゴム生産の川上分野に関する研究開発を手がけてきた。その後、研究分野をゴム加工、製品化など川下分野にも広げ、今や世界でも最大の天然ゴムに関する研究開発機関のひとつになった。

 研究開発の成果はゴム栽培のプランテーション経営や製品製造に多大な貢献をしてきた。また、種子販売、技術供与、遺伝子情報組み換えなどを通じて、他の東南アジア各国、アフリカなど海外にも貢献は広がっている。だが、工業化が進む中でマレーシア国内のゴム生産地の減少、生産コスト上昇などの問題が起きて解決を迫られている。マレーシアのゴム産業はタイやインドネシアと厳しい競争を強いられている。

 今後、マレーシアのゴム産業が飛躍的に発展するためには研究開発の主眼を川下分野はもちろん、ゴム農林事業、及び戦略的研究に置く必要があると考えている。品質管理、製品の規格化、環境汚染対策も重要になろう。



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