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2000年 地球人は
第4部 21世紀への進化

「日本経済新聞 1面企画」


(2)1万キロかなたの声

 米ロサンゼルスの午後。ヤシの木を見渡せるオフィスビルの電話が鳴った。「グーテン・アーベント(こんばんは)」。真っ青な空が広がっているのに、受話器をとった米国人女性はドイツ語でこう応じた。

大陸を越え転送

 「こんな時間に申し訳ない。ニューヨーク行きのチケットを急いで予約したいので」というドイツ人男性の恐縮した声。深夜のドイツ、男性は1万キロかなたの女性と話していることにまったく気づいていなかった。

 世界7カ所のコール(電話応答)センターで、航空券の予約を24時間受けつけるルフトハンザ・ドイツ航空。午後10時半を過ぎると、フランクフルト近郊のコールセンターから人影は消え、自動通話分配機(ACD)だけが翌日の午前6時までひっそりと稼働する。

 アイルランドのダブリン、米国のニューヨーク、ロサンゼルス、オーストラリアのメルボルン――。顧客からの夜間電話は西回りで大陸を越え、太陽の光が降り注ぐ地域に次々と転送される。客は国内電話をかけたつもりでも、相手の声は地球を一周する。「国内の経営資源だけに頼っていてはいられないからね」。コールセンターの運営を統括する副社長、ラインハルト・シェーファー氏(43)が同社の戦略を説明してくれた。

 ルフトハンザ航空は1995年からコールセンターを世界に広げる一方、ドイツ国内数十カ所の電話予約オフィスを閉鎖した。残業手当を払い国内で夜間予約サービスを続けるよりも、昼間帯の海外のオペレーターを使った方が安くつくからだ。

 世界各地のオペレーターはパートタイムの主婦や学生が中心。99年に開設した南アフリカ・ケープタウンのコールセンターでは、2カ国語以上の言葉を話すオペレーターをドイツ国内の半分の賃金で採用できた。全体でも25%から50%のコスト削減効果があったという。

 「顧客が不審に思うといけないので、オペレーターが天気の話をするのはご法度なんだ」と苦笑するシェーファー氏。「世界に広がる人材や通信インフラを活用しない手はない」

中枢に契約社員

 時間や距離の概念を覆す情報革命。そのパワーを最大限に生かせば、企業は資源を世界から瞬時に集められる。超高速の地球社会では土地や設備、労働力といった資源を自前で抱え込む経営は足かせになりかねない。地球市場で競争する企業は、資源の「所有」から「利用」へとかじを切り始めている。

 昨年末の米シリコンバレー。マーケティングを専門とする日系2世のコンサルタント、ワコ・タカヤマさん(34)に「契約管理職」の依頼が舞い込んだ。消費者がインターネットに絵やイラストを展示したり、作品を無料で取り込めるサービスを展開するセイイット・ドットコム。正社員を27人に抑えた「軽量企業」からの申し出だ。

 タカヤマさんのような契約社員に顧客対応やホームページ管理などの指揮を任せ、最高経営責任者(CEO)のブライアン・エプスタイン氏(31)ら正社員は開発などに専念する。

 「管理職だって社員である必要はない。人材は外で見つけられるし、その方が組織も柔軟性を保てる。小さくて速い『バクテリア企業』が生き残るんだよ」。エプスタイン氏は正社員を極力増やさないつもりだ。

軽量化し急成長

 「持たない企業」は米デラウェア州にもあった。クレジットカード大手、MBNAグループのMBNAアメリカバンク。副会長のバーノン・ライト氏(57)は猛烈な勢いで世界を駆け巡る。朝はロンドン、昼はデュッセルドルフ、夕方はウィーン。1年の7割を海外で過ごす。

 「我々がすべてのクレジット債権を所有するより、証券化して世界中の投資家に売却した方が身軽だし、資金調達の安定化にもつながる」。MBNAの資産を買い取ってくれる投資家を探すのがライト氏の仕事だ。

 証券化した債権の残高は99年末で540億ドル。資産全体の約6割を帳簿から落とした計算だ。ライト氏がこっそりと教えてくれた。「債権を次々に証券化していくから、どの口座が証券化されているか判別できる社員は10人といない」

 年収の多い優良顧客に的を絞り、電話やダイレクトメールで売り込む。利益の少ない顧客と非効率な支店を捨て、巨大な資産も軽量化する経営が成功。株主資本利益率(ROE)は約30%と、米金融界でも突出して高い資本効率を実現した。

 知識や資源を世界から拾い、新たなビジネスチャンスを切り開く21世紀の経済社会。その扉を開くのは所有へのこだわりを捨て、重い殻を脱ぎ捨てる「地球企業」である。

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