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2000年 地球人は
第3部 個の経済

「日本経済新聞 1面企画」


(1)6億件の広告

 3月初旬の米シリコンバレー。インターネットサービス大手エキサイト・アットホームで、住宅会社を相手に一風変わった広告セールスが始まっていた。

  • 「ことば」を売買

     「『住宅』はいかがですか。『住宅設計』もありますよ」

     「『住宅』で消費者がわが社のことに気づいてくれますか」

     「ことばをいくつかまとめて買えば、消費者は必ず御社に目をとめますよ」

     商談は成立した。住宅会社は「住宅」「住宅賃貸」など20ものことばを一括して買った。

     営業企画担当の部長、クリストファー・ザック氏(31)がこのセールスのなぞ解きをしてくれた。

     消費者がホームページ検索画面で「住宅」と入力すると、住宅関連のホームページリストが並ぶ画面に切り替わる。エキサイトが売ったのはこの画面の広告スペース。検索のキーワードが消費者と企業の接点となるインターネットならではの、いわば“ことばの売買”である。「広告料は普通、消費者がよく検索することばほど高い。でも、それだけじゃない」

     「自動車」の値段は検索1000回当たり75ドル、住宅ローンの「抵当」が150ドル、「データ復旧」が200ドル――。「『データ復旧』の検索頻度は『自動車』に及ばないが、パソコンが故障して焦った消費者は必ずこのことばを検索するから、パソコン販売店などから引く手あまたなんだ」。消費者が実際にモノを買う確率が高ければ値段も高い。カギは実需である。

     ネットという、自分の欲しいモノを自由に安く買える手段を手に入れた消費者。企業はことばを買い集めて彼らに何とか近づき、取り入ろうとする。

     ネット広告会社アドフォースでは、広告主の依頼でネット上に打つ1日の広告件数がのべ6億件を突破、1年前の6倍になった。「テレビ広告は視聴率をもとに1億人が見ましたというだけ。中には赤ん坊も入っているし、広告の内容も同じ。われわれは同じ1億人でも、その商品やサービスに興味を持っている消費者1人ひとりに、別な広告を見せている」。チャールズ・バーガー会長(46)はそういって笑った。

  • 1人ひとりに的

     広告主の注文が急増した秘密は「クッキー」と呼ばれるネットの消費者情報。消費者がネットを使うと閲覧ソフト(ブラウザー)に利用記録が自動的に蓄積される。名前や住所はわからないが、これを読みとれば個々の消費者を狙いすました広告が打てる。「経済紙や高級車メーカーのホームページをよく見る人がいたら、その人に向けてベンツの広告を流せばいい」

     消費者も興味のある商品の広告が載っている方が便利なのは間違いない。が、知らぬ間にプライバシーを侵される心配もある。ネット広告大手ダブルクリックは2月、カタログ販売の記録とクッキーをつき合わせ消費者の名前まで探ろうとしたとして、米連邦取引委員会(FTC)の調査を受けた。

     個人の信用情報をネットで提供する会社も現れた。米マサチューセッツ州のオープンレーティングスである。

  • 10段階で格付け

     「この買い手は8。支払いはしっかりしている」「この売り手は5。商品にかつて不良品があった」。電子商取引でモノを売買しようとすると、10段階で相手の格付けが示される。消費者も、ここで取引したら次から格付けされてしまう。

     「消費者を裸にするのかって? 心配はわかるけど、個人の名前が出るわけではない。ネットでは地球上のだれとでも取引できるし、個人と個人の取引も多い。相手がわからなければ不安でしょう」。同社を設立したマサチューセッツ工科大学準教授パティー・マースさん(38)はそういいながら、今年1月の休暇の話をし始めた。

     カリブ海に浮かぶ島の貸別荘に到着するまで、マースさんは心配で仕方がなかった。ネットで見つけ契約したものの、持ち主の正体は不明。「ゴキブリだらけで家具もなかったらどうしよう」。着いてみれば、こぎれいな別荘だったが、彼女は個人も含めた信用格付けの必要性を改めて痛感した。

     20世紀の大衆消費社会と一線を画す新しい消費社会。消費者にとっては得るものも失うものも、ともに小さくない。

     情報技術(IT)革命をエンジンに大きく姿を変える地球経済。これまでのルールや価値観が崩れた後に、主役として躍り出たのは「個」である。第3部は「個の経済」をルポする。

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