主要
政治・経済
国際
マーケット
産業・流通
店頭・VB
社会
スポーツ
列島ビジネス
社説・春秋
トップ人事
おくやみ
新製品
自動車
発表資料
経済指標
日経調査
●日経プラス1
●日経産業新聞
●日経流通新聞

きょうのクイズ
ザ・ランキング
出張・旅行予約
競馬
ゴルフ
進学ナビ
転職ナビ
2000年 地球人は
第4部 21世紀への進化

「日本経済新聞 1面企画」


(1)市の清算

 1999年10月12日、米テキサス州のセンターポイント市が、「市」であることをやめた。行政は同州カー郡に返上、日本でいえば県の直轄になった。「市がなくても生きてゆける。これでよかったのよ」。元市長のメアリー・シュルツさん(76)はそうつぶやいた。

不要論が浮上

 センターポイントが市制を敷いたのは1913年2月。ところがその半年後に住民投票で市制を廃止、それ以来、警察はカー郡、水道は民間企業に頼ってきた。市役所や市道もない。

 「上下水道ぐらい自分たちで整備しよう」。市民の間でそんな声が持ち上がり、96年に市制が復活するが、ほどなく「市不要論」が頭をもたげてきた。97年の市長選ではシュルツさんが市制廃止を問う住民投票の実施を掲げて当選。一方、事務方トップの行政官には市制存続派のドーラ・タウンゼントさん(80)が就き、人口800人の町は存廃両派で2分される。

 「市制を存続させて州から補助金をもらい、公共サービスを充実させましょう」というタウンゼントさん。シュルツさんは真っ向から反論する。「水道は民間でやれるし、その方が効率的。実際、ずっとそれでやってきた。こんな小さな町で自前の行政を持つなんてコストが高くついて増税になってしまう」

 99年5月の住民投票は138対97。住民は自らの意思で市を葬ることを決めた。

 受益と負担が釣り合うなら興し、そうでなければ廃止する。会社をつくり、清算するのと同じように公共サービスの担い手としての市も市場原理のなかで生まれ、消えていく。全米人口の2割は最小行政単位の市町村がない地域に住むという。

 国や自治体も企業と同じ市場のプレーヤー――。センターポイントが示したこの論理がいま、国際標準となって世界を覆っている。むろん国家は自治体のように廃止できないが、この論理を前提に政治や経済の仕組みを見直さないと地球資本や地球人は容赦なく国を捨てる。

実態さらけ出す

 アジア危機で実際に地球資本に捨てられた韓国は、その信頼を取り戻すため、国の情報を企業のように市場で開示する“国家版IR(投資家向け広報)”を展開している。

 「投資家の立場を考えていない。ただ『改革をやります』ではダメ。『いつやる』といわなければ評価してくれない」

 金融危機後、韓国政府は米大手PR会社バーソン・マーステラと契約し、細かなことば遣いひとつまで、対外広報の指南を受けている。「市場に対し、これまでいかに神経をつかっていなかったか思い知らされた」。企画予算庁財政改革団長の朴寅哲氏(49)はいう。

 そのかいあってか、「財閥の経営内容も外貨準備高も不透明」といわれていた韓国経済は格段に透明度が高まった。政府は電子メールで海外投資家ら約3000人に新聞発表文などを送るサービスも始めている。「本当の数字」をさらけ出した韓国に投資家は戻り、株式相場は危機前の水準を回復した。

 国を富ますには市場に好かれる国家になるしか選択肢はないが、それに伴い、捨てざるを得ないものも出てくる。地球規模のヒトの市場に国を開き移民受け入れを拡大しているカナダは、この問題で頭を悩ませた。

競争力か安定か

 99年4月、これまで一体となって発展してきた米加軍産共同体に亀裂が走った。「中東への軍事技術漏えいに、カナダ企業に勤める二重国籍の移民が加担した疑いがある」として、米政府がカナダ企業への軍事技術移転を制限する措置をとったのだ。米政府は二重国籍者がミサイル開発などに携わることに難色を示したとされる。

 10月になりカナダは輸出規制を強化することで米国と合意したが、移民労働者の問題では「二重国籍者だけ差別できない」との立場を貫いた。移民受け入れはカナダの競争力の根源であり、国内でも社会の安定をある程度犠牲にして進めている。米国との関係が微妙になるのもやむを得ないとの判断だった。

 米国発の国際標準である市場型開放国家が、米国の思惑をよそに、その安全保障を脅かす皮肉。それはグローバル化への反動の可能性を暗示する一方、国家が「標準」をも飛び越えて、地球国家への不断の自己改革を進めていることを示す。国の役割や政策の優先順位を、ゼロベースで見直す新しい歴史のうねりが始まった。

「2000年 地球人は」トップページへ戻る

NIKKEI NETの最新情報は画面を更新してご利用ください。
掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
著作権は日本経済新聞社またはその情報提供者に帰属します。
このホームページに対するご意見・ご感想は webmaster@nikkei.co.jpまでお願いします。
NIKKEI NETはインターネットエクスプローラー4.0、Netscape4.0以上でご覧いただけます。

Copyright 2000 Nihon Keizai Shimbun, Inc., all rights reserved.