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2000年 地球人は
第3部 個の経済

「日本経済新聞 1面企画」


(6)社内コンシェルジェ

 米ニュージャージー州ニューアーク。米保険最大手プルデンシャルの本社で、1人の男性が保険会社らしからぬ注文を受けていた。「ヤンキースの開幕戦の券が手に入りませんか」「結婚記念日だったのを思い出したの。デパートで夫への贈り物を買ってきて」

 雑務を肩代わり

 この男性はプルデンシャルが3年前に導入した、社員専用の「よろずサービス係」。チップを渡せば私用でも頼めるとあって引っ張りだこだ。この日も1件片づけるや、すぐに机上の電話が鳴った。

 「私用も可としたほうが、仕事に集中できると考えたのです」と人事担当副社長のシーラ・フリンさんは話す。「勤務時間中の私用は禁止」が世間の常識だが、実際に駆逐するのは難しい。それならいっそ、会社が私用の面倒をみたらどうか。働きやすい会社として優秀な人材をつなぎ止めることもできて一石二鳥では――単純なまでの発想の転換だった。

 優れた社員をあたかもホテルの客のように大事に扱い、能力を生かそうとする米企業。そのための「よろず係」は、ホテルの顧客サービス係になぞらえ「コンシェルジェ」と呼ばれる。

 シリコンバレーに本社を置く米コンピューター大手のサン・マイクロシステムズ。ここでは常時5,6人待機する派遣スタッフのコンシェルジェが、社員の雑務を肩代わりしていた。

 「海外からお客様が70人きます。飛行機の時間に合わせてバスとホテル、それから週末のゴルフの予約を」。依頼の主は技術教育プログラムを担当するエリノア・ナカガワさん(61)。取引先の来訪が急に決まったが、ほかの仕事を抱え準備をする時間がない。「了解、すぐに手配します」。すんなり事が運び、安心したナカガワさんはもとの仕事に戻った。

 私用や雑務の引き受け係を置く会社側のそろばん勘定を、ナカガワさんが説明してくれた。「1時間に100ドル稼ぐ社員が私用で1時間はずせば会社は100ドル損する。これを時給50ドルのコンシェルジェが肩代わりすれば、会社は50ドル得する計算です」

 学費は会社持ち

 「ナレッジワーカー(知識労働者)をつかまえろ」――。米国では産業のハイテク化に伴い、ソフト開発者をはじめとする知識労働者の重要性が急速に高まっている。高学歴労働者への需要がいかに強いかは、4年制大学卒業者の失業率(25歳以上)が1.6%と、全体の4.1%を大幅に下回ることにも示されている。

 社員が進学のために会社を辞めないよう、仕事を続けながら経営学修士(MBA)を取得できるようにした企業もある。

 ニュージャージー州ホワイトハウスステーション。米医薬品大手メルクの本社で午後6時、週2回の夜間講義が始まった。受講生は20人の社員、講師は衛星中継でスクリーンに映し出されたペンシルベニア州リーハイ大の教授だ。

 ウェイン・フォークアート氏(33)はこの「社内大学院」に2年半通った。「退社してどこかの大学院に行こうかと思ったけれど、会社が学費も持ってくれるというので考え直した」

 会社側の学費負担は約3万ドル。MBAを取得したフォークアート氏は、希望していた税務部門のグループ長に昇進した。税務署の査察で求められる調査内容を分析する仕事だ。会社は金銭面だけでなく仕事への満足感も与え、有能な人材のつなぎ止めに成功した。

 能力を引き出す

 「社員は付加価値を生み出す大切な資産」(幹部のシャロン・ラビットさん)と考えるメルクは、社員のために銀行、コンビニからベーカリーまでそろったショッピングセンターのような一画も設けている。

 「よく練った事業戦略と技術の研さん、そして何より個人の能力を引き出す組織が重要です」。米アンダーセン・コンサルティングのパートナー、ジャック・パシーノ氏(51)は最近、ある顧客企業でこう説いた。

 社員は企業にとって「労働力=コスト」と見られがち。しかし米国では単純な人員削減が競争力をもたらす時代は去り、高い付加価値を生む個人をいかに確保し、活用するかが勝敗を分ける時代に入った。「経営者の責務は有能な人材という資産を拡大させること」。パシーノ氏はそう報告を締めくくった。

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