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2000年 地球人は
第3部 個の経済

「日本経済新聞 1面企画」


(4)アトム企業

 「インターネットは便利だけど、音楽や映像を取り込むのは面倒だよね」「そう、(パソコンの中で情報を記憶する)ハードディスクも動きが重くなるし」「だれか代わりに情報を保管してくれないかなあ」。こんな会話から生まれた会社が米サンフランシスコにある。

 ネットで倉庫業

 アイドライブ・ドットコム。ネット配信会社から取り込む音楽や映像だけでなく、自分で作った文書など、どんな情報でも利用者に代わってコンピューターに保管しておく、いわば“ネット倉庫会社”である。

 知人と話しているうちにアイデアを思いついたという最高経営責任者(CEO)のジェフ・ボンフォルテ氏(27)が会社をつくったのは1998年。99年8月からサービスを始め、利用者は7カ月あまりでのべ200万人に達した。

 「これまでなら記憶容量を気にしつつ、ハードディスクかフロッピーディスクに保存しておくしか方法はなかった。もう、そんな手間はいらない」

 ボンフォルテ氏自身も先日、ネット音楽配信会社MP3・ドットコムのホームページで気に入った音楽をみつけ、倉庫に放り込んでおいたという。「こんど出張に出たら、ネットを使い、ノートパソコンにでも引っ張り出して聴くつもりだ」といいながら、ネット倉庫の仕組みを説明してくれた。

 たとえばMP3の音楽なら、「(自分のハードディスクへ)取り込む」ではなく、「アイドライブに保管する」をクリックすればいい。利用者の保管料はタダ。「倉庫つきサービス」を売り物に音楽配信のユーザーを増やしたいMP3が料金を負担する。ほかにも、スタンフォードなど40以上の大学の負担で、学生向けの倉庫サービスをしている。

 知恵と資金集中

 「ネット上にはありとあらゆるサービスがある。消費者はそのなかから必要なものだけを自由に選べる。企業はひとつのサービスに一点集中してサービスの質を高めないと生き残れない。わたしは倉庫だけに知恵と資金を集中させた」

 自分のビジネス哲学を熱っぽく語るボンフォルテ氏。最後にパソコンメーカーをぎょっとさせるような一言を放った。「ネット倉庫はいわばパソコンからハードディスク機能だけを切り離した事業。これでパソコン内のハードディスクの記憶容量はいまよりずっと小さくて済むようになる。2-3年後にはパソコンの機能はもっとバラバラにされるだろう」

 これ以上小さく分けられないものを、ギリシャ哲学でアトム(原子)という。情報技術(IT)革命は企業の機能をアトムのレベルまで分解し始めた。旧来型の製造業でもそれは同じ。実物資産の工場を売り、情報技術など知的資産にヒトやカネを集中させる企業が増える一方で、工場だけに投資してモノづくりに特化する企業もある。

 開発・販売持たず

 この1月、米ニューハンプシャー州の情報機器会社ケーブルトロン・システムズが本社工場とアイルランド工場を売却すると発表した。相手はシリコンバレーのフレクストロニクス・インターナショナル。販売部門も開発部門も持たず、委託先の注文を受けて情報機器をつくる製造専門会社だ。

 「製造は100%外注して、エンジニアリングやマーケティングに資源を集中投下する」と表明したケーブルトロンのCEO、ピユッシュ・パテル氏(43)。“知的資産企業”への脱皮宣言だった。

 一方のフレクストロニクスはCEOのマイケル・マークス氏(49)が「買収を機に経営のスピードと柔軟性を一段と向上させる」というコメントを出した。この2年の間に吸収合併や買収で一気に築きあげた世界約80工場のネットワークをさらに強化し、柔軟な生産配置や在庫期間の短縮で競争力を高めてゆくという。

 工場売却発表のあと2カ月でケーブルトロンの株価は約70%上昇、フレクストロニクスも約40%上がった。

 「それぞれが得意な分野で独立した『個』として専門性を高めていけば、どちらも勝ち組になれる」。フレクストロニクスのマークス氏はしてやったりの表情で語った。それは、思い切った事業の絞り込みができずに競争力を落としている企業への、極限まで機能分化したアトム企業からの警鐘でもあった。

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