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2000年 地球人は
第3部 個の経済

「日本経済新聞 1面企画」


(3)起業家リサイクル

 5年の間に自分のつくった3つの会社を次々に売り、1999年に4つめの会社を創業した人が米サンフランシスコにいる。電子商取引会社ブルーライト・ドットコムの最高経営責任者(CEO)、マーク・ゴールドスタイン氏(39)である。

 3社で1億ドル超

 初めて会社を売ったのは94年。インターネット株取引のソフト会社だった。次につくったネット検索ソフト会社は3年、3番目の電子商取引ソフト会社は2年で売った。3社あわせた売却金額は1億ドルを超す。

 「会社を起こして少したつとだんだん飽きてくる。次のアイデアを実行したくてうずうずしてくるんだ」。ゴールドスタイン氏は屈託のない笑顔をみせながらいった。そこには、自分の会社を10年、20年かけて大きく育てていくという伝統的な事業観はかけらもない。

 栄養補助食品オンライン販売のアクティブ・ニュートリエンツを創業したルイス・シャピロ氏(38)は来月5日、同社をネット上で競売にかける。最低入札金額は460万ドル。会社を次々につくっては売る起業家の登場が、企業をまるごと売買する競売市場まで生みだした。

 「みんな、起業を金融取引のように考える人たちだ」。ベンチャーキャピタリスト、スティーブ・ドメニク氏(48)はシリコンバレーの事務所で、新しい起業家の姿をこう描いてみせた。「でも、彼らは創業を繰り返しながらアイデアを次々に打ち出す。起業家としての才能を自分で何度もリサイクル(再資源化)しているんだ」。世界の人材が集まるシリコンバレーでも才能のある人は少ない。限られた才能のリサイクルが米国の起業ブームを支え、経済を若返らせている面があるという。

 大企業が後押し

 彼らが台頭した背景には、それを後押しする既存企業の動きもある。

 「せっかく育てた技術を、よく知らない相手にゆだねるのか」。98年夏、ネットで売買される商品の価格比較ソフトを開発するジャングリー社で、激論がたたかわされていた。

 テーマは書籍ネット販売のアマゾン・ドットコムが持ち込んだ1億7000万ドルの買収提案を受け入れるかどうか。在米インド人の創業者、ラケシュ・マシュー氏(42)は迷った。会社を売ると社員が切り捨てられないか。でも、多くの大企業が情報化に遅れまいとして新興企業の買収に乗り出し、相場の上がったいまこそ売り時ではないか。

 「かつては会社を売っても創業者がもうかるだけだったが、この会社では株の7割を社員が持っている。高く評価されているうちに売れば、彼らに創業者利益をより多く分配できる」。マシュー氏は2日続いた会議の後、売却を決断した。

 大手企業には、創業者の才能もこみで新興企業を取り込もうとするところも出てきた。

 「世界の通信技術の覇権を握るためにあなたの会社の広域情報通信網(WAN)技術が欲しい」

 韓国系米人のジェオン・H・キム氏(39)が経営するユーリー・システムズに98年、米通信機器大手ルーセント・テクノロジーズが買収を提案してきた。買収金額は10億ドル。会社を買うだけでなく、社内で新事業を開拓するためにキム氏自身も採用したいという。

 売却先で新事業

 ユーリー社はキム氏が92年にたった1人でつくり、5年かけて米店頭株式市場(ナスダック)に公開するまでに育て上げた。にもかかわらず彼は誘いに乗った。「自分が開発した技術を世界に広めたいが、小さな会社だし、限界も感じていた。それに、私という人間も1個の起業家として評価し、買ってくれるという。これまでと違う新しい事業にまた挑戦できると思ったら、迷いはなくなった」

 会社の売却で4億ドル以上の資産を手にしながら、サラリーマンの道を選んだキム氏。「未来の通信技術の中核とされる光学ネットワーク事業の立ち上げを任されている。自分ではいまも起業家のつもり」と笑った。

 「一獲千金ばかり狙っている」「移り気で軽い」ともいわれるリサイクル起業家たち。だが、これまでの規範ではくくれない彼らを「個」として生かせないと、国も企業も高速で変化する情報社会に振り落とされる。

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