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2000年 地球人は
第4部 21世紀への進化

「日本経済新聞 1面企画」


(4)アイデアの工場

 流れ作業のような手法でビジネスのアイデアを生み出していく。そんな「工場」がスイス北西部の山あいの小都市、ビールにあった。

ブレーンは10代

 ブレーンストア社。人間の脳の絵の看板を掲げたオフィスに入ると、アイデアを引き出すための小道具だという浴槽や木片が目に飛び込んできた。

 「経済の高速化でアイデアへの需要は高まる一方。それを効率よく供給する仕組みが必要なのです」。マーカス・メトラー社長(33)はこう切り出した。

 例えばスイス最大の医薬品メーカー、ノバルティスの商品開発に協力したケース。「新しいヒット食品の手がかりを得たい」。依頼を受けたのは一昨年夏。美容や健康などへの効用をうたう、いわゆる機能性食品の分野で若者受けのする商品を生むことが課題だった。

 「では順を追って進めましょう」

 メトラー氏らは、どんな注文でも4段階でアイデアを「生産」する手順を作っていた。まず第1段階は「取得」。世界各地に散らばる10代を中心とした1500人の「ブレーン」から電子メールで意見を募るとともに、消費者の意識調査を実施。次いで2日間の合宿を開いた。

 ごく普通の高校生から髪の毛を逆立たせたロックマニア、社会人まで、15人の参加者から出された意見は1000項目以上。これを第2段階で「圧縮」し、商品コンセプトを「頭がすっきりする」「楽しくなる」「きれいになる」の3つに絞り込んだ。

 さらにメーカー側の試作による第3段階の「試験」、宣伝方法の文書化などの「仕上げ」で一連の工程は終わった。この間8週間。ノバルティスは3つのコンセプトをそれぞれカフェイン、チョコレート、ベータカロチンの配合という形で体現した健康飲料を今年1月に発売。ブレーンストアは報酬として10万スイスフラン(約630万円)ほどを受け取った。

 知識が主役になるグローバル経済の時代。だが、漠然とした知識やアイデアがいくらあっても、それだけでは富は生まれない。玉石混交の「原料」から良質なものをよりすぐり、磨きをかけて「完成品」に仕上げる。あたかも工場のラインで製品を組み立てるように進めれば、商品化に結びつくアイデアを整然と生産できる――。

生産時間で算出

 メトラー氏の発想は、目に見えない知識をいかに商品化し報酬につなげるか、という点から出発していた。

 ブレーンストアでは「全体の工程が価値を生む」という考え方から、生産したアイデアの価格は発注した企業に引き渡すまでのコスト、つまり生産時間をもとに算出する。その後、企業がもうけるか損するかには直接関知しない「売り切り」方式だ。合宿などでアイデアを出してもらう人たちへの報酬も参加時間などをベースに決めている。

 あえて工業社会型の賃金制度を採用し、知識労働の価値を「結果」でなく時間などの「過程」で計算するブレーンストア。これに対し、知識労働者の価値を「いかに業績を伸ばしたか」といった「結果」に求め、それを基準に報酬を決めようとする企業もある。

 米シリコンバレー。コンピューター大手、サン・マイクロシステムズでは人事担当ディレクターのコニー・ラッセルさん(49)が新たな報酬制度を検討していた。

貢献度測り報酬

 これまでは基本給を同業他社より高く設定したうえで、ボーナスやストックオプションを積み上げる方式を採用してきた。高い報酬のおかげで、シリコンバレーの平均転職率が20%近くにのぼるなか、サンは1ケタですんでいる。

 「しかし、それでいいのだろうかと考えた」。待遇を引き上げれば人をつなぎ止めやすい。だが、明確な基準がないままだと人件費は膨れる一方だ。

 代わりにラッセルさんは、ある社員が辞めた場合、業績にどれだけマイナスになるかを計算し、その金額を報酬にする方式を考慮中だ。それが個々の知識労働者の業績への貢献度を反映し「余計なコストをかけず必要な人材を引きつけておく最良の方法だ」と考えている。

 年功序列の賃金体系とは無縁の米ハイテク企業でも、知識労働者への報酬の決め方は他社見合いだったり、あいまいな場合が多かった。だが、21世紀には高い付加価値を生む知識を合理的なコストで獲得し、活用した企業が勝者となる。「知識の市場価値」を正確にとらえようとする動きが「地球企業」の間で始まった。

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