主要
政治・経済
国際
マーケット
産業・流通
店頭・VB
社会
スポーツ
列島ビジネス
社説・春秋
トップ人事
おくやみ
新製品
自動車
発表資料
経済指標
日経調査
●日経プラス1
●日経産業新聞
●日経流通新聞

きょうのクイズ
ザ・ランキング
出張・旅行予約
競馬
ゴルフ
進学ナビ
転職ナビ
2000年 地球人は
第4部 21世紀への進化

「日本経済新聞 1面企画」


(3)100年前の破産法

 アングロサクソン・モデル(英米型経済)という言葉があるように、米国と並ぶ市場経済の先駆者のイメージがある英国でいま、100年以上も前にできた破産法が「時代遅れで起業の妨げになる」と批判され、改正論議の的になっている。

再起の道閉ざす

 1999年12月。英グラスゴー近郊に住むビル・フレミング氏(56)はスコットランド議会の全議員に手紙を出した。「現在の破産法は起業家の活力をそいでいます。ぜひ改正を」

 16歳で起業した同氏自身、破産の経験者だ。かつてはタイヤ販売・自動車整備チェーンが成功し、地元経営者団体の会長も務めた。だが、93年に手掛けた書籍安売り業に失敗し倒産。傷心の同氏に追い打ちをかけたのが冷酷な法だった。

 住宅、年金をはじめ「生活に最低限必要なもの以外、すべて取り上げられた」。3年間は政府の破産者リストに名前が載り、どこまでもついて回る。長年の友人は1人、2人と去っていった。復活の道は閉ざされたと感じ、一時は自殺まで考えた。

 「ヘンリー・フォードやウォルト・ディズニーも倒産経験者。成功者を生むには再起を許す仕組みが必要だ」。フレミング氏はこう訴え、法改正運動に立ち上がった。経営者団体に設置した委員会で議論を重ねるうち、賛成する議員も出始めた。

 同様の破産法を採用している英イングランドとウェールズでは、すでに法改正に向けた作業が具体化している。

 改正作業を統括する英貿易産業省のマイク・ノリス破産処理局政策課長が骨子を説明してくれた。破産者が企業役員に就くことを禁じる期間は3年から6カ月に短縮する。新たな起業資金として2万ポンド(約340万円)まで破産者の手元に残す――。「1880年代に作られた法の精神を懲罰からリハビリに変えるのが狙いです」

 英政府は先月、インターネットで国民からの意見募集を開始した。6月末までに集めた意見をもとに議会への改正案提出を最終決定する予定だ。

 英国では長年、「破産者はうさんくさい人物と見られがちだった」(英政府関係者)。一方、米国では家、車などの個人資産は没収されないなど、破産者の負担は抑制されている。勝者と敗者が瞬時に入れ替わる時代。起業家に復活の可能性を与えない硬直的な社会ではグローバルな競争に勝てない、という認識が英国でも広がりつつある。

 戦後ドイツの経済成長を支えてきた労働組合も、変化の速度を上げる地球社会に対応するすべを模索し始めた。

労組も買収容認

 「うちのような大企業が買収の標的になるなんて」。独通信・機械大手マンネスマンの労組代表を務めるユルゲン・ラードベルク氏(53)は天を仰いだ。昨年11月、英携帯電話大手ボーダフォン・エアタッチが敵対的な株式公開買い付け(TOB)に乗り出したときだ。

 祖父、父、さらに息子と4代にわたる「マンネスマン一家」。ドイツを代表する企業の名前へのこだわりは強い。「それにドイツでは定年まで同じ会社で、というのが普通だからね」

 同氏らはただちに反対運動を展開。シュレーダー首相も買収に不快感を表明し、欧州を揺さぶる問題に発展した。

 運動に転機をもたらしたのは、今年1月末に決まったボーダフォンと仏複合企業ビベンディの通信分野での提携だった。マンネスマンも重工業から通信事業へ重点を移してきたが、孤立色は強まる。「今のままでは生き残れない」。ドイツ金属労組(IGメタル)書記として買収に反対してきたライナー・シュミット氏(50)は観念した。

競争力低下危ぐ

 2月3日のマンネスマン監査役会。ダイムラークライスラーなど大株主が株売却を表明し、大勢は決しつつあった。シュミット氏らは会社に迫った。「従業員の雇用維持など会社側の責任を明確にしてほしい」。組合員を説得するための最後の抵抗だった。要求は合意文書に反映され、組合もこれを受諾した。

 シュミット氏は英米型企業について「短期の利益ばかり考えている」と批判的。ボーダフォンのジェント社長にも「発言がくるくる変わる。ドイツの経営者とカルチャーが違う」と警戒心を隠さない。だが、激変する経営環境を前に、変化を拒んでいては会社と従業員に未来はないと痛感した。

 日本と同じように、起業家の「敗者復活」が容易でなかった英国や、労働者の安定志向が強かったドイツに変化の兆しが出始めた。永続性を前提とした組織や硬直的な制度、慣行へのこだわりを捨て、変化に対応する柔軟さを身につけることこそが、地球人に必要な条件だ。

「2000年 地球人は」トップページへ戻る

NIKKEI NETの最新情報は画面を更新してご利用ください。
掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権は日本経済新聞社またはその情報提供者に帰属します。
このホームページに対するご意見・ご感想は webmaster@nikkei.co.jpまでお願いします。
NIKKEI NETはインターネットエクスプローラー4.0、Netscape4.0以上でご覧いただけます。

Copyright 2000 Nihon Keizai Shimbun, Inc., all rights reserved.