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2000年 地球人は
第3部 個の経済

「日本経済新聞 1面企画」


(8)まなざしの価値

 英最大のインターネット接続会社フリーサーブの最高経営責任者(CEO)、ジョン・プルーゼロ氏(36)は2日間のうちに「天国」と「地獄」を味わった。

 一斉に売り推奨

 今月6日。英株式市場の代表的な株価指数、フィナンシャル・タイムズ(FT)100種総合株価指数の構成銘柄にフリーサーブが入ることが確実になった。上場からわずか8カ月。英企業史に残る「スピード出世」にプルーゼロ氏は喜びをかみしめた。

 フリーサーブは英大手家電チェーン、ディクソンズの中堅社員だったプルーゼロ氏が1998年9月に創業した社内ベンチャー企業。「接続料無料、通話料のみ」を売り物に、サービス開始から10カ月で200万人の加入者を獲得した。

 収入源は電話会社からもらう通話料の一部やネット広告で、まだ利益を出したことはないが、市場は加入者の伸びを好感。株価は昨年夏の公開時から約6倍の水準まで跳ね上がった。

 だが、翌3月7日。英ケーブルテレビ会社NTLが「何時間接続しても固定料金のみ」のネットサービスを発表するや、事態は一変した。フリーサーブの客が奪われると見たアナリストたちが一斉に売りを推奨し、株価は1日で2割近く急落した。

 ネット関連企業の価値は現在の業績では測れない。加入者数や検索件数が示す、ネット上のサービスへの「まなざし」の数こそが、将来の収益源となる資産であり、投資尺度としてふさわしい――。こんな考え方がネット株上昇の背景だけに、ひとたび「まなざし」が揺らげば瞬く間に市場の評価は下がる。

 注目集める名前

 米店頭株式市場(ナスダック)で「チャイナ」(中国)と呼ばれる銘柄がある。中国語でインターネットの検索サービスなどを提供する企業として、初めてナスダックで公開した香港のチャイナ・ドット・コムだ。

 「名前は非常に重要だ。世界最大の人口を抱えるチャイナの名前は人々にある種の夢をかき立てる」。創業者でCEOのピーター・イップ氏(48)は香港のオフィスでこう語った。

 株価は昨年7月の公開以来、急騰。株式分割を考慮すれば一時、公募価格の約15倍まで上昇した。中国市場への期待の大きさ、いわば「まなざし効果」が表れた格好だが、イップ氏は「我々は単なる検索サービス会社ではない。投資家はそれを理解したうえで高い評価を与えている」と強調する。

 その根拠は、ネット関連のコンサルタント業務と広告部門の黒字。検索サービスはまだ赤字だが「来年は全体で黒字になる」と自信を見せる。巨大市場のイメージを巧みに利用しながら、それだけに依存しない収益構造を組み立てるイップ氏の戦略はいまのところ、市場の評価をかち得ている。

 再び英国。国内3位の携帯電話会社オレンジが昨年、独マンネスマンに買収された際、業界関係者は買収金額に目を見張った。約3兆4000億円と、加入者数では大差ない同業のワン・ツー・ワンがその2カ月前、ドイツテレコムに買収された時の約3倍にものぼったからだ。

 秘密は通信回線の良さをはじめとする、サービスの質の高さにあった。ビジネスマンなどは通話料の安さより、途中で切れたりしない回線の品質を重視する。顧客の信頼を得たオレンジは値下げ競争にも無縁でいられた。

 加入者数は1位のボーダフォンに遠く及ばないが、契約解消までに1人の顧客から得られる平均収入は1.8倍。加入者数という「まなざし」の多さより顧客1人1人を離さない吸引力が、高い買収額につながった。

 数より顧客の質

 一方、株価急落に見舞われたフリーサーブ。プルーゼロ氏は幹部と徹夜の協議を重ね、株下落から一週間後の14日、反撃に出た。ケーブル会社に対抗する「通話料定額制」の採用だ。

 発表を受けてフリーサーブの株価は1割近く戻した。「加入者向けサービスを充実させればシェアを一段と高められる」。プルーゼロ氏は強気の見通しを描くが、株価はその後また下落に転じ、不安定なままだ。

 ネット時代の競争に勝ち残れるのは、「まなざし」の数だけ集める企業ではなく、個々の利用者をつなぎ止め、着実に収益につなげることのできる企業――。市場の選別は厳しさを増しつつある。

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