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2000年 地球人は
第4部 21世紀への進化

「日本経済新聞 1面企画」


(5)自動安定化装置

 ニューヨークのマンハッタン。雑居ビルの3階に様々な肌の色の人が働くオフィスがあった。少数言語のインターネット検索サービスを展開するオリエンテーション・ドットコム。70人の社員の国籍は27、使える言語は35にもおよぶ。

少数言語を駆使

 これまでに始めた検索サービスはスワヒリ語、ブルガリア語など14言語。多国籍社員の語学力が同社の武器だが、最高執行責任者(COO)のジェイ・タンデル氏(37)は「1年半前にタイ語のサービスを始めるときは苦労した」と振り返る。

 タイ語の文章は英語のように単語ごとに区切らずにつくる。だから、ひとつの単語をキーワードにホームページを検索しようとしても、相手のホームページの文章からその単語を探し出せず、検索不能になる。英語でいえば「trade(貿易)」と入力しても、「worldtradeorganization(世界貿易機関)」と切れ目なく単語が続くと検索ソフトが対応できないのだ。「それがサービス開始の2日前にわかったんだ。あわててソフトを修正し、なんとか予定に間に合わせた」

 英語の言語構造を前提につくったインターネット。少数言語の検索サービスは、タイ語のようにソフト開発に手間がかかるし、発展途上国や貧困国では需要もそう期待できないとみて、米ネット企業は熱心でなかった。「逆に言えばそこに手つかずの市場があるということ。すき間市場だが、いち早くサービスを始めれば優位に立てる」。タンデル氏は確信している。

黒人層に照準

 情報技術(IT)はそれを使うチャンスに恵まれているかどうかで、国と国、個人と個人の経済格差を生む。いわゆる「デジタルデバイド」だが、実はその格差は商機にもなる。国と国の格差に目をつけたのがオリエンテーション社だとすれば、黒人向けネット検索サービスのBETドットコム(ワシントン)は個人間の格差に注目した。

 「これなら、うちの子もネットに興味を持ちそうだわ」。3月中旬、BETがサービスを始めると2人の子を持つ母親が歓迎の声を寄せた。COOのスコット・ミルズ氏(32)はしてやったりの表情で言った。「やっぱり、黒人には黒人専用のサービスが必要だったんだ」

 米国の黒人層のネット利用率は白人層の半分以下。「パソコンを持っている人でも、黒人はネットをあまり使わない。彼らのニーズをくみ上げていないからだ」。そう考えたミルズ氏は、音楽、スポーツなどの検索サービスで、黒人ばかりが出てくるホームページをそろえた。

 BETの動きをみて、大手のネット企業も黒人層という潜在力の高い市場に目を向け始めた。「ヤフーやアメリカ・オンライン(AOL)が市場調査に乗り出した」。ミルズ氏はそんな情報もつかんでいる。

 “デバイド市場”に浸透し始めたのは技術だけではない。

 米マサチューセッツ州を中心に貧困地域や女性、少数民族の企業を狙って株式投資をするフリート・デベロップメント・ベンチャーズ。社長のマーチン・ゲイツ氏(44)が涼しい顔でいった。「われわれは社会貢献事業をやっているのではない」

 黒人女性がつくったネットのセミナー情報提供会社セミナー・ソース・ドットコムなど約3年で30件に投資、30%の収益率を見込んでいるという。

投資会社が追随

 「貧困地区やマイノリティーの企業にも、経営実績のいいところは多い。IT関連企業も増えてきた」と指摘するゲイツ氏。「ほかの投資会社は、『成長力が高いわけがない』という思いこみで貧困地区への投資に冷ややかだったけど、いまはうちのあとを追ってきている」

 取り残されたはずの国や個人にも自然に技術が広がり、資金が流れる。「黒人ネット市場の開拓が進めば、結果的に人種間のデバイドも解消する」。BETのミルズ氏はそうみる。所得格差を示す指標(ジニ係数)も、1980年代から一貫して格差拡大を示してきた米国で、この2、3年、横ばいに転じた。

 所得格差の拡大で社会を不安定にする恐れもあるデジタルデバイドは、IT化への反動も招きかねない。だからこそ沖縄サミットの主要議題になるのだが、実は市場にはデバイドを自動的に安定化させる装置が組み込まれている。むろん、学校のパソコンを貧困層に開放したりIT教育を充実させるといった政策は要る。が、何より政府に求められるのは、ネット普及に不可欠の通信費引き下げを遅らせたり余計な規制をつくるといった、自動安定化装置をさびつかせる行為を慎むことである。

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